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平成における消費者の変容(3)-経済不安でも満足度の高い若者~目先の収入はバブル期より多い、お金を使わなくても楽しめる消費社会
 
                                                生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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5――消費構造の変化~モノからコトへ、デパートからネットへ、BtoCからCtoCへ
 また、若者ほどスポーツ観戦や映画などのコト消費への意欲が高いという調査結果もある。
                                                        また、若者ほどスポーツ観戦や映画などのコト消費への意欲が高いという調査結果もある。消費者庁「平成28年度消費者意識基本調査」によると、現在お金をかけているもののうち「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」の割合は、15~19歳(34.6%)で最も高く、20代(26.6%)が続く。一方で30~70代は15%以下である。
モノを買う場所も変化している。小売業の売上高は、1990年では百貨店が最も多かったが、1990年代半ばにスーパーが、2009年にはコンビニが上回り、近年はネット通販の伸びが著しい(図表10)。さらに、ネットやスマホの浸透で、足元ではシェアリングエコノミーが急成長し、これまで事業者が消費者へ提供してきたモノやサービスが、消費者間で直接売買できる環境が整いつつある。
6――おわりに~若者の雇用安定化と可処分所得の引き上げ、社会保障制度の持続性確保を
 目先の収入は案外あっても、若い世代ほど将来の見通しは立ちにくい。不安定な立場で働く非正規雇用者が増え(図表11)、正規雇用者と非正規雇用者の年収差は、年齢とともに拡大する(図表12)。正規雇用者でも安泰ではなく、10年前と比べて賃金カーブは低下し、特に30~40代で平坦化している(図表13)。この平坦化した部分を推計すると、およそ1千万円にもなる。さらに、少子高齢化による社会保障の世代間格差も広がる。
                                                        目先の収入は案外あっても、若い世代ほど将来の見通しは立ちにくい。不安定な立場で働く非正規雇用者が増え(図表11)、正規雇用者と非正規雇用者の年収差は、年齢とともに拡大する(図表12)。正規雇用者でも安泰ではなく、10年前と比べて賃金カーブは低下し、特に30~40代で平坦化している(図表13)。この平坦化した部分を推計すると、およそ1千万円にもなる。さらに、少子高齢化による社会保障の世代間格差も広がる。裏を返すと、雇用が安定し、社会保障制度の持続性が確保され、将来に向けて明るい見通しを立てられるようになれば、節約志向に起因する消費抑制意識は緩和される可能性がある。
若者の経済基盤の安定化に向けて、1つ1つの課題を丁寧に解決していくことで、若者は、堅実かつ合理的な消費態度を持ちながらも、ちょっとした贅沢を楽しむようになるのかもしれない。
(2019年03月22日「基礎研レター」)
 
                                        03-3512-1878
- プロフィール
 【職歴】
 2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
 2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
 2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
 2021年7月より現職
 ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
 ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
 ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
 ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
 ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
 ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
 ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
 【加入団体等】
 日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
 生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
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