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- 景気好調下で弱まる物価の基調~既往の円高と個人消費の弱さが物価を下押し
2017年07月14日
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●景気好調下で弱まる物価の基調
特に弱い動きとなっているのが耐久消費財で、2015年末頃には前年比3%台の高い伸びとなっていたが、その後は円高の進行にやや遅れる形で伸び率が大きく低下し、2016年7月に下落に転じた後、足もとでは前年比▲2%台のマイナスとなっている。耐久消費財はリーマン・ショック以降に進行した急激な円高に伴う海外生産シフトの拡大などを背景に2010年頃から輸入浸透度が大きく上昇した(図4)。この結果、パソコン、テレビ、ビデオカメラなどの耐久消費財は近年、為替変動の影響をより強く受けるようになっている。
また、被服、履物などの半耐久消費財、食料工業製品、家事用消耗品などの非耐久消費財は耐久消費財に比べれば為替に対する感応度は低いものの、輸入浸透度が長期的に上昇していることもあり、かつてに比べて為替の影響を受けやすくなっている可能性がある。
2010年以降とそれ以前の月次データを用いて、消費者物価に対する名目実効為替レートの感応度を計測すると、いずれの財でも2010年以降の時差相関係数が高くなっていることに加え、耐久消費財では特に感応度(弾性値)が大きく高まっていることが確認できる(図5)。
また、被服、履物などの半耐久消費財、食料工業製品、家事用消耗品などの非耐久消費財は耐久消費財に比べれば為替に対する感応度は低いものの、輸入浸透度が長期的に上昇していることもあり、かつてに比べて為替の影響を受けやすくなっている可能性がある。
2010年以降とそれ以前の月次データを用いて、消費者物価に対する名目実効為替レートの感応度を計測すると、いずれの財でも2010年以降の時差相関係数が高くなっていることに加え、耐久消費財では特に感応度(弾性値)が大きく高まっていることが確認できる(図5)。

(需給バランスの改善が物価上昇につながりにくい理由)
このように、近年の消費者物価は為替変動による影響をより強く受けるようになっている可能性が高いが、言うまでもなく物価は需給バランスの動向によって決まる部分も大きい。
このように、近年の消費者物価は為替変動による影響をより強く受けるようになっている可能性が高いが、言うまでもなく物価は需給バランスの動向によって決まる部分も大きい。

実質GDP成長率は2015、2016年度と2年連続で1.2%となり、ゼロ%台後半とされる潜在成長率を上回ったが、家計消費支出(除く持ち家の帰属家賃)は2015年度が前年比0.1%、2016年度が同0.4%とこれを大きく下回った。

企業が価格改定を行う際には、経済全体の需給バランスよりはむしろ企業の売上高に直結する個人消費の強弱を判断材料としている可能性が高い。GDPギャップが改善している一方で個人消費が低調に推移してきたことが基調的な物価上昇圧力が高まらない一因になっていると考えられる。
(2017年07月14日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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