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最近の人民元と今後の展開(2017年5月号)~欧州政治に加えて、「一帯一路」国際会議とG7にも注目!
三尾 幸吉郎
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1――4月の人民元の動き
なお、基準値は市場実勢とほぼ連動して動いた。4月安値は同6.9042元(4/10)、4月高値は同6.8651元(4/13)で、市場実勢とほぼ同時に高安を付けており、基準値を市場実勢から乖離させるような政策的な動きは見られなかった。また、本土市場(CNY)とオフショア市場(CNH)との間でも大きな乖離は発生せず、人民元レートの変動を政策的に抑制するような動きは見られなかった。
2――今後の展開
さて、6月末に向けての人民元レートは米ドルに対しボックス圏内でほぼ横ばいの動きが続くと予想している(想定レンジは1米ドル=6.8~7.0元)。仏大統領選の決選投票で極右ルペン候補が当選すれば下振れする可能性もあるが、米中首脳会談で合意した「100日計画」という通商交渉が進行中であることから、中国政府は通商交渉を有利に運ぶために、元買いドル売り介入などで人民元の下落を最小限に留めるだろう。従って、大幅なドル高・元安になる可能性は低いと見ている。米中の景気動向を見ると、中国で4月に発表された17年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比6.9%増と市場予想を上回るとともに2四半期連続で上昇、景気回復の動きが鮮明となった(図表-4)。他方、米国では4月に発表された失業率が10年ぶりの低水準になるなど好調を維持しているものの、17年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率0.7%増(季節調整済み、速報値)と市場予想に届かない結果となった。米中の金融政策の行方を考えると、米国ではトランプ政権への期待が萎み始めており長期金利が低下するなど追加利上げのペースが緩やかなものに留まるとの見方が浮上してきた(図表-5)。他方、中国では景気の回復傾向が鮮明となったのに加えて、住宅バブルの膨張が止まらないため、短期金利はじわじわと上昇しており、基準金利の引き上げが視野に入ってきた(図表-6)。従って、当面は米国の利上げが先行して米中金利差が縮小すると見られるものの、長い目で見れば米中金利差の縮小には歯止めが掛かる可能性がでてきており、人民元レートはどちらにも動きづらい
なお、5月には仏大統領選の決選投票もある。前述のとおり4月23日の仏大統領選ではマクロン候補とルペン候補が勝ち残り、7日に決選投票が行なわれる。マクロン候補が優勢との見方が支配的だが、どちらにも賛同できない有権者が多く、棄権が増えれば予断を許さない。また、予想どおりマクロン候補が当選すれば、その後6月の欧州中央銀行(ECB)理事会で量的緩和の解除に向けた出口論議が盛んになる可能性が高まる。そして、ユーロが上昇すれば、人民元も連れ高になるだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2017年05月02日「基礎研レター」)
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