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- 【10月米雇用統計】雇用者数は前月比26.1万人増、前月から大幅増加も市場予想は下回る
2017年11月06日
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1.結果の概要:雇用者数は市場予想を下回る一方、失業率は00年12月以来の水準に低下
11月3日、米国労働省(BLS)は10月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+26.1万人の増加1(前月改定値:+1.8万人)と、▲3.3万人から上方修正された前月を大幅に上回った一方、市場予想の+31.3万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)は下回った。前月がプラスに修正された結果、連続雇用増加期間は史上最長の85ヵ月となった(後掲図表2参照)。
失業率は4.1%(前月:4.2%、市場予想:4.2%)と、こちらは前月、市場予想を下回って改善し、00年12月以来の水準となった(後掲図表6参照)。一方、労働参加率2は62.7%(前月:63.1%、市場予想:63.1%)と、こちらは前月から大幅に低下し、市場予想も下回った(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
失業率は4.1%(前月:4.2%、市場予想:4.2%)と、こちらは前月、市場予想を下回って改善し、00年12月以来の水準となった(後掲図表6参照)。一方、労働参加率2は62.7%(前月:63.1%、市場予想:63.1%)と、こちらは前月から大幅に低下し、市場予想も下回った(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
2.結果の評価:失業率は前月から低下も、事業所、家計調査ともそれほど良好な結果ではない
10月の非農業部門雇用者数は、前月から大幅に増加したものの市場予想を5.2万人下回った。もっとも、後述するように前月が5.1万人上方修正されていることから、上方修正分と併せて考えると市場予想から大きく逸脱する結果では無かったと言える。このため、ハリケーンによって統計数値の変動が大きくなっているものの、雇用者数は堅調な増加が持続していると判断できる。
一方、家計調査は失業率が前月から低下したものの、労働参加率の大幅な低下にみられるように労働力人口の減少に伴って表面的に改善しているようにみえているだけであり、10月の結果は必ずしも労働需給の改善を意味しない。
一方、家計調査は失業率が前月から低下したものの、労働参加率の大幅な低下にみられるように労働力人口の減少に伴って表面的に改善しているようにみえているだけであり、10月の結果は必ずしも労働需給の改善を意味しない。

このようにみると、ハリケーンの影響で雇用統計の結果が読み難くなってはいるものの、10月は、労働力人口の大幅な減少や、賃金回復のもたつきなど、家計調査、雇用者数以外の事業所調査ともにそれほど良好な結果ではなかったと言えよう。
3.事業所調査の詳細:飲食業が前月から大幅に増加

サービス部門では、娯楽・宿泊サービスが前月比+10.6万人(前月:▲10.2万人)と、前月の大幅な減少から大幅な増加に転じた。とくに、ハリケーンの影響により落込んでいた飲食業が+8.9万人(前月:▲9.8万人)と回復したことが大きい。そのほかのサービス部門では、専門・ビジネスサービスが+5.0万人(前月:+2.2万人)と、前月から伸びが加速したことが目立った。
一方、財生産部門も前月比+3.3万人(前月:+1.8万人)と、前月から伸びが加速した。建設業が+1.1万人(前月:+1.1万人)と前月並みの伸びに留まる一方、製造業が+2.4万人(前月:+0.6万人)と伸びが加速したことが大きい。
政府部門は、前月比+0.9万人(前月:+0.3万人)と、こちらも前月から伸びが加速した。内訳をみると、連邦政府が前月比+0.5(前月:+0.1万人)、州・地方政府も+0.4万人(前月:+0.2万人)と、いずれも前月から伸びが加速した。
なお、BLSの公表に先立って11月1日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+23.5万人(前月改定値:+11.0万人、市場予想:+20.0万人)と、市場予想を+3.5万人上回ったものの、雇用統計とは対照的に前月が+13.5万人から▲2.5万人下方修正されているため、それらを併せて考えと概ね予想通りの結果と言える。ADP、雇用統計ともにハリケーンの影響で変動が大きくなっているものの、両者ともに雇用者数の増加基調が持続していることを示す結果となった。
10月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が26.53ドル(前月:25.54ドル)となり、前月から▲1セントと僅かながら減少した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.4時間)とこちらは前月から横這いとなった。その結果、週当たり賃金は912.63ドル(前月:912.98ドル)と前月から減少に転じた(前掲図表4)。
10月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が26.53ドル(前月:25.54ドル)となり、前月から▲1セントと僅かながら減少した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.4時間)とこちらは前月から横這いとなった。その結果、週当たり賃金は912.63ドル(前月:912.98ドル)と前月から減少に転じた(前掲図表4)。
4.家計調査の詳細:労働力人口が大幅に減少、失業率低下は労働需給の改善を意味せず
家計調査のうち、10月の労働力人口は前月対比で▲76.5万人(前月:+57.5万人)と、前月の大幅な増加から一転、大幅な減少となった。内訳を見ると、就業者数が▲48.4万人(前月:+90.6万人)と前月から減少に転じたほか、失業者数が▲28.1万人(前月:▲33.1万人)と2ヵ月連続で減少した。一方、非労働力人口は+96.8万人(前月:▲36.8万人)と、こちらは大幅な増加となった。
この結果、労働参加率は62.7%(前月:63.1%)と前月から▲0.4%ポイントの大幅な低下となった(図表5)。この低下幅は13年10月に▲0.5%ポイント低下して以来の下げ幅である。
失業率は、4.1%と00年12月(3.9%)以来の水準に低下したが、労働力人口の大幅な減少に伴う労働参加率の低下と併せて考えると、今月の失業率低下は必ずしも労働需給の改善を意味しない(図表6)。
この結果、労働参加率は62.7%(前月:63.1%)と前月から▲0.4%ポイントの大幅な低下となった(図表5)。この低下幅は13年10月に▲0.5%ポイント低下して以来の下げ幅である。
失業率は、4.1%と00年12月(3.9%)以来の水準に低下したが、労働力人口の大幅な減少に伴う労働参加率の低下と併せて考えると、今月の失業率低下は必ずしも労働需給の改善を意味しない(図表6)。
次に、10月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は、162.1万人(前月:173.3万人)となり、前月対比では▲8.8万人(前月:▲0.7万人)と、前月からマイナス幅が拡大した。これで減少は3ヵ月連続となった。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは24.8%(前月:25.5%)と、前月から低下した。平均失業期間も26.0週(前月:26.8週)と、前月から低下した(図表7)。
最後に、周辺労働力人口(153.5万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(475.3万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4をみると、10月は7.9%(前月:8.3%)と、前月から▲0.4%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は3.8%ポイント(前月:4.1%ポイント)と、こちらも前月から▲0.3%ポイント縮小した。なお、両者の差が3%台まで縮小するのは、07年12月(3.8%)以来である。
最後に、周辺労働力人口(153.5万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(475.3万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4をみると、10月は7.9%(前月:8.3%)と、前月から▲0.4%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は3.8%ポイント(前月:4.1%ポイント)と、こちらも前月から▲0.3%ポイント縮小した。なお、両者の差が3%台まで縮小するのは、07年12月(3.8%)以来である。
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
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(2017年11月06日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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