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日本企業の信用リスクは磐石か-CDSスプレッドの縮小トレンドに潜む不安材料

金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹
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3――社債スプレッドから見た信用リスクの状況
3 社債スプレッドとCDSスプレッドは理論的には同様の性質を持つものだが、厳密には倒産事由の数が異なる等の市場慣習の違いによって、CDSスプレッドの方が大きくなるのが通例である。
4 社債利回りと国債利回りに5年を選択したのは、iTraxx Japanと満期までの期間を合わせるためである。
4――財務分析から見た信用リスクの状況
図表4は、iTraxx Japanを構成している銘柄のうち37社8についてZ Scoreを計算したものである。構成銘柄の各CDSスプレッドの高低で異なる傾向を示したため、安倍政権誕生以降の各CDSスプレッドの月末値に関する平均値で分類した。
CDSスプレッドが相対的に低い構成銘柄(低CDSスプレッド20社)はZ Scoreの上昇傾向が継続しているが、CDSスプレッドが相対的に高い構成銘柄(高CDSスプレッド17社)はZ Scoreの上昇傾向が続いていたものの直近の2016年期末9においてZ Scoreが低下している。よって、AltmanのZ Scoreの観点で見ると、安倍政権誕生時から全般的に信用リスクは改善していると言えるが、低CDSスプレッド20社については信用リスクの改善傾向が維持されているものの、高CDSスプレッド17社については直近の会計期末において悪化したことになる。よって、高CDSスプレッドの銘柄に信用リスクの悪化の兆候が見られるため、今後に注意が必要だということになる。ちなみに、この高CDSスプレッド17社に生じている悪化の兆候に関して、CDS市場では2016年以降は観測されていない(図表5)。
5 本稿では、運転資本に、現金と現金同等物の数値を含めている。
6 本稿では、剰余金に、利益剰余金(内部留保)だけではなく、その他の包括利益累計額も含めている。
7 本稿では、AltmanのZ Scoreを以下のように計算した。
(2)収益性指標: F2=[剰余金]7/[総資産]
(3)収益性指標: F3= [営業利益]/[総資産]
(4)レバレッジ: F4=[株式時価総額]/[負債総額]
(5)回転率: F5=[売上高]/[総資産]
教科書上は、Z Scoreが3.00以上であれば「健全な企業」、1.81よりも小さいときは「倒産状態または倒産に向かっている」と判定されるが、国や業種等により特徴が異なるため注意が必要である。
8 運転資本が計算できない金融機関(2社)と連続的に5年間のデータが取得できなかった企業(1社)を除いた。
9 会計期末が12月末の構成銘柄については、翌年度の会計期末の計算に含めている。
(2016年09月29日「基礎研レポート」)

03-3512-1848
- 【職歴】
2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
2021年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)
【著書】
成城大学経済研究所 研究報告No.88
『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
出版社:成城大学経済研究所
発行年月:2020年02月
福本 勇樹のレポート
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