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- 2017・2018年度経済見通し(17年8月)
2017年08月15日
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1.2017年4-6月期は年率4.0%と6四半期連続のプラス成長
2017年4-6月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比1.0%(前期比年率4.0%)と6四半期連続のプラス成長となった。
輸出が前期比▲0.5%と4四半期ぶりの減少となる中、国内需要の堅調を反映し輸入が前期比1.4%の増加となったため、外需寄与度が前期比▲0.3%と成長率の押し下げ要因となった。一方、雇用所得環境の改善、企業収益の大幅増加を背景に、民間消費(前期比0.9%)、設備投資(同2.4%)が高い伸びとなったことなどから、国内民間需要の伸びは1-3月期の前期比0.2%から同1.3%へと急加速した。さらに、2016年度補正予算の執行本格化から公的固定資本形成が前期比5.1%の大幅増加となり、公的需要も前期比1.3%の高い伸びとなったことから、国内需要主導で潜在成長率を大きく上回る高成長となった。
実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が1.3%(うち民需1.0%、公需0.3%)、外需が▲0.3%であった。
日本経済は2016年1-3月期以降、ゼロ%台後半とされる潜在成長率を上回る成長を続けているが、2017年4-6月期はその中でも最も高い伸びとなった。内容的にも2016年後半は外需中心の成長だったが、2017年入り後は民間消費、設備投資が明確に増加し、内需主導の自律的回復局面に移行しつつある。
輸出が前期比▲0.5%と4四半期ぶりの減少となる中、国内需要の堅調を反映し輸入が前期比1.4%の増加となったため、外需寄与度が前期比▲0.3%と成長率の押し下げ要因となった。一方、雇用所得環境の改善、企業収益の大幅増加を背景に、民間消費(前期比0.9%)、設備投資(同2.4%)が高い伸びとなったことなどから、国内民間需要の伸びは1-3月期の前期比0.2%から同1.3%へと急加速した。さらに、2016年度補正予算の執行本格化から公的固定資本形成が前期比5.1%の大幅増加となり、公的需要も前期比1.3%の高い伸びとなったことから、国内需要主導で潜在成長率を大きく上回る高成長となった。
実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が1.3%(うち民需1.0%、公需0.3%)、外需が▲0.3%であった。
日本経済は2016年1-3月期以降、ゼロ%台後半とされる潜在成長率を上回る成長を続けているが、2017年4-6月期はその中でも最も高い伸びとなった。内容的にも2016年後半は外需中心の成長だったが、2017年入り後は民間消費、設備投資が明確に増加し、内需主導の自律的回復局面に移行しつつある。
(景気回復の裾野が拡がる)
景気はここにきて回復基調を強めている。消費税率引き上げ後、長期にわたって低迷が続いてきた個人消費も2017年入り後は持ち直しの動きが明確となっている。
景気はここにきて回復基調を強めている。消費税率引き上げ後、長期にわたって低迷が続いてきた個人消費も2017年入り後は持ち直しの動きが明確となっている。
景気動向指数の一致系列に採用されている10指標を生産関連、雇用関連、消費関連、設備投資関連、企業収益関連1に分けた上で、今回の景気回復局面におけるCI一致指数の上昇幅への寄与度(累積)を見ると、2013年度末までは5分野の指標がバランス良く、急ピッチで回復していた。しかし、2014年4月の消費税率引き上げ後は雇用関連、企業収益関連が底堅さを維持する一方、消費関連、生産関連が急速に落ち込み、両者ともに低迷が長期化した。特に、消費関連については2016年入り後には景気回復局面入り後の累積寄与度がマイナスに転じるまで落ち込んだ。しかし、2016年度入り後は生産関連の回復基調が明確となっていることに加え、2016年度後半には個人消費も持ち直しに向かい、2017年度入り後には累積寄与度のプラス幅が大きく拡大している。ここにきて景気回復は裾野の拡がりを伴ったものとなっている。
1 生産関連:生産指数、生産財出荷指数、雇用関連:所定外労働時間、有効求人倍率、消費関連:耐久消費財出荷指数、商業販売額(卸売業、小売業)、設備投資関連:投資財出荷指数、企業収益関連:営業利益(全産業)
(個人消費回復の要因)
消費税率引き上げ後、長期にわたり低迷を続けてきた個人消費だが、GDP統計の民間消費が2017年1-3月期の前期比0.4%に続き4-6月期も同0.9%の高い伸びとなるなど、ここにきて回復基調が明確となっている。
