コラム
2018年12月28日

平成の終わり~次の時代の課題~

経済研究部 専務理事 エグゼクティブ・フェロー   櫨(はじ) 浩一

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1――ショックの連続

バブル景気の絶頂から始まった平成は間もなく終わり、新しい時代を迎えようとしている。平成元年(1989年)12月に日経平均株価は最高値をつけたが、平成2年(90年)に入ると債券・円・株のトリプル安が起こり、値下がりが続いた。地価は遅れて平成3年(91年)から本格的に下落し始め、高級絵画やゴルフの会員権なども含めた資産価格全体が大きく下落した。

資産価格のバブルが崩壊した後も、しばらくは失業率が2%程度であったなど経済への影響は軽微にみえたが、平成4年(92年)になるころには影響の大きさが明らかとなってきた。日本経済は回復を見せる時期もあったが、平成9年(97年)になると大手金融機関や大企業の経営破綻が相次ぎ、日本的雇用慣行に守られてきた大企業でも人員整理が行われるようになって雇用不安も高まった。経済の足かせとなっていた過剰債務問題は次第に改善したが、平成20年(08年)には米国でリーマンショックが起こり、海外経済の混乱から日本経済も大きな打撃を受けた。

平成24年(12年)に誕生した安倍政権では、大胆な金融緩和をはじめとするアベノミクスを実施し、デフレとは言えない状況とはなったものの、目標とした2%程度の物価上昇は視界に入っていない。

2――予想を裏切る世界の動き

日本を取りまく国際情勢も予想外の激しい動きとなった。平成元年(89年)にはベルリンの壁が崩壊し、平成3年(91年)末にはソビエト連邦が崩壊して、世界は西欧型の自由民主主義と市場経済に収れんして行くと多くの人が考えた。平成4年(92年)に米国で出版されたフランシス・フクヤマの「歴史の終わり」は、自由民主主義が政治理念の終着点で、自由な市場が世界に広まり、人類社会発展の過程という「歴史」はここで終点を迎えると主張した(注1)。しかし、中国は国家資本主義体制を維持したまま驚異的な経済発展を遂げ、習政権の下で市場経済化や民主化の動きは止まり、むしろ後退する動きを見せている。

欧州では平成5年(93年)に発効したマーストリヒト条約でEU(欧州連合)が 誕生し、平成11年(99年)にユーロが導入され経済・政治的な統合が進んでいった。しかし、平成22年(10年)にはギリシャの財政問題を発端に欧州債務危機が起こり、平成27年(15年)には中東やアフリカから100万人を超える難民・移民が押し寄せるなどしたことから、移民の排斥を主張するナショナリズムやポピュリズムが勢いを増している。平成28年(16年)に英国で行われた国民投票では、EU離脱が選択されるという予想外の結果となった。

欧州だけでなく先進諸国の至るところで、グローバル化に対する反発が強まり、地域や個人の格差の拡大に対する不満が増大し、偏狭なナショナリズムや差別が復活しつつある。第二次世界大戦後の世界で、圧倒的な経済力を背景に国際政治のリーダー役を果たして来た米国は、平成29年(17年)に誕生したトランプ大統領が自国優先の姿勢を強め、世界はリーダー不在の状態となった。

(注1)Fukuyama, Francis, “End of History and the Last Man”, Free Press(1992)
    邦訳:「歴史の終わり」上・下、渡部昇一訳、三笠書房(2005年)

3――次の時代の課題

次の時代の第一の課題は、新たな国際競争のルール作りであろう。米トランプ大統領はいずれ米国の舵取りの場を去るが、その後に再び米国主導の世界経済が戻ることはないし、全ての国が民主主義と自由な市場という共通の原理に従う世界も簡単には実現しないだろう。世界経済には、日米欧のような市場原理に基づく資本主義社会と、中国をはじめとした国家資本主義が長く併存するのではないか。こうした中では、IMFやWTOの下で目指して来た、政府介入のない自由な貿易や国際金融取引に代わる新たな国際競争のルール作りが必要となるであろう。国家資本主義の国々は世界経済にしっかりと組み入れられており、かつて社会主義ブロックに対して行ったような貿易の制限は現実的ではない。現在の状態のままでは、先進諸国から見れば不公正な国際競争が続き、トランプ大統領が主張するような安全保障上の懸念を払拭することもできず、いたずらに対立が深まるばかりである。安定した国際取引に依存する日本は、国益を主張するだけではなく、長期的な視点からルール作りに貢献すべきだ。

第二の課題は、何物にも阻害されない競争が社会全体に利益をもたらすという理念に代わる資本主義の理念を作り上げることではないか。第二次世界大戦後に1970年頃まで世界経済が順調だった背景には、1930年頃の大恐慌に対応して主要国で独占禁止法や社会保障制度、所得再分配機能が整備されたことがある。競争と分業が経済発展をもたらす原動力であることは確かだが、ポール・コリアが指摘しているように国際分業のもたらす恩恵に浴していない人達も多い(注2)。これがグローバル化に対する強い反発や様々なレベルでの分離独立運動の背景にあると考える。手放しの競争礼賛は、社会のルールの隙をつき、ルールを逸脱し、ルールそのものを自分に有利に変えるという手段を選ばない競争も生んでいる。平成には、日本のバブル崩壊だけでなく、アジア通貨危機、ITバブル崩壊、リーマンショックなど大きな経済危機が頻発した。世界経済は様々なレベルでの格差問題の深刻化、国境を越える企業活動の活発化に対応できない政府といった問題を抱えている。政府介入を排除し、IT技術などで情報提供を拡充すれば、市場が全ての問題を解決するという理念だけではうまくいかないのではないか。

こうした問題に加えて、日本は急速な高齢化への対応という難題を抱えている。日本ほどの深刻さにはならないものの、日本の後を追うように、周辺のアジア諸国を初めとして世界中の国々で高齢化が進むと予測されているので、海外をあてにせずに問題を解決する道を模索する必要があるだろう。

平成を振り返ってみれば、平成7年(95年)の阪神・淡路大震災、平成23年(11年)の東日本大震災など、地震、水害、火山の噴火といった多くの自然災害にも見舞われ、日本は荒波に揉まれた時代だった。それでも第一次世界大戦があった大正や、第二次世界大戦があった昭和に比べれば、平成の世界は確実に良いものだった。課題は山積していて困難な状況ではあるが、世界をさらに良いものにしてその次の時代を生きる人たちに手渡すということは、平成の次に来る時代を生きることになる我々に共通の責務ではないか。

(注2)Collier, Paul, ”The Future of Capitalism”, Harper (2018)
 
 

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経済研究部   専務理事 エグゼクティブ・フェロー

櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)

研究・専門分野
マクロ経済・経済政策

(2018年12月28日「エコノミストの眼」)

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