- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 金融・為替 >
- 金融市場・外国為替(通貨・相場) >
- 長引く円高、終止符は打たれるか?~マーケット・カルテ12月号
2020年11月24日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
11月上旬、コロナワクチンの治験で高い有効性が確認されたことで米経済活動の正常化期待が高まり、これを受けた米金利上昇を追い風にドル円は103円台から105円台へと急上昇した。その後、米国でのコロナ感染拡大や経済指標悪化を受けて下落したが、足元ではやや持ち直し104円台半ばにある。米大統領選の結果、バイデン氏の大統領就任が確実視されているが、議会でねじれが発生する可能性が高いこともあり、ドル円への影響は限定的に留まっている。日米の金融政策の方向性に差が無いなかで、ともに安全通貨とされる円とドルが連動しやすいことでドル円の動きは抑制されているものの、米国での感染拡大や緩和長期化観測、財政赤字拡大観測などが円高ドル安圧力となり、105円割れの時間帯が続いている。米国の感染が鎮静化する兆しは見えないうえ、FRBによる早期緩和強化観測もあって、当面は円高ドル安に振れやすいだろう。
しかし、上旬にワクチン開発の進展によってドルが急反発した点は注目に値する。12月にはワクチンが実用化されて接種が開始されると見込まれる。ワクチンの普及には時間を要するものの、接種が進むにつれて米経済活動正常化の織り込みが進んで米金利が上昇し、ドル円は持ち直すだろう。3か月後の水準は106円付近と予想している。
ユーロ円は、上旬にワクチン開発の進展を受けたリスク選好的な円売りユーロ買いによって124円台に上昇した後、世界的な感染拡大を受けたリスク回避的な動きによって下落し、足元は123円台後半にある。当面は感染拡大が警戒されることで円高ユーロ安に振れる可能性が高い。しかし、12月には米国でワクチン接種が開始されると見込まれ、以降はリスク選好的な円売りユーロ買いの発生が予想される。3か月後の水準は現状比でやや上昇と見ている。
長期金利は、内外でのコロナ感染拡大を受けてやや低下し、足元では0.0%を若干上回る水準にある。当面は内外での感染拡大が金利抑制要因となる一方、第3次補正予算編成に伴う国債増発観測が金利の支えになる。さらに来月以降はワクチン接種開始による米金利上昇が波及する可能性が高いことから、3か月後の水準は現状比でやや上昇とみている。
(執筆時点:2020/11/24)
(2020年11月24日「基礎研マンスリー」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
上野 剛志のレポート
| 日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
|---|---|---|---|
| 2025/10/22 | 高市新政権が発足、円相場の行方を考える~マーケット・カルテ11月号 | 上野 剛志 | 基礎研マンスリー |
| 2025/10/14 | 貸出・マネタリー統計(25年9月)~銀行貸出の伸びが4年半ぶりの4%台に、定期預金等はバブル期以来の高い伸びを記録 | 上野 剛志 | 経済・金融フラッシュ |
| 2025/10/06 | 円安が続く背景を改めて点検する~円相場の行方は? | 上野 剛志 | Weekly エコノミスト・レター |
| 2025/10/01 | 日銀短観(9月調査)~トランプ関税の影響は依然限定的、利上げ路線をサポートするも、決め手にはならず | 上野 剛志 | Weekly エコノミスト・レター |
新着記事
-
2025年10月30日
潜在成長率は変えられる-日本経済の本当の可能性 -
2025年10月30日
米FOMC(25年10月)-市場予想通り、政策金利を▲0.25%引き下げ。バランスシート縮小を12月1日で終了することも決定 -
2025年10月30日
試練の5年に踏み出す中国(後編)-「第15次五カ年計画」建議にみる、中国のこれからの針路 -
2025年10月30日
米国で進む中間期の選挙区割り変更-26年の中間選挙を見据え、与野党の攻防が激化 -
2025年10月29日
生活習慣病リスクを高める飲酒の現状と改善に向けた対策~男女の飲酒習慣の違いに着目して
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【長引く円高、終止符は打たれるか?~マーケット・カルテ12月号】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
長引く円高、終止符は打たれるか?~マーケット・カルテ12月号のレポート Topへ










