2017年01月23日

【東南アジア経済】ASEANの消費者物価(1月号)~資源価格上昇を背景とする緩やかな上昇が続く

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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(図表5)シンガポールCPI上昇率(寄与度) シンガポールの16年12月のCPI上昇率は前年同月比0.2%増(前月:同0.0%増)と上昇した(図表5)。CPI上昇率は今年5月を底に緩やか上昇傾向が続いており、12月も幅広い品目で上昇傾向が見られた。

主要品目別に見ると、運輸は同0.8%増(前月:同0.3%減)と、ガソリン価格の上昇と駐車料金の値上げによって上昇し、1年5ヵ月ぶりのプラスに転じた。またサービス価格は同1.6%増(前月:同1.5%増)と、通信料金の値下げにもかかわらず、12月の休暇費用の増加を受けて上昇した。このほか、食品も同2.1%増(前月:同2.0%増)と若干上昇した。一方、住宅・光熱費は同3.8%減(前月:同3.7%減)と沈滞受託市場の鈍化によってマイナス幅が若干拡大した。

自動車と住宅を除いたMAS(シンガポール金融管理局)のコアCPI上昇率は同1.2%増(前月:同1.3%増)と小幅に低下し、依然として低水準で落ち着いた動きとなっている。

MASは2017年のインフレ率が0.5%~1.5%と、ガソリン価格の上昇や駐車料金の値上げなどを背景に2016年の▲0.5%から上昇すると緩やかに上昇すると予測している。
 
(図表6)フィリピンCPI上昇率(寄与度) フィリピンの16年12月のCPI上昇率は前年同月比2.6%増(前月:同2.5%増)と、クリスマスシーズンの需要増を受けて小幅に上昇した(図表6)。CPI上昇率は昨年2月から食品価格を中心とした緩やかな上昇傾向が続いている。

主要品目別に見ると、まず全体の4割を占める食品・飲料(酒類除く)は同3.6%増と、クリスマスシーズンの需要増や大型台風に伴う農産物の生産の落ち込みによる野菜・果物の高止まりにより、前月の同3.3%増から一段と上昇した。また運輸も燃料や輸送サービスの価格上昇の上昇を受けて同1.9%増(前月:同0.5%増)と上昇した。なお、今春から上昇傾向が続いていた住宅・水・電気・ガス・燃料は同1.3%増と、光熱費こそ引き続き上昇したものの、賃料の低下を受けて前月から横ばいとなった。

食品とエネルギーの一部を除いたコアCPI上昇率は同2.5%増と、前月の同2.4%増から若干上昇した。強い消費需要を背景にコアCPI上昇率も緩やかな上昇傾向にある。

中央銀行はインフレ率が17-18年は電気料金の引上げや石油価格の上昇、強い内需を受けて上昇し、物価目標(2-4%)の範囲内で推移すると予測している。
 
(図表7)ベトナムCPI上昇率(主要品目別) ベトナムの16年12月のCPI上昇率は前年同月比4.7%増と、前月の同4.5%増から一段と上昇した(図表7)。CPI上昇率は依然として政府目標の5%を下回る水準で推移しているものの、昨年後半から上昇基調が続いており、14年7月以来の水準を記録した。

主要品目別に見ると、保健・ヘルスケアはウェイトが全体の5%と大きくないものの、伸び率が同55.7%増(前月:同48.1%増)と医療費の引上げによって一段と上昇した。また運輸は同1.1%減(前月:同1.8%減)と、ガソリン価格の値下げを受けてマイナス幅が縮小した。このほか教育は10.8%増と、新学年が始まった9月から二桁増が続いている。一方、食品は同2.9%増(前月:同3.1%増)、住宅・建材は同3.3%増(前月:同3.6%増)とそれぞれ小幅に低下した。

食料品とエネルギー、政府の価格統制品目(医療・教育)を除いたコアCPI上昇率は同1.9%増(前月:同1.9%増)となり、年明けから概ね横ばい圏の推移が続いている。
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2017年01月23日「経済・金融フラッシュ」)

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