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- 出産育児一時金・埋葬料-健康保険による特殊な現金給付
2017年11月29日
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3――現状
1|出産育児一時金
出産育児一時金の金額は42万円であるが、産科医療補償制度の掛金が1万6千円であるため、実質的な給付は1児あたり40万4千円となっている。
なお自治体によっては、さらに助成があるケースがある。
健康保険の被保険者および被扶養者が出産(妊娠4か月以上の死産、流産を含む)したときに支給され、出産する医療機関で事前に手続きすることで、健康保険から医療機関に直接、出産育児一時金を支払う直接支払制度があり、多額の出産費用の事前準備や立替えが不要となる。
出産育児一時金の金額は42万円であるが、産科医療補償制度の掛金が1万6千円であるため、実質的な給付は1児あたり40万4千円となっている。
なお自治体によっては、さらに助成があるケースがある。
健康保険の被保険者および被扶養者が出産(妊娠4か月以上の死産、流産を含む)したときに支給され、出産する医療機関で事前に手続きすることで、健康保険から医療機関に直接、出産育児一時金を支払う直接支払制度があり、多額の出産費用の事前準備や立替えが不要となる。
2|埋葬料
埋葬料は、被保険者が死亡し、被保険者の収入により生計を維持していた被扶養者が埋葬を行う場合に被扶養者に支給される。被扶養者がない場合も、実際に埋葬を行った人に、埋葬料の範囲内で実費が支給される(埋葬費)。また、被扶養者が死亡した場合も、被保険者に家族埋葬料が支給される。
金額は、健康保険に加入している場合は、5万円である。
しかしながら、国民健康保険や、75歳以上の後期高齢者医療制度に加入の場合(埋葬を行う喪主に葬祭費として支給される)は、制度を運営する自治体などによって金額は区々であり、2~7万円となっている模様である。
なお、死亡原因が業務上または通勤中の事故による場合は、労災保険からの給付があるため、健康保険の埋葬料は支給されない。また、死亡原因が交通事故など第三者の行為による場合で、第三者の加入している損害保険などから埋葬料相当額が給付される場合も、健康保険の埋葬料は支給されない。
埋葬料は、被保険者が死亡し、被保険者の収入により生計を維持していた被扶養者が埋葬を行う場合に被扶養者に支給される。被扶養者がない場合も、実際に埋葬を行った人に、埋葬料の範囲内で実費が支給される(埋葬費)。また、被扶養者が死亡した場合も、被保険者に家族埋葬料が支給される。
金額は、健康保険に加入している場合は、5万円である。
しかしながら、国民健康保険や、75歳以上の後期高齢者医療制度に加入の場合(埋葬を行う喪主に葬祭費として支給される)は、制度を運営する自治体などによって金額は区々であり、2~7万円となっている模様である。
なお、死亡原因が業務上または通勤中の事故による場合は、労災保険からの給付があるため、健康保険の埋葬料は支給されない。また、死亡原因が交通事故など第三者の行為による場合で、第三者の加入している損害保険などから埋葬料相当額が給付される場合も、健康保険の埋葬料は支給されない。
4――おわりに(私見)
出産育児一時金・埋葬料に関する課題は大きくは2つあると考える。
ひとつは、そもそも出産育児一時金・埋葬料が受け取れないケースがあることである。
出産者が被保険者本人である場合、本人が1年以上継続して被保険者であり、法人などを退職後、6か月以内に出産をした場合には出産育児一時金を受け取ることができるが、6か月を経過すれば受け取ることができない。また、出産者が被保険者の配偶者である場合は、被保険者が健康保険に加入していない場合は、出産育児一時金を受け取ることができない。
1961年に国民皆保険が実現され、健康保険は法人の事業所、常時5人以上を雇用する個人事業所のほとんどで強制適用となっており、農漁業や飲食業など非適用事業所での労働者は、国民健康保険に加入することとなる。
しかしながら、いわゆるフリーターなどが国民健康保険の保険料を納付していないケース、また、法人に就職した後に退職し、国民健康保険の加入手続きをしていないケースなど、無保険状態となっている者は増加傾向にある。
保険料納付の勧奨の強化や、退職などで被保険者資格を失った場合でも、一定の条件のもと、申し出により原則2年間継続して被保険者となれる任意継続被保険者制度の紹介など、無保険状態根絶に向けた取組みが急務であろう。
もうひとつは、出産育児一時金と埋葬料のバランスである。
2006年10月、出産育児一時金が30万円から35万円に引き上げられたが、同時に埋葬料が標準報酬月額(最低保障額は10万円)から定額5万円に引き下げとなっている。以降、出産費用増加に応じ着実に出産育児一時金は引き上げられ、現在の実質的な給付は1児あたり40万4千円となっている。
一方、埋葬料は引き下げ後据え置かれたままであり、被保険者や遺族の実質的な葬儀費用などの負担に比べ、支給額はきわめて小さいのではないかと考える。
子育て支援に向け、出産育児一時金を重点的に引き上げる政策は理解できるが、もともと同額であった埋葬料と出産育児一時金の比率は、現在1対8となっている(国民健康保険などの場合、格差はさらに大きくなる)。
バランスのとれた対応が必要ではないか。
ひとつは、そもそも出産育児一時金・埋葬料が受け取れないケースがあることである。
出産者が被保険者本人である場合、本人が1年以上継続して被保険者であり、法人などを退職後、6か月以内に出産をした場合には出産育児一時金を受け取ることができるが、6か月を経過すれば受け取ることができない。また、出産者が被保険者の配偶者である場合は、被保険者が健康保険に加入していない場合は、出産育児一時金を受け取ることができない。
1961年に国民皆保険が実現され、健康保険は法人の事業所、常時5人以上を雇用する個人事業所のほとんどで強制適用となっており、農漁業や飲食業など非適用事業所での労働者は、国民健康保険に加入することとなる。
しかしながら、いわゆるフリーターなどが国民健康保険の保険料を納付していないケース、また、法人に就職した後に退職し、国民健康保険の加入手続きをしていないケースなど、無保険状態となっている者は増加傾向にある。
保険料納付の勧奨の強化や、退職などで被保険者資格を失った場合でも、一定の条件のもと、申し出により原則2年間継続して被保険者となれる任意継続被保険者制度の紹介など、無保険状態根絶に向けた取組みが急務であろう。
もうひとつは、出産育児一時金と埋葬料のバランスである。
2006年10月、出産育児一時金が30万円から35万円に引き上げられたが、同時に埋葬料が標準報酬月額(最低保障額は10万円)から定額5万円に引き下げとなっている。以降、出産費用増加に応じ着実に出産育児一時金は引き上げられ、現在の実質的な給付は1児あたり40万4千円となっている。
一方、埋葬料は引き下げ後据え置かれたままであり、被保険者や遺族の実質的な葬儀費用などの負担に比べ、支給額はきわめて小さいのではないかと考える。
子育て支援に向け、出産育児一時金を重点的に引き上げる政策は理解できるが、もともと同額であった埋葬料と出産育児一時金の比率は、現在1対8となっている(国民健康保険などの場合、格差はさらに大きくなる)。
バランスのとれた対応が必要ではないか。
(2017年11月29日「基礎研レター」)
小林 雅史
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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