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- 開始から1年、プレミアム・フライデー~利用は3%、雇用形態で非利用理由に差、生産性向上と施策に柔軟性が必要
開始から1年、プレミアム・フライデー~利用は3%、雇用形態で非利用理由に差、生産性向上と施策に柔軟性が必要
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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1――当初は期待?、最近は下火のプレミアム・フライデー
ここで、あらためて、調査を踏まえて、プレミアム・フライデーの課題を考えてみたい。
2――認知度は95%だが利用率は3%、利用者は公務員や大企業正社員、インフラ企業で比較的多い
大半の組織が導入を躊躇したようだが、当初からプレミアム・フライデーによって消費者の行き先となるような業種では、むしろ人手が必要となるために早帰りが難しくなることが懸念されていた。また、いずれの業種においても、日常の業務量が減らない中では、早帰りだけを導入することは難しい。
1 「家計消費と生活不安に関する調査」、調査対象:全国の20~70歳代の一般個人、調査手法:ネットリサーチ、実施時期:2017/4/6~4/13、調査機関:(株)マクロミル
3――「利用したかったが利用しなかった」も3%、正規は仕事終わらず、非正規は対象外?・収入減イヤ
図2では勤め先で導入されたが「利用したかったが利用しなかった」(2.8%)も利用者と同程度存在し、「利用する気はなく、利用しなかった」は5.5%である。両者に対して利用しなかった理由を尋ねると、民間企業勤め全体では、「特に意識していなかった」(50.2%)が最も多く、次いで「仕事が終わらなかった」(38.5%)、「後日仕事のしわ寄せが来る気がした」(16.7%)が多い(図3)。
なお、利用しなかった理由は雇用形態によって異なり、正規雇用者では「仕事が終わらなかった」(56.2%)や「後日仕事のしわ寄せが来る気がした」(21.9%)が多く、非正規雇用者では「特に意識していなかった」(63.0%)や「収入が減ってしまうのが嫌」(21.7%)が多い。
正規雇用者では、やはり業務量が減らない中では早帰りは難しい様子が窺える。一方で非正規雇用者では、制度の導入の仕方にもよるが、そもそも施策の対象外になっている可能性もある。また、時間給などで働いている場合は収入減少に直結するため、むしろ休みたくないという声もあるようだ。
4――利用者は「食事」や「買い物」が多いが「自宅で過ごした」も多い、過ごし方は可処分所得で違いが
5――今後の課題~早帰りだけでなく生産性の向上もセット、実施日をずらすなどの柔軟性も必要
また、業種や職種によって繁忙期は異なるため、プレミアム・フライデーの実施には柔軟性も必要だ。例えば、業種によっては客の少ない別の曜日にする、同じ会社の中でも一斉に早帰りが難しい場合は部署ごとに実施日をずらすといった工夫ができるだろう。
景気は緩やかな回復基調にはあるが、労働者一人当たりの実質賃金は伸び悩んでいる。また、ますます高齢化が進む中、国民全体で漠然とした将来不安も漂っている。消費意欲に火をつけるためには、合わせて可処分所得の引き上げなども進める必要がある。
(2018年01月22日「基礎研レター」)
03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
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