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- 日銀短観(9月調査)~景況感はほぼ横ばい、設備投資は堅調維持、日銀の見通しに概ね沿った内容に
2024年10月01日
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4.売上・利益計画:24年度は引き続き減益計画だが減益幅はやや縮小
2024年度収益計画(全規模全産業)は、売上高が前年比2.3%増(前回は1.9%増)、経常利益は5.7%減(前回は同7.5%減)とそれぞれ上方修正された。
例年、経常利益計画は初回の3月調査時点で保守的に見積もられ、前年比で小幅なマイナス圏でスタートし、6月調査で比較対象となる前年度分の上方修正などを受けて、さらに伸び率がやや下方修正された後は、景気が悪化していない限り、上方修正が続く傾向が強い。
今回も同様のパターンとなり、上期業績の計画比上振れを受けて、もともとの保守的ぎみであった想定をやや上方修正する動きが出たと考えられる。実態としては、半導体需要の回復やインバウンド需要の増加、価格転嫁の進展などが押し上げ材料になったとみられる。ただし、製造業で下期計画を下方修正する動きが目立ち、全体としての上方修正幅は例年9月をやや下回る。
なお、7月以降の急速な円安修正については、以下の通り、想定為替レートが円高方向に見直されなかったことから、収益計画への影響は限定的に留まっている。
2024年度の想定ドル円レート(全規模・全産業ベース)は145.15円(上期146.00円、下期14431円)と、前回(144.77円)から小幅に円安方向へ修正されている。前回調査以降、速いペースで円高が進行したが、前回調査時点において既往の円安の反映が遅れていたうえ、もともと輸出企業を中心に保守的な姿勢で実勢よりも円高気味の想定を据え置く傾向があり、全体として円高気味の想定となっていたため、今回、円高方向への修正は生じなかった。
例年、経常利益計画は初回の3月調査時点で保守的に見積もられ、前年比で小幅なマイナス圏でスタートし、6月調査で比較対象となる前年度分の上方修正などを受けて、さらに伸び率がやや下方修正された後は、景気が悪化していない限り、上方修正が続く傾向が強い。
今回も同様のパターンとなり、上期業績の計画比上振れを受けて、もともとの保守的ぎみであった想定をやや上方修正する動きが出たと考えられる。実態としては、半導体需要の回復やインバウンド需要の増加、価格転嫁の進展などが押し上げ材料になったとみられる。ただし、製造業で下期計画を下方修正する動きが目立ち、全体としての上方修正幅は例年9月をやや下回る。
なお、7月以降の急速な円安修正については、以下の通り、想定為替レートが円高方向に見直されなかったことから、収益計画への影響は限定的に留まっている。
2024年度の想定ドル円レート(全規模・全産業ベース)は145.15円(上期146.00円、下期14431円)と、前回(144.77円)から小幅に円安方向へ修正されている。前回調査以降、速いペースで円高が進行したが、前回調査時点において既往の円安の反映が遅れていたうえ、もともと輸出企業を中心に保守的な姿勢で実勢よりも円高気味の想定を据え置く傾向があり、全体として円高気味の想定となっていたため、今回、円高方向への修正は生じなかった。
5.設備・雇用:設備投資計画は堅調維持、人手不足感は極めて強い状況続く
生産・営業用設備判断DI(「過剰」-「不足」)は、全規模全産業で前回から横ばいの▲1となった。設備の需給は概ね均衡ながら、若干不足ぎみの状況が続いている。
一方、雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は、全規模全産業で前回から1ポイント低下の▲36となった。DIのマイナス幅は、今年3月調査と並んで、1991年以来約33年ぶりのマイナス幅にあたる。建設業などでの労働時間規制強化や人手を多く要する対面サービス需要の増加を受けて、人手不足感が極めて強い状況が続いている。
先行きの見通し(全規模全産業)は、設備判断DIが▲3、雇用人員判断DIが▲40とそれぞれ、2ポイント、4ポイントの低下が見込まれている。とりわけ、先行きに対する警戒感も相まってか、雇用において人出不足感が明確に強まる見通しになっている。
一方、雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は、全規模全産業で前回から1ポイント低下の▲36となった。DIのマイナス幅は、今年3月調査と並んで、1991年以来約33年ぶりのマイナス幅にあたる。建設業などでの労働時間規制強化や人手を多く要する対面サービス需要の増加を受けて、人手不足感が極めて強い状況が続いている。
先行きの見通し(全規模全産業)は、設備判断DIが▲3、雇用人員判断DIが▲40とそれぞれ、2ポイント、4ポイントの低下が見込まれている。とりわけ、先行きに対する警戒感も相まってか、雇用において人出不足感が明確に強まる見通しになっている。
2024年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年比8.9%増と前回6月調査(8.4%増)から小幅に上方修正された。上方修正幅は0.5%ポイントと例年3をやや下回っている。
例年9月調査では年度計画が固まってくることで、中小企業を中心に投資額が上乗せされる傾向が強いうえ、資材価格や人件費の上昇を受けて、投資額が嵩みやすくなっている点も押し上げ材料になったようだ。実態としても、収益回復を受けた投資余力の改善に加え、脱炭素・DX・省力化・サプライチェーンの再構築等に伴う投資需要を背景として堅調な設備投資計画が維持されている。
ただし、既述の通り、前回調査からの上昇修正幅は例年を下回っている。今年度からの労働時間規制強化を受けて、建設業における人手不足という供給制約が強まっていることが影響した可能性がある。年度後半にかけても、供給制約による計画の下振れリスクに留意が必要になる。
2024年度設備投資計画(全規模全産業で前年比8.9%増)は市場予想(QUICK 集計9.7%増、当社予想は9.5%増)を下回る結果だった。
2024年度のソフトウェア投資計画(全規模全産業)は前年比13.1%増(前回は14.0%増)へと下方修正されたが、引き続き高い伸びが示されている。
企業において、オンライン需要への対応や生産性向上・省力化等に向けた業務のIT化が加速している証左とみられ、前向きな動きと言える。
例年9月調査では年度計画が固まってくることで、中小企業を中心に投資額が上乗せされる傾向が強いうえ、資材価格や人件費の上昇を受けて、投資額が嵩みやすくなっている点も押し上げ材料になったようだ。実態としても、収益回復を受けた投資余力の改善に加え、脱炭素・DX・省力化・サプライチェーンの再構築等に伴う投資需要を背景として堅調な設備投資計画が維持されている。
ただし、既述の通り、前回調査からの上昇修正幅は例年を下回っている。今年度からの労働時間規制強化を受けて、建設業における人手不足という供給制約が強まっていることが影響した可能性がある。年度後半にかけても、供給制約による計画の下振れリスクに留意が必要になる。
2024年度設備投資計画(全規模全産業で前年比8.9%増)は市場予想(QUICK 集計9.7%増、当社予想は9.5%増)を下回る結果だった。
2024年度のソフトウェア投資計画(全規模全産業)は前年比13.1%増(前回は14.0%増)へと下方修正されたが、引き続き高い伸びが示されている。
企業において、オンライン需要への対応や生産性向上・省力化等に向けた業務のIT化が加速している証左とみられ、前向きな動きと言える。
3 直近10年間(2014~23年度)における9月調査での修正幅は平均で+1.2%ポイント
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年10月01日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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