- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 不動産市場・不動産市況 >
- 低金利や相続税対策などによる活況の一方、不動産賃貸市場の一部に頭打ち感~不動産クォータリー・レビュー2016年第2四半期~
低金利や相続税対策などによる活況の一方、不動産賃貸市場の一部に頭打ち感~不動産クォータリー・レビュー2016年第2四半期~

竹内 一雅
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
5.不動産サブセクターの動向
2016年前半に東京都心部では、JR新宿ミライナタワー、住友不動産新宿ガーデンタワー、大手町フィナンシャルシティグランキューブ、東京ガーデンテラスなどの新規供給があった。新築大規模ビルへの需要の強さから内定が進み、これらのビルではすでに8割以上の稼動となった。
三幸エステートによると、2016年第2四半期の東京都心Aクラスビル6 の空室率は2.6%、Bクラスビルは2.5%と、ほぼ空室がない状況にある(図表-16)。空室率の低下が続く一方、成約賃料(オフィスレント・インデックス)は、Aクラスビルで前期比▲6.9%、Bクラスビルでは同▲3.1%と上昇が頭打ちとなっている。今回の賃料下落は、第2四半期における円高や株安、消費の停滞、熊本地震の発生、企業収益の悪化に加え、前期に大規模ビルの新規供給があった反動などから成約件数が比較的少なかったことも影響したようだ。
空室率については、東京都心部の全規模で低下が見られ、特に最近では中型ビルの低下が顕著に進んでいる(図表-17)。大規模の空室率がかなり低下し、渋谷区などではこれ以上の低下が難しくなっていることから、中小型ビルへの需要の波及はさらに進む可能性もある(図表-18)。
森ビルによると、2017年の都区部での大規模ビルの供給量は最近では2013年に次ぐ低い水準である(図表-20)。このため、需要がプラスで推移する限り、オフィス空室率の低下傾向は、2018年以降の大量供給が市場に現れるまで、当面継続すると考えられる。とはいえ、都心部の新築大規模ビルへの移転では、一人当たり面積を縮小させる動きが一般化しており、高額な家賃負担力を持つ企業の移転が一巡傾向にあることなどからも、今後の市況の改善動向には注意が必要だろう。
全国的にもオフィス空室率の低下は続いている(図表-21)。2016年は主要都市における大規模ビルの供給が少なく、供給圧力の少なさも市況改善に大きく貢献している(図表-22)。
6 Aクラスビルは、エリア(都心5区等)、延床面積(1万坪以上)、基準階面積(300坪以上)、築年数(15年以内)などを条件とするガイドラインから、三幸エステートが個別ビル単位で選定している。Bクラスビルはエリア(都心5区等)内に立地し、基準階面積200坪以上でAクラスビルに該当しないビル。
(2016年08月02日「不動産投資レポート」)
このレポートの関連カテゴリ
関連レポート
- 円高で日本経済はどうなる~懸念される企業収益、物価への悪影響
- オフィス賃料は再上昇、訪日外客数増はホテル市場に加え地価を牽引-不動産クォータリー・レビュー2016年第1四半期
- Jリートは4年ぶりに下落。2015年訪日外国人客数は47%増加-不動産クォータリー・レビュー2015年第4四半期
- 不動産市場は全般に堅調も、オフィス需要など一部に弱い動き~不動産クォータリー・レビュー2015年第3四半期~
- 住宅着工が急回復。訪日外国人の増加がホテル・小売販売市況を下支え~不動産クォータリー・レビュー2015年第2四半期~
- 着実なオフィス賃料上昇、取引は前年同期を上回る水準-不動産クォータリー・レビュー2015年第1四半期
竹内 一雅
竹内 一雅のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2017/12/07 | オフィス市場は好調継続。リート市場の低迷でJREITによる物件取得が減少。-不動産クォータリー・レビュー2017年第3四半期 | 竹内 一雅 | 基礎研マンスリー |
2017/11/09 | オフィス市場は好調継続。リート市場の低迷でJREITによる物件取得が減少。~不動産クォータリー・レビュー2017年第3四半期~ | 竹内 一雅 | 不動産投資レポート |
2017/11/08 | 東京都区部の若年人口-1970年~2015年に20~24歳人口は63%減 | 竹内 一雅 | 基礎研マンスリー |
2017/10/23 | 活況が続く大阪のオフィス市場-大規模ビルを中心に好調は梅田地区以外へ波及 | 竹内 一雅 |
新着記事
-
2025年06月17日
会社員のキャリアビジョン~男女別・年齢別の比較からみるキャリア志向の変化と管理職登用 -
2025年06月17日
女性の低体重・低栄養症候群(FUS)とは?-日本肥満学会が新たな疾患概念を提唱、プレコンセプションケアが解決の一助となるか- -
2025年06月17日
中国就職・転職事情-DeepSeekの台頭と広がる淘汰の危機感【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(69) -
2025年06月17日
今週のレポート・コラムまとめ【6/10-6/16発行分】 -
2025年06月16日
株式併合による非公開化-JAL等によるAGPのスクイーズアウト
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
【低金利や相続税対策などによる活況の一方、不動産賃貸市場の一部に頭打ち感~不動産クォータリー・レビュー2016年第2四半期~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
低金利や相続税対策などによる活況の一方、不動産賃貸市場の一部に頭打ち感~不動産クォータリー・レビュー2016年第2四半期~のレポート Topへ