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- 年金改革ウォッチ 2020年7月号~ポイント解説:確定拠出年金等の見直しの方向性
2020年07月07日
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1 ―― 先月までの動き
企業年金・個人年金部会では、制度改正の進捗状況が説明され、これまでの議論で積み残されてきた検討課題と今後の進め方が議論された。年金事業管理部会では、日本年金機構の令和元年度の業務実績書(案)が議論された*1。
○社会保障審議会 企業年金・個人年金部会
6月17日(第11回) 制度改正の進捗状況と今後の検討課題・進め方、ほか
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11903.html (資料)
○社会保障審議会 年金事業管理部会
6月29日(第49回) 日本年金機構の令和元年度業務実績、その他
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/kanribukai-siryo49_00001.html (資料)
*1 両部会とも、新型感染症の影響で報道関係者以外は傍聴できず、ネットでの視聴もできない。ただし、企業年金・個人年金部会の議事録は、通常(約1か月後)よりも早く(9日後に)公開された。
○社会保障審議会 企業年金・個人年金部会
6月17日(第11回) 制度改正の進捗状況と今後の検討課題・進め方、ほか
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11903.html (資料)
○社会保障審議会 年金事業管理部会
6月29日(第49回) 日本年金機構の令和元年度業務実績、その他
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/kanribukai-siryo49_00001.html (資料)
*1 両部会とも、新型感染症の影響で報道関係者以外は傍聴できず、ネットでの視聴もできない。ただし、企業年金・個人年金部会の議事録は、通常(約1か月後)よりも早く(9日後に)公開された。
2 ―― ポイント解説:確定拠出年金等の見直しの方向性
企業年金・個人年金部会では、5月29日に改正法案が成立した直後にもかかわらず、今後の改正に向けた議論が行われた。本稿では、成立した改正内容を踏まえて、今後の見直しの方向性を考察する。

今回の改正は多岐に及ぶが、以前からの検討課題が残っている*2。同部会では、改正の施行に併せつつ、今回の改正過程と同様に税制改正のプロセスも考慮して、論点の優先度を決める方針が示された。今後は、2022年に予定されている確定拠出年金関連の改正施行に向けて、準備期間も考慮しながら議論が進むと思われる。
*2 国会審議では検討規定が追加され附帯決議も行われた。本誌2020年6月号参照。
4|論点2・特別法人税:凍結が続いているが、撤廃に向けた条件整備は難しい課題
また、特別法人税の撤廃も、多くの関係者が要望している。確定給付企業年金や確定拠出年金では掛金が非課税となっており、それに対応して税制を中立にするために設けられているのが特別法人税である。ただ1999年以降は、普及促進(衰退防止)と低金利下での財務的な健全性確保のため、課税が凍結されている*4。
これが廃止されると恒久的な優遇税制になるため、拠出の限度や中途引出しの禁止など一定の歯止めが必要となる。この点では、既に拠出限度額等がある確定拠出年金が廃止に向けて有利だが、確定拠出年金のみで廃止されると、従業員のリスクが少ない確定給付企業年金の衰退が予想される。また、確定給付企業年金に何らかの制約を加えれば、それも確定給付企業年金の衰退につながる懸念がある。
最終目的である老後の安心の向上に向けて、公的年金とあわせた総合的な議論を期待したい。
*4 2020年の税制改正で、2022年度末までの凍結延長が決まっている。
また、特別法人税の撤廃も、多くの関係者が要望している。確定給付企業年金や確定拠出年金では掛金が非課税となっており、それに対応して税制を中立にするために設けられているのが特別法人税である。ただ1999年以降は、普及促進(衰退防止)と低金利下での財務的な健全性確保のため、課税が凍結されている*4。
これが廃止されると恒久的な優遇税制になるため、拠出の限度や中途引出しの禁止など一定の歯止めが必要となる。この点では、既に拠出限度額等がある確定拠出年金が廃止に向けて有利だが、確定拠出年金のみで廃止されると、従業員のリスクが少ない確定給付企業年金の衰退が予想される。また、確定給付企業年金に何らかの制約を加えれば、それも確定給付企業年金の衰退につながる懸念がある。
最終目的である老後の安心の向上に向けて、公的年金とあわせた総合的な議論を期待したい。
*4 2020年の税制改正で、2022年度末までの凍結延長が決まっている。
(2020年07月07日「保険・年金フォーカス」)
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経歴
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
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