2019年03月22日

平成における消費者の変容(3)-経済不安でも満足度の高い若者~目先の収入はバブル期より多い、お金を使わなくても楽しめる消費社会

生活研究部 主任研究員   久我 尚子

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5――消費構造の変化~モノからコトへ、デパートからネットへ、BtoCからCtoCへ

図表9 二人以上世帯の消費水準指数の推移 消費社会の成熟化や技術革新により、若者の価値観が変わるだけでなく、消費者全体で構造変化が生じている。

総務省「家計調査」によると、1990年から2017年にかけて、二人以上世帯の消費支出では、「被服及び履物」が半減する一方(1990年=100とすると2017年は49.5)、「交通・通信」は大幅に増え(100→161.9)、「保険医療」も増えている(100→112.7)(図表9)。つまり、消費支出はファッションなどのモノから、通信や医療などのサービス(コト)へと移っている。
図表10 業態別売上高の推移 また、若者ほどスポーツ観戦や映画などのコト消費への意欲が高いという調査結果もある。

消費者庁「平成28年度消費者意識基本調査」によると、現在お金をかけているもののうち「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」の割合は、15~19歳(34.6%)で最も高く、20代(26.6%)が続く。一方で30~70代は15%以下である。

モノを買う場所も変化している。小売業の売上高は、1990年では百貨店が最も多かったが、1990年代半ばにスーパーが、2009年にはコンビニが上回り、近年はネット通販の伸びが著しい(図表10)。さらに、ネットやスマホの浸透で、足元ではシェアリングエコノミーが急成長し、これまで事業者が消費者へ提供してきたモノやサービスが、消費者間で直接売買できる環境が整いつつある。
 

6――おわりに

6――おわりに~若者の雇用安定化と可処分所得の引き上げ、社会保障制度の持続性確保を

図表11 雇用者に占める非正規雇用者の推移(男性) 景気低迷の中で生まれ育ってきた今の若者だが、実は目先の収入はバブル期より多く、「お金がないわけではない」。しかし、貯蓄志向が高く、堅実かつ合理的な消費者へと姿を変えている。それは、不景気の中で培われた節約志向に加えて、技術革新やデフレの恩恵を受けて、「お金を使わなくても楽しめる」「お金を使うことが必ずしもすごいことではない」という価値観が形成されたためだ。
図表12 雇用形態別に見た平均年収(男性) このような価値観を持つ若い世代の消費を増やすことは簡単ではないだろう。しかし、節約志向に起因する消費抑制意識を緩和することは、比較的容易なのではないか。
図表13 大学・大学院卒正規雇用者の賃金カーブの変化(男性) 目先の収入は案外あっても、若い世代ほど将来の見通しは立ちにくい。不安定な立場で働く非正規雇用者が増え(図表11)、正規雇用者と非正規雇用者の年収差は、年齢とともに拡大する(図表12)。正規雇用者でも安泰ではなく、10年前と比べて賃金カーブは低下し、特に30~40代で平坦化している(図表13)。この平坦化した部分を推計すると、およそ1千万円にもなる。さらに、少子高齢化による社会保障の世代間格差も広がる。

裏を返すと、雇用が安定し、社会保障制度の持続性が確保され、将来に向けて明るい見通しを立てられるようになれば、節約志向に起因する消費抑制意識は緩和される可能性がある。

若者の経済基盤の安定化に向けて、1つ1つの課題を丁寧に解決していくことで、若者は、堅実かつ合理的な消費態度を持ちながらも、ちょっとした贅沢を楽しむようになるのかもしれない。
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生活研究部   主任研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング

(2019年03月22日「基礎研レター」)

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