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- 2016・2017年度経済見通し(16年8月)
2016年08月16日
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(経常収支の見通し)
原油安を主因として貿易収支が5年ぶりに黒字に転換したこと、円安と多額の対外純資産を背景に第一次所得収支が高水準の黒字を続けたこと、訪日外国人の急増に伴う旅行収支の大幅改善からサービス収支の赤字幅が縮小したことから、2015年度の経常収支は18.0兆円となり、2014年度の8.7兆円から倍増した。
しかし、四半期ベースの経常収支は2016年1-3月期の19.9兆円(季節調整済・年率換算値)から2016年4-6月期には18.8兆円へと黒字幅が縮小した。円高、原油安に伴う輸入金額の大幅減少を主因として貿易黒字は若干拡大したが、円高の進展により第一次所得収支の黒字幅が縮小し、訪日外国人旅行者数が頭打ちとなる中、円高の影響で訪日外国人による日本国内での消費額が減少したことから、これまで改善を続けてきたサービス収支の赤字幅が拡大した。
原油安を主因として貿易収支が5年ぶりに黒字に転換したこと、円安と多額の対外純資産を背景に第一次所得収支が高水準の黒字を続けたこと、訪日外国人の急増に伴う旅行収支の大幅改善からサービス収支の赤字幅が縮小したことから、2015年度の経常収支は18.0兆円となり、2014年度の8.7兆円から倍増した。
しかし、四半期ベースの経常収支は2016年1-3月期の19.9兆円(季節調整済・年率換算値)から2016年4-6月期には18.8兆円へと黒字幅が縮小した。円高、原油安に伴う輸入金額の大幅減少を主因として貿易黒字は若干拡大したが、円高の進展により第一次所得収支の黒字幅が縮小し、訪日外国人旅行者数が頭打ちとなる中、円高の影響で訪日外国人による日本国内での消費額が減少したことから、これまで改善を続けてきたサービス収支の赤字幅が拡大した。

経常収支は2015年度の18.0兆円(名目GDP比3.6%)から2016年度に15.3兆円(同3.0%)へと黒字幅が縮小した後、2017年度は15.5兆円(同3.0%)と前年度とほぼ同水準になると予想する。
(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、原油価格下落に伴うエネルギー価格の低下を主因として2016年3月から4ヵ月連続で前年比マイナスとなった。コアCPI上昇率がマイナスとなった主因は原油価格の下落に伴うエネルギー価格の大幅低下だが、ここにきて円高による輸入物価低下の影響を受けやすい食料品、耐久財などでも上昇率の鈍化が目立つようになっている。特に、消費者物価の食料(生鮮食品を除く)は一時前年比で2%台まで伸びを高めたが、輸入物価の食料品が前年比で二桁の下落を続けていることを受けて、足もとでは1%台前半まで伸び率が鈍化している。国内企業物価の食料品はゼロ近傍まで伸び率が低下しており、川上から川下への価格転嫁が進むことにより、消費者物価の食料(生鮮食品を除く)は今後伸び率がさらに低下する可能性が高い。
エネルギー価格の低下幅は夏場以降縮小に向かう公算が大きいが、輸入品を中心とした財の物価下押し圧力が強まることから、消費者物価は当面マイナス圏の推移が続く可能性が高い。
コアCPI上昇率がプラスに転じるのは、円高、原油安の影響がほぼ一巡する2016年度末頃になると予想する。その後は円安、原油高に伴うエネルギー価格の上昇、景気回復持続に伴う需給バランスの改善が消費者物価を押し上げることから、コアCPIは2017年度にはゼロ%台後半まで伸びを高めるが、2017年度中に日本銀行が目標としている2%に達することは難しいだろう。コアCPI上昇率は2016年度が前年比▲0.2%、2017年度が同0.7%と予想する。
なお、8/12に総務省から公表された2015年基準消費者物価指数の遡及結果によれば、2016年1~6月の消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は旧基準(2010年基準)と比べて1月、5月が0.1ポイント下振れ、6月が0.1ポイント上振れしたが、6ヵ月の平均上昇率はほとんど変わらなかった。これまで、消費者物価指数は5年に一度の基準改定のたびに下方改定幅が大きくなる傾向があり、金融市場や日銀の金融政策の波乱要因となっていたが、今回の基準改定ではそうした事態は避けられた。
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、原油価格下落に伴うエネルギー価格の低下を主因として2016年3月から4ヵ月連続で前年比マイナスとなった。コアCPI上昇率がマイナスとなった主因は原油価格の下落に伴うエネルギー価格の大幅低下だが、ここにきて円高による輸入物価低下の影響を受けやすい食料品、耐久財などでも上昇率の鈍化が目立つようになっている。特に、消費者物価の食料(生鮮食品を除く)は一時前年比で2%台まで伸びを高めたが、輸入物価の食料品が前年比で二桁の下落を続けていることを受けて、足もとでは1%台前半まで伸び率が鈍化している。国内企業物価の食料品はゼロ近傍まで伸び率が低下しており、川上から川下への価格転嫁が進むことにより、消費者物価の食料(生鮮食品を除く)は今後伸び率がさらに低下する可能性が高い。
エネルギー価格の低下幅は夏場以降縮小に向かう公算が大きいが、輸入品を中心とした財の物価下押し圧力が強まることから、消費者物価は当面マイナス圏の推移が続く可能性が高い。
コアCPI上昇率がプラスに転じるのは、円高、原油安の影響がほぼ一巡する2016年度末頃になると予想する。その後は円安、原油高に伴うエネルギー価格の上昇、景気回復持続に伴う需給バランスの改善が消費者物価を押し上げることから、コアCPIは2017年度にはゼロ%台後半まで伸びを高めるが、2017年度中に日本銀行が目標としている2%に達することは難しいだろう。コアCPI上昇率は2016年度が前年比▲0.2%、2017年度が同0.7%と予想する。
なお、8/12に総務省から公表された2015年基準消費者物価指数の遡及結果によれば、2016年1~6月の消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は旧基準(2010年基準)と比べて1月、5月が0.1ポイント下振れ、6月が0.1ポイント上振れしたが、6ヵ月の平均上昇率はほとんど変わらなかった。これまで、消費者物価指数は5年に一度の基準改定のたびに下方改定幅が大きくなる傾向があり、金融市場や日銀の金融政策の波乱要因となっていたが、今回の基準改定ではそうした事態は避けられた。
(9/8に予定されている2016年4-6月期2次QEの発表を受けた経済見通しの修正は9/8、欧米経済見通しの詳細は9/9発行のWeeklyエコノミスト・レターに掲載予定です)
(2016年08月16日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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