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中国経済:1-9月期を総括した上で2017年に向けた注目ポイントを探る~住宅、民間投資、自動車が焦点に
三尾 幸吉郎
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3.消費は堅調、投資は減速、輸出には底打ちの兆し
4.金融政策は景気重視からバブル退治へ
2016年1-9月期の金融政策の動きを振り返ると、年明けに株価が急落し、人民元が資金流出懸念から売られる中で、中国人民銀行は3月1日に市中銀行から強制的に預かる資金の比率である預金準備率を0.5%引き下げた(図表-11)。過剰設備・過剰債務の調整を進める上で、その痛みを和らげるための措置とされた。また、ドル売り元買い介入が増える中で、金融市場に人民元建て資金を供給する必要があったことも背景と見られる。また、中国人民銀行は貸出・預金の基準金利の引き下げを見送った(図表-11)。年明けの中国では景気が大きく下振れしたため、市場では利下げ期待が浮上していた。しかし、原油価格が底打ちしたことや春節(旧正月)に食品価格が急騰したため、消費者物価は上昇率を高めていた。また、住宅バブル懸念が強まったことも利下げを見送った背景のひとつと見られる。住宅価格の動きを見ると、今年7月には前回高値(2014年4月)を越えて最高値を更新中である2。また、9月の住宅価格を見ると、70都市平均では前回高値を小幅に(約4%)上回ったに過ぎないものの、深圳市では前回高値から80.3%上昇、上海市では同46.2%上昇、北京市では同33.8%上昇するなど巨大都市では住宅バブル懸念が強まってきた。すなわち、2016年1-9月期には、成長率目標である“6.5-7%”の達成にメドが立たなかったため、その達成に向けて景気を重視するスタンスで臨み、住宅バブルの膨張に関しては本格的な対策を講じなかったといっても過言ではないだろう。
2017年に向けての金融政策は、景気重視から住宅バブル退治に重点が移ると見られる。これまで景気対策としてインフラ整備を加速させてきたことや、住宅バブル膨張を黙認したことで住宅販売が急増したため、2016年の成長率目標の達成はほぼ確実となった。景気に対する心配が薄れた中で、今後は将来に大きな禍根を残さぬよう住宅バブル退治に注力することになるだろう。実際、10月国慶節連休前後には深圳市や上海市など多くの地方政府が住宅購入規制を強化する方向に動き出した。また、中国人民銀行は10月12日に、商業銀行17行の幹部および融資担当者などを招集して住宅ローンの管理強化を要請した。中国銀行業監督管理委員会(銀監会)も、不動産融資を巡るリスク管理を強化する方針を明らかにした。中国の中央政府と地方政府は一斉にバブル退治に向けて動き出している。2 住宅価格は、中国国家統計局が毎月公表する「70大中都市住宅販売価格変動状況」の中で、新築分譲住宅価格(除く保障性住宅)を用いている。また、2016年1月以降の2010年基準指数及び70都市平均を定期公表されてないためニッセイ基礎研究所で推定している。
(2016年10月28日「Weekly エコノミスト・レター」)
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