2022年04月01日

米個人所得・消費支出(22年2月)-PCE価格総合指数は前年同月比+6.4%と82年1月以来の伸び。物価上昇に歯止めがかからず

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想に一致、個人消費は予想を下回る

3月31日、米商務省の経済分析局(BEA)は2月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.5%(前月改定値:+0.1%)と前月比横這いから小幅上方修正された前月を上回った一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.5%に一致した(図表1)。個人消費支出は前月比+0.2%(前月改定値:+2.7%)と+2.1%から大幅上方修正された前月、市場予想の+0.5%を下回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は▲0.4%(前月改定値:+2.1%)とこちらも+1.5%から上方修正された前月、市場予想の▲0.2%を下回った(図表5)。貯蓄率1は6.3%(前月:6.1%)と、前月から▲0.2%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.6%(前月改定値:+0.5%)と+0.6%から小幅下方修正された前月を上回った一方、市場予想(+0.6%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.4%(前月:+0.5%)と前月を下回った一方、市場予想(+0.4%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+6.4%(前月改定値:+6.0%)と+6.1%から小幅下方修正された前月を上回り、82年1月以来の水準に上昇した一方、市場予想(+6.4%)に一致した。コア指数は+5.4%(前月:+5.2%)と前月を上回り、こちらは83年4月以来の水準に上昇したものの、市場予想(+5.5%)は下回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:インフレ高進が実質消費を押し

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 2月の個人消費(前月比)は名目値では+0.2%(前月:+2.7%)と前月から大幅に伸びが鈍化したものの、辛うじてプラスを維持した一方、実質ベースでは▲0.4%(前月:+2.1%)とマイナスに転じた(図表1、図表5)。可処分所得も名目では前月比でプラスの伸びが持続しているものの、物価を加味した実質ベースでは21年7月以降7カ月連続でマイナスとなっており、物価の伸びに可処分所得が追い付いていないことを示しており、実質ベースの購買力は低下が続いている。このため、当面物価の高止まりが予想される中、今後も実質ベースでの個人消費の伸びは低調に留まろう。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、エネルギーや食料品価格の上昇基調の持続に伴い、総合指数の上昇に歯止めがかかっていない。また、物価の基調を示すコア指数も同様に上昇に歯止めがかっておらず、21年4月以降11ヵ月連続で物価目標(2%)を上回るなど、物価上昇圧力の高い状況が続いている。足元でロシアのウクライナ侵攻に伴いエネルギーや商品価格は大幅に上昇しているため、当面物価上昇圧力がさらに高まっていくことが見込まれる。

3.所得動向:賃金・給与、自営業者所得の伸びが加速

2月の個人所得(前月比)は、賃金・給与が+0.8%(前月:+0.5%)と労働需給の逼迫を背景に堅調な賃金の伸びが持続しているほか、自営業者所得も+0.8%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速した(図表2)。また、当月は利息配当収入が+0.2%(前月:▲0.1%)とプラスに転じた。一方、移転所得は▲0.3%(前月:▲1.0)と前月からマイナス幅は縮小したものの、2ヵ月連続のマイナスとなった。移転所得の減少は非営利病院に対する新型コロナに関連した医療補助金の支給減少など、主に新型コロナ対策の政策効果の剥落による。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、2月の名目が+0.4%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した一方、価格変動の影響を除いた実質ベースは▲0.4%(前月:▲0.5%)と7ヵ月連続のマイナスとなった(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:財消費からサービス消費へシフト

2月の名目個人消費(前月比)は、財消費が▲1.0%(前月:+6.5%)と前月に大幅な伸びとなった反動もあって、前月からマイナスに転じた一方、サービス消費が+0.9%(前月:+0.7%)と21年7月以来7カ月ぶりの伸びに加速して個人消費全体を押し上げた(図表4)。

財消費は、耐久財が▲2.5%(前月:+11.3%)、非耐久財が▲0.1%(前月:+3.9%)といずれも前月からマイナスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が▲4.0%(前月:+12.3%)、家具・家電が▲1.9%(前月:+10.8%)、娯楽財・スポーツカーが▲2.0%(前月:+12.6%)と、いずれも前月からマイナスに転じた。

非耐久財では、ガソリン・エネルギーが+6.5%(前月:▲3.4%)とガソリン価格の上昇を背景に前月からプラスに転じた一方、食料・飲料が▲0.9%(前月:+2.8%)、衣料・靴が▲1.1%(前月:+8.2%)と前月からマイナスに転じた。

サービス消費は、住宅・公共料金が▲0.1%(前月+1.8%)、金融サービスが▲横這い(前月:+0.8%)と前月からマイナスに転じた一方、医療サービスが+0.6%(前月:+0.6%)と前月並みの伸びを維持した。また、オミクロン株の感染者数が減少したこともあって輸送が+3.0%(前月:▲2.1%)、外食・宿泊が+3.0%(前月:▲1.2%)と前月からプラスに転じたほか、娯楽が+2.7%(前月:横這い)と伸びが加速するなど、対面型サービス消費の回復が顕著となった。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:前年同月比でエネルギーは12ヵ月連続で2桁の上昇

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+3.7%(前月:+1.1%)と9ヵ月連続のプラスとなったほか、前月から伸びが加速した(図表6)。食料品価格指数は+1.4%(前月:+0.9%)と、こちらも13ヵ月連続のプラスとなったほか、前月から伸びが加速した。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+25.7%(前月:+25.9%)と前月から伸びは小幅に鈍化したものの、12ヵ月連続で2桁の上昇となった(図表7)。また、食料品価格指数は+8.0%(前月:+6.6%)と81年6月以来の伸びとなったほか、これで56ヵ月連続のプラスとなった。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2022年04月01日「経済・金融フラッシュ」)

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