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- 札幌オフィス市場の現況と見通し(2017年)
2017年03月01日
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1. はじめに
                                            札幌ではコールセンターの新規進出や拡張移転などの活発な需要拡大に伴い、空室率の大幅な低下が続いている。特に大規模ビルでは空室率が1.79%まで低下し空室はほとんどない。2017年1月に竣工した大規模ビルはすでに満室で竣工しており、当面は需給の逼迫状況が続くと考えられる。本稿では札幌オフィス市場の現況とともに2023年までのオフィス賃料の予測を行う1。
 
1 2016年の見通し結果は竹内一雅「札幌オフィス市場の現況と見通し(2016年)」不動産投資レポート(2016.2.29)ニッセイ基礎研究所、を参照のこと。
 
            1 2016年の見通し結果は竹内一雅「札幌オフィス市場の現況と見通し(2016年)」不動産投資レポート(2016.2.29)ニッセイ基礎研究所、を参照のこと。
2. 札幌のオフィス空室率・賃料動向
                                                                        札幌では2017年1月に札幌フコク生命越山ビルが満室で竣工した。コールセンターやIT系の新規進出や拡張移転、館内増床などの旺盛な需要増加により、札幌のオフィス需給は逼迫する状況が続いている(図表-1)。空室率は、2000年以降で最低の水準を更新し続けており、三幸エステートによると、2017年2月の空室率は4.78%と、東京都心5区(3.21%)、福岡市(4.03%)に次ぐ低い水準となった2。
空室率の下落に伴い、成約賃料(オフィスレント・インデックス)も上昇が続いている(図表-2)。2016年下期は、前期比で+12.0%、前年同期比で+11.8%の上昇となり、ファンドバブル期(2006年~2008年)のピークまであと3.7%の水準まで回復している。
            空室率の下落に伴い、成約賃料(オフィスレント・インデックス)も上昇が続いている(図表-2)。2016年下期は、前期比で+12.0%、前年同期比で+11.8%の上昇となり、ファンドバブル期(2006年~2008年)のピークまであと3.7%の水準まで回復している。
                                                                        空室率に関しては、札幌市内の全てのオフィスビル規模で大幅な低下がみられる(図表-3)。特に、大規模ビルの空室率の低下は著しく、三幸エステートによると2017年2月の空室率は1.79%と、ほぼ空室がない状況にある(図表-4)。この水準は、東京都心5区(2.88%)や大阪市(3.42%)、福岡市(2.10%)などを下回り主要都市で最も低い。三鬼商事によると、2011年以降に札幌ビジネス地区3で竣工した全てのビルが満室になっているという4。
札幌ビジネス地区の2016年末の空室面積(1万8千坪)は、直近のピークである2010年末の33%の水準であり、1995年以降で最少の空室面積となった(図表-5)。
            札幌ビジネス地区の2016年末の空室面積(1万8千坪)は、直近のピークである2010年末の33%の水準であり、1995年以降で最少の空室面積となった(図表-5)。
2 三鬼商事によると2017年1月の新規供給で空室率が上昇したが2016年11月まで16ヶ月連続で空室率の低下が続いたという。
3 三鬼商事の定義による。札幌の主要5 地区(駅前通・大通公園地区、駅前東西地区、南1 条以南地区、創成川東・西11 丁目近辺地区、北口地区)からなる。
4 三鬼商事「札幌の最新オフィスビル市況 調査月報2017年1月号」を参照のこと。
3. 札幌のオフィス需給と地区別動向
                                                                        札幌ビジネス地区では、6年連続で賃貸面積(稼動面積)が増加し、この間の賃貸面積の減少は5万坪を上回った(図表-6左図)。賃貸面積の増加は2015年の+1万4千坪から2016年には+7千坪へと半減したが、これは市況の好調による空室面積の減少に伴い、賃貸面積の増加余地が少なくなったためと考えられる。
札幌市では近年、低水準ながらも2年に一度の大規模ビルの供給が続いてきた。他の主要都市では、2007年から2010年の大量供給後に、新規供給がほとんどなくなったのと比べ、安定した供給が続いている。なお、過去10年間の札幌市での新規供給量は3万6千坪と少なく、大阪市(37万坪)や名古屋市(22万坪)はもちろん、福岡市(9万5千坪)や仙台市(8万坪)をも大きく下回っている(図表-7)。
札幌ビジネス地区の賃貸面積の増加を、新築ビルと既存ビルとに分けてみると、最近の賃貸需要の増加と相対的な新築ビルの少なさから、2015年と2016年の需要増加の9割弱が既存ビルで吸収されている(図表-8)。三幸エステートによるネット・アブソープション5(吸収需要)の調査でも、2000年以降で最高水準の需要吸収が進んでいることが示されている(図表-9)。
            札幌市では近年、低水準ながらも2年に一度の大規模ビルの供給が続いてきた。他の主要都市では、2007年から2010年の大量供給後に、新規供給がほとんどなくなったのと比べ、安定した供給が続いている。なお、過去10年間の札幌市での新規供給量は3万6千坪と少なく、大阪市(37万坪)や名古屋市(22万坪)はもちろん、福岡市(9万5千坪)や仙台市(8万坪)をも大きく下回っている(図表-7)。
札幌ビジネス地区の賃貸面積の増加を、新築ビルと既存ビルとに分けてみると、最近の賃貸需要の増加と相対的な新築ビルの少なさから、2015年と2016年の需要増加の9割弱が既存ビルで吸収されている(図表-8)。三幸エステートによるネット・アブソープション5(吸収需要)の調査でも、2000年以降で最高水準の需要吸収が進んでいることが示されている(図表-9)。
                                                                        札幌ビジネス地区ではオフィスビルの全規模で空室率の大幅な低下がみられる(図表-10)。2016年1月の空室率は駅前通・大通公園地区で3.08%(一年前は4.31%)、駅前東西地区で1.70%(同4.12%)、南1条以南地区で7.16%(同7.69%)、創成川東・西11丁目近辺地区で6.65%(同7.41%)、北口地区で1.67%(同3.38%)と、駅前東西地区と北口地区で1%台の水準にまで低下している(図表-11左図)。
空室率の低下に伴い、各地区の募集賃料も底打ちの傾向がみられる6(図表-11右図)。需給の逼迫度に合わせ地区別の募集賃料は上下変動がみられるが、駅前東西地区を中心に、全ての地区で賃料は底打ちの傾向が強まっている7。
            空室率の低下に伴い、各地区の募集賃料も底打ちの傾向がみられる6(図表-11右図)。需給の逼迫度に合わせ地区別の募集賃料は上下変動がみられるが、駅前東西地区を中心に、全ての地区で賃料は底打ちの傾向が強まっている7。
5 ネット・アブソープションとは調査期間内のオフィス需要(稼動面積)の増減のことであり、「期初竣工済みビル募集面積」+「新規供給面積」-「期末竣工済みビル募集面積」で算出している。
6 募集賃料は地区間に大きな格差がある。2017年1月の平均募集賃料は、駅前通・大通公園地区で10,701円、北口地区で9,645円、駅前東西地区で8,663円、南1条以南地区で7,230円、創成川東・西11丁目近辺地区で6,970円だった。
7 築浅の大規模ビルの空室が非常に少ない現状から、募集における中小ビル等の比率が高まっている可能性が高いため、平均募集賃料の伸びは実態よりも控えめな数値となっている可能性がある。
(2017年03月01日「不動産投資レポート」)
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