コラム
2017年02月21日

“マスク”依存社会-あらたな現代の「国民病」を考える

土堤内 昭雄

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今年もスギ花粉の飛散が始まった。花粉症の人にとっては辛い季節の到来だ。日本気象協会の花粉飛散予測では、2017年は例年に比べて九州・四国・近畿・東海地方で非常に多く、関東・甲信地方でやや少なくなる見込みのようだ。最近では、インフルエンザの流行も重なり、街中でマスクをする人の姿が目立つ。日本人の約3割が花粉症だと言われており、まさに「国民病」の様相を呈している。

一方、PM2.5(微小粒子状物質)による大気汚染が原因で、中国・北京市などで多くの人がマスクをする姿をニュースで見ることがある。日常的に大勢の人がマスクをする光景は、やや異様な感じがしなくもない。6年前の原発事故の時、首都圏の人のマスク姿を放射能汚染対策と報じた海外メディアもあったが、近年増大する訪日外国人には、花粉症のマスク姿はどのように映っているのだろうか。

最近、国内では花粉やインフルエンザなど保健・衛生上の用途とは別に、「顔を隠す」ためにマスクをする人が増えているという。女性がスッピンを隠したり、男性が無精ひげを隠したり、鼻や喉の保湿効果などのメリットもあるという。人によっては外見がひどく気になって対人恐怖症になり、自分の表情を読み取られたくないといった心理的効果からマスクを手放せない人もいるそうだ。

しかし、マスクを常用するようになると、マスクをはずすことに対する不安が募り、人との直接的な会話が巧くできず、一種の引きこもり状態に陥りかねない。電子メールやSNSが広がった今日、匿名や直接顔をあわせないコミュニケーションを好む人も多い。他者とのコミュニケーションが苦手になり、“face to face”の人間関係が希薄になっている現れかもしれない。

最近では親しい間柄の意思伝達の場合も、必要以上にメールやSNSを使うケースが増えている。会社の隣席の人にいつもメールで連絡を取ったり、同居する家族同士でもメールでやり取りしたり、恋人への告白もメールで行う人もいるという。コミュニケーション方法のデジタル化が、人と素顔で向き合うことを難しくし、対面コミュニケーション不全を助長している面もあるだろう。

マスクで顔を隠すことで対人不安を和らげたり、心身の自信のなさやコンプレックスをカバーするなど、マスクは現代生活の自己防衛手段のひとつかもしれない。しかし、過度な「マスク依存症」になると食事や入浴、睡眠中以外はマスクなしでは過ごせなくなるなど、社会生活上の問題も多いだろう。マスクが不可欠な花粉症は文明病のひとつだが、日常の複雑な人間関係における「マスク依存症」が、“社会的孤立”というあらたな現代の「国民病」にならないかと懸念されるのである。

(2017年02月21日「研究員の眼」)

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