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全世代型社会保障構築会議は年内にとりまとめ。次期年金改革にも影響か~年金改革ウォッチ 2022年10月号

保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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1 ―― 先月までの動き
○内閣官房 全世代型社会保障構築会議
9月7日(第3回) 全世代型社会保障の構築に向けた今後の進め方
URL https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/dai6/gijisidai.html (資料)
○社会保障審議会 年金事業管理部会
9月9日(第63回) 日本年金機構の令和3年度業務実績の評価、その他
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/kanribukai-siryo63_00001.html (資料)
2 ―― ポイント解説:官邸での議論と次期年金改革への影響
9月7日の全世代型社会保障構築会議では、(1)厚生年金の適用拡大について[短時間労働者に関する]企業規模要件の撤廃も含めた見直しや[個人事業所に関する]非適用業種の見直し等を検討すること、(2)フリーランス・ギグワーカー等の被用者性等を検討した上でより幅広い社会保険の適用の在り方について総合的に検討すること等が、この検討項目の論点として示された*1。
企業規模要件や非適用業種については、厚生労働省の「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」の報告書(2019年9月公表)や社会保障審議会年金部会の報告書(同年12月公表)で、本来は企業規模や業種等を問わず適用すべきという考え方が既に打ち出されている。労使の代表が参加していない全世代型社会保障構築会議で、本来の姿の実現に向けた道筋が示されるかが注目される。

また、今年5月に全世代型社会保障構築会議が公表した議論の中間整理では、この検討項目の論点として女性就労の制約要因と指摘されている社会保障や税制や企業の諸手当も挙がっていた。しかし、9月7日の資料では前述の2点“等”という表現になっており、年内に女性就労の制約も検討されるかが注目される。
2|改革への影響:年金部会招集は年明けか?
全世代型社会保障構築会議で年金に関係するテーマが年内の検討対象となったことで、社会保障審議会年金部会への影響が考えられる。
2000年の省庁再編以降は官邸や内閣府に社会保障に関する常設の会議体が設置されておらず、不定期に報告書が取りまとめられている。近年では2012年11月から社会保障制度改革国民会議で社会保障制度改革プログラム法に繋がる議論が行われ、その間は年金部会において将来見通しや制度改正の議論が行われなかった。
次期年金改革に向けては、通例どおりであれば今夏にも招集されていた将来見通しの経済前提に関する委員会がまだ招集されておらず、将来推計人口を議論する人口部会も再開されていない*3。改革内容を議論する年金部会についても、近年の改革より早く今夏にも議論を開始するとの報道があったが、現時点では招集されていない。
将来推計人口の公表が来春に予定されている中、次期年金改革に向けた議論が全世代型社会保障構築会議の取りまとめ後(すなわち年明け)に始まるのか、それとも厚生年金の適用拡大以外の論点について同会議の取りまとめを待たずに議論が開始されるのか、動向を注視したい。
*1 [ ]内は筆者による追記。同会議の配布資料には記載がないが、企業規模要件は短時間労働者に、適用業種は個人事業所に特有の適用要件である。
*2 他方で、被用者性については問題がないと考えられる複数事業所勤務者の適用については、2019年の年金部会報告書で指摘されているものの、全世代型社会保障構築会議の中間整理では取り上げられておらず、年内に検討される可能性は低い。
*3 出生動向基本調査の公表を踏まえて、今夏にも再開することになっていた。同調査の概要は9月9日に公表されたが、本稿執筆時点で人口部会は再開されていない。
(2022年10月04日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
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