消費税率引き上げ後、長期にわたり低迷を続けてきた個人消費だが、GDP統計の民間消費が2017年1-3月期の前期比0.4%に続き4-6月期も同0.9%の高い伸びとなるなど、ここにきて回復基調が明確となっている。
こうした中でも個人消費が回復しているのは、大幅な低下が続いていた消費性向が上昇に転じているためと考えられる。GDP統計の家計の可処分所得は年次推計値が公表されている2016年1-3月期までしか明らかとなっていないが、雇用者報酬の実績値、その他の各種情報をもとに家計の可処分所得を求めた上GDPベースの平均消費性向2を試算すると、2016年中には大幅な低下が続いてきた消費性向が2017年に入ってから上昇に転じ、消費の押し上げ要因となっていることが確認できる。
2016年中はマイナス金利導入に伴う消費者心理の悪化、株価の下落、相次ぐ台風上陸などの天候不順、生鮮野菜の高騰に伴う節約志向の高まりなどが消費性向の押し下げ要因となっていたが、2017年入り後はこうしたマイナス材料が比較的少ないこと、株価の上昇傾向が続いたことが消費性向の押し上げに寄与しているものと考えられる。
2016年中はマイナス金利導入に伴う消費者心理の悪化、株価の下落、相次ぐ台風上陸などの天候不順、生鮮野菜の高騰に伴う節約志向の高まりなどが消費性向の押し下げ要因となっていたが、2017年入り後はこうしたマイナス材料が比較的少ないこと、株価の上昇傾向が続いたことが消費性向の押し上げに寄与しているものと考えられる。
また、消費低迷が長期化した一因は、リーマン・ショック後にエコカー補助金・減税、家電エコポイント制度などの需要喚起策、地上アナログ放送終了(地デジ対応テレビの買い替え需要急増)、Windows XPのサポート終了、消費税率引き上げ前の駆け込み需要など、耐久消費財の購入を促進する事象が相次いで発生したため、耐久消費財で大規模なストック調整が発生したことであった。しかし、リーマン・ショックの発生から10年近くが経過し、需要喚起策により購入された自動車、家電などが買い替え時期を迎えたことで耐久消費財のストック調整は概ね一巡したと考えられる。実際、耐久財の消費支出は消費税率引き上げをきっかけとして急速に落ち込んだ後、低迷が続いていたが、2015年10-12月期を底に増加に転じている。
2 平均消費性向=家計最終消費支出÷(可処分所得+年金受給権の変動調整)
(輸出の勢いはやや鈍化)
2017年4-6月期の輸出は前期比▲0.5%と4四半期ぶりの減少となり、日本銀行の実質輸出、内閣府算出の輸出数量指数も前期比でマイナスとなった。しかし、2016年半ばから大幅な増加が続いてきたことを踏まえれば、輸出の底堅さは維持されていると判断される。
世界の貿易量は2011年以降、世界経済の成長率を下回る伸びが続いていた(いわゆるスロー・トレード)が、2016年終盤以降伸びが大きく高まり、足もとでは世界経済の成長率を若干上回る伸びとなっている。足もとの動きだけでスロー・トレードから完全に脱したと判断するのは早計だが、最近の世界経済の回復はIT関連を中心とした製造業サイクルの好転によるところが大きく、このことがグローバルな貿易取引の活発化につながっていると考えられる。
2017年4-6月期の輸出は前期比▲0.5%と4四半期ぶりの減少となり、日本銀行の実質輸出、内閣府算出の輸出数量指数も前期比でマイナスとなった。しかし、2016年半ばから大幅な増加が続いてきたことを踏まえれば、輸出の底堅さは維持されていると判断される。
世界の貿易量は2011年以降、世界経済の成長率を下回る伸びが続いていた(いわゆるスロー・トレード)が、2016年終盤以降伸びが大きく高まり、足もとでは世界経済の成長率を若干上回る伸びとなっている。足もとの動きだけでスロー・トレードから完全に脱したと判断するのは早計だが、最近の世界経済の回復はIT関連を中心とした製造業サイクルの好転によるところが大きく、このことがグローバルな貿易取引の活発化につながっていると考えられる。
2016年後半以降の日本の輸出の伸びは世界貿易の伸びを上回っている。日本銀行の実質輸出の動きを財別に見ると、2016年後半の輸出の牽引役となっていた情報関連、自動車関連の増勢は一服しているが、世界的な設備投資の回復を反映し、資本財の増加ペースが加速している。IMFの「World Economic Outlook(2017年7月)」によれば、世界の実質投資は2016年には前年比でほぼゼロ%に落ち込んだが、2017年、2018年は世界経済の成長率を上回る4%程度の伸びが予想されている。日本の資本財輸出は世界の実質投資との連動性が高いため、先行きの輸出は資本財を中心に堅調に推移することが見込まれる。
(2017年08月15日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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