英国におけるFacebookに対する企業売却命令－Facebookは異議申立するも罰金支払には応ずる方向

保険研究部専務取締役研究理事兼ヘルスケアリサーチセンター長松澤登

■要旨

Facebook（現Meta）は、2020年5月にGIFという短い動画がループする動画ライブラリと検索サービスを提供するジフィ社を買収し、Facebookの子会社と合併させた。これらはいずれも米国企業である。

英国競争法当局CMAは、この合併は反競争的であり、競争法規定である英国企業法に違反するとの認定を2021年8月に暫定的に行った。この暫定的な決定は、同年11月に正式な命令として、ジフィ社の売却及び5千万ポンドの罰金を賦課した。これに対してFacebookは、罰金は支払う意向を示しつつも、命令に異議申し立てを行っている。

CMAが問題としたのは、(1)ディスプレイ広告市場における実質的な競争制限効果が認められること、および(2)ソーシャルメディア市場において、魅力的なコンテンツとするためのツールであるGIFをFacebook以外のプラットフォームへ供給しないとすることが予想され、この結果、実質的な競争制限効果があると認定したものである。

巨大IT企業が営業を行っている国ではあるが、企業の設立地である国とは別の国で合併等が禁止された事例として参考となる。

■目次

1――はじめに
2――企業結合と競争法
　　1｜日本における企業結合規制
　　2｜英国における企業結合規制
3――今回の買収の事実関係
　　1｜Facebookの事業内容
　　2｜ジフィ社の事業内容
4――CMAの暫定的レポート
　　1｜事実関係と結論
　　2｜関連する合併状況
　　3｜市場に影響を及ぼせる力（市場支配力）があるか
　　4｜事実ではないケースの想定
　　5｜水平的一方的効果があるか
　　6｜垂直的効果があるか
　　7｜相殺要因があるか
5――検討
　　1｜水平的一方的効果
　　2｜垂直的効果
6――おわりに

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