2024年03月22日

日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは4ポイント下落の9と予想、来年度計画に注目

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 3月短観では、注目度の高い大企業製造業で4四半期ぶりの景況感悪化が示されそうだ。昨年末以降に、品質不正問題によって自動車の生産・出荷が大規模に停止された影響が現れる。特殊要因とはいえ、自動車産業は裾野が広いだけに多くの業種に悪影響が及んだと考えられる。一方、非製造業の景況感は、物価高による消費の抑制等が重石になるものの、株高による資産効果やインバウンド需要の増加などが支えとなり、堅調を維持しそうだ。
     
  2. 先行きの景況感は方向が分かれそうだ。製造業では、自動車生産の回復見通し等が追い風となり、持ち直しが示される可能性が高い。一方、非製造業では、物価高に伴う消費の腰折れや人手不足の深刻化などへの警戒感が台頭し、先行きに対する慎重な見方が示されるものの、今春闘での賃上げ拡大を通じた消費回復期待が下支えになると見ている。
     
  3. 23年度の設備投資計画(全規模)は、人手不足による工事の遅れや資材価格高騰を受けて、年度前半の設備投資が低迷したことから、例年よりもやや大きめの下方修正が入ると予想されるが、依然として高い伸びが維持されそうだ。24年度計画については、23年度計画からの先送り分が押し上げ要因になるほか、投資余力の改善、脱炭素・DX・省力化等に向けた投資需要の存在がプラスに寄与する形となり、例年比で高い伸び率が示されると予想。
     
  4. 今回の短観において、特に注目されるのは今回から新たに集計・公表される24年度の収益・設備投資計画だ。また、「販売価格判断DI」や「企業の物価見通し」といった物価関連項目の動向も注目点となる。今後、「賃金と物価の好循環」が持続していくためには、企業による前向きな設備投資を通じた生産性の向上や価格転嫁の継続を通じた賃上げ原資の確保が重要になる。今回の短観は、「賃金と物価の好循環」の持続性やそれに伴う追加利上げの可能性を考えるうえでの手がかりになる。

 
(図表1)日銀短観業況判断DIの予測表
■目次

3月短観予測:製造業の景況感は悪化、新年度計画に注目
  ・非製造業の景況感は堅調維持
  ・設備投資計画は23年度が下方修正・24年度は強めのスタートへ
  ・注目ポイント:新年度計画と物価関連項目
  ・追加利上げの可能性を考える材料に
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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