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若年層の経済格差と家族形成格差-増加する非正規雇用者、雇用形態が生む年収と既婚率の違い

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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正規雇用者と非正規雇用者では賃金格差があることは各所で指摘されており、現在、政府は、不合理な待遇差を是正するとして、「同一労働同一賃金」の実現に向けた検討を進めている。
ここでは、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の最新値を用いて、正規雇用者と非正規雇用者の年収差、及び年齢による変化を確認する。また、両者の比率をイメージしやすくするために、各年齢階級における非正規雇用者の割合も重ねて見る。
図表4を見ると、正規雇用者と非正規雇用者の年収差は、特に男性で大きく、その差は年齢とともに拡大する。男性の20~24歳では両者の差は70.4万円だが、45~49歳では332.9万円となり、正規雇用者の年収(645.6万円)は非正規雇用者(312.7万円)の2倍以上になる。なお、45~49歳の男性で非正規雇用者は同年代男性雇用者の8.6%を占める。
また、非正規雇用男性について見ると、20~24歳では同年代男性雇用者の39.2%を占め、平均年収は222.2万円である。25~29歳では非正規雇用者の割合は19.1%であり、20~24歳と比べて大きく低下する。しかし、前項で見た通り、若い世代ほど各年齢階級における非正規雇用者の割合は高まるため、図表4の20~24歳の非正規雇用男性が25~29歳に成長する時点では、非正規雇用者の割合は現在の値を上回る可能性がある。同様に考えると、正規雇用者と非正規雇用者で年収差が2倍以上ひらく45~49歳では、非正規雇用者の割合が現在は1割に満たないが、今後、拡大する可能性がある。
女性では、男性ほどではないが、やはり正規雇用者と非正規雇用者では年収差があり、年齢とともに、その差は拡大する。なお、非正規雇用女性の年収は、最も多い35~39歳(234.8万円)でも250万円に満たない。なお、女性では新卒時点から非正規雇用者として働き続ける層と出産・子育てで離職後に非正規雇用者として働き始める層が混在することを考慮する必要がある。
女性では、男性ほど顕著ではないが同様に、正規雇用者では年齢とともにピーク位置が所定内給与額階級の高い位置へ移動するとともに、2つ目のピークがあらわれる(図表6)。非正規雇用者でも、男性同様の動きが見られるが、女性では非正規雇用者が多いため、年齢とともに、正規雇用者の雇用者分布より非正規雇用者のものの方が大きくなる。
(2016年07月14日「基礎研レポート」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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