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共働き・子育て世帯の消費実態(2)~食費や通信費など「必需的消費」が増え、娯楽費など「選択的消費」が減少、娯楽費の中ではじわり強まる 旅行ニーズ
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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専業主婦世帯の消費内訳についても共働き世帯と同様、「交通・通信」(のうち「通信」)や「教育」、「光熱・水道」、2013年以降で「食料」がおおむね上昇傾向にある。「教育」については、もともと「教育」の割合が高い共働き世帯では足元で伸びている程度だが、専業主婦世帯では2000年以降、一貫して上昇傾向にある。「食料」については、専業主婦世帯の実質増減率は▲2.4%(対2013年)であり、共働き世帯以上に買い控えている様子がうかがえる。「交通・通信」については、共働き世帯と同様、消費増税等を背景とした「自動車関係費」の上昇や2000年以降の「通信」の上昇が見られる。
一方、低下傾向にあるものは、「住居」や「その他の消費支出」(うち「こづかい(使途不明)」や「交際費」)、2010年以降では「教養娯楽」であり、共働き世帯と同様である。
「教養娯楽」の内訳についても同様に「書籍・他の印刷物」や「教養娯楽用耐久財」が低下しており、スマートフォン普及の影響が見られる。一方、「教養娯楽サービス」は、共働き世帯のように余暇支出の一部が日帰りレジャーから旅行へうつる様子は見えず、「他の教養娯楽サービス」は上昇傾向にある。2012年以降、専業主婦世帯でも前年より世帯収入が増えた年はある。しかし、共働き世帯と比べると収入が少ないこと(2016年で月に▲8.5万円)、また、「教育」の支出割合が上昇し、教育費負担が増していることで、旅行へ振り向ける余裕を作りにくいのかもしれない。
以上より、専業主婦世帯でも『必需的消費』の割合が上昇し、『選択的消費』の割合が低下している。また、共働き世帯と比べると世帯収入が少ないことなどから、食費や娯楽費の抑制傾向が強く、専業主婦世帯では財布の紐がより堅い様子がうかがえる。
4――おわりに
景気低迷を背景に賃金カーブが低下し、高齢化も進むことで、現役世代では経済不安が強まっている。子育て世帯の消費内訳からも、できるだけ消費を抑制し(選択的消費を減らし)、貯蓄へつなげる様子が見えた。一方、強いニーズのある消費領域に適切な措置がなされれば、高額でもお金を振り向ける傾向や、可処分所得に比較的余裕のある世帯では『選択的消費』に振り向ける傾向もある。
子育て世帯をはじめとした現役世代の消費を活性化するためには、可処分所得の底上げをはかるとともに、住宅に加え、教育や保育など強いニーズのある領域において、現役世代の経済的負担を軽減するような政策を実施することが有効だ。
次稿では、消費内訳について、さらに個別品目の分析をすることで、共働き世帯の特徴を捉えたい。
(2018年02月13日「基礎研レター」)
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03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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