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2015年度生保決算の概要-円高・マイナス金利下で減益、今後さらに難しい状況へ

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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3――かんぽ生命の状況

個人保険の業績動向を見たものが図表-11である。個人保険の新契約高は、▲1.4%の減少となった。主に個人年金の新契約高が減少したためである。(前年度はかんぽ生命5.8%、9社計▲7.7%)。なお、保有契約の減少率は▲3.3%と9社計とほぼ同程度である。(別途「郵便貯金・簡易生命保険管理機構」で管理される、民営化前の旧簡易保険契約を含む。)
基礎利益の状況は、図表-12のとおりである。
利差益は、基礎利回りがほぼ横ばいであったことと、平均予定利率の低下により、さらに拡大し、974億円となった。数年前からEV(エンベディッド・バリュー)の開示を始めたことが関係してか、危険差と費差の内訳は開示されなくなったが、両者合計では減少した。
かんぽ生命の資産運用は、有価証券については、国債・地方債・社債がほとんどを占めており、中でも国債の構成比が有価証券全体の69%となっている。株式への投資はほとんどない。この点は他の伝統的な大手中堅生保とは異なる運用ポートフォリオとなっている。(9社計で有価証券中国債の構成比は44%)
そうしたこともあり、ソルベンシー・マージン比率は、もともと高い。2015年度は1,568.1%と若干低下した(前年度は1,641.4%)。こうした高水準は、リスク性資産の構成割合が従来から低いことに加え、内部留保が厚いことに起因する。例えば、民営化前の旧簡易保険契約(貯金・簡易生命保険管理機構からかんぽ生命が受再している形態)を含め2.4兆円の危険準備金を保有している。かんぽ生命を除く民間生保41社の合計額が、ここ3年増加してきても4.1兆円であることからも、水準の厚さがうかがえる。また逆ざやに備えるための追加責任準備金も累計で6.0兆円という厚い水準にある。
4――トピックス~マイナス金利下での運用難と貯蓄性商品の取扱い
ここ数年の資産運用環境は、株高・円安といった比較的良好な状況が続いていた。しかし、先に見たとおり、2015年度末においては久しぶりの株価下落・円高への動きとなり、さらにその後、このレポートを書いている6月下旬には、英国のEU離脱問題により、一気に株価が下落し円高が進んだ状況も一時出現した。その後大きな混乱はないようだが、いつになく先行が不透明な状況である。国内金利は、年度末時点よりもさらに低下し、10年物だけでなく15年物もマイナスとなり、20年物でも6月下旬現在で0.05%程度といった極めて低い利回りである。
こうした中、主な国内大手中堅社が公表している今後の資産運用方針を見てみる。
国内外の株式については、横ばいないしは増加という会社が多い。どちらかというと国内よりも外国株式のほうを増加させる方針の会社が多いようだ。
どの会社も挙げているのが、外国債券は増加、という点である。どの国でも金利低下傾向であり、すでにドイツでは10年ものでマイナスとなっているが、米国、カナダは10年物で1%台、オーストラリアでは2%台の利回りはある。さらに長期物をみればより高い利回りである。もちろん為替変動リスク等は当然あるので、そのヘッジについては、その場の見通しに応じて機動的に対応するということのようである。収益力向上のため、国内の超低金利を避け外国債券ヘシフト、という方針は昨年と変わっていないのだが、2015年度末にかけて若干の円高、また先日のEU関連での急激な円高など、時に大きな為替差損を生じる可能性のある場面を実際にみると、為替リスクをとりにいくのは決断に苦慮するところではあろう。
今後については各社の方針は様々である。「日本国債は運用対象として機能しない」と明言する会社もある一方、負債とのマッチングをしていく中で、購入額やデュレーションを調整しながら機動的に対応するという方針の会社もある。
資金規模からいうと国内大手中堅各社の投資方針と実際の行動が、各市場にも少なからず影響するということで注目されるのだが、外資系・損保系など全体をみると、やはり国内債券が大きなウェイトを占めている会社が大多数である。通貨が決まっていて(もちろん円建が主だが、最近は外貨建一時払終身なども増加している。)、固定利率を保証するという、ごく普通の保険負債の性質からみて、マイナス金利だからといって、債券投資額を急激に減少させるということは、想像しにくい。結局は、金利の状況に応じ、負債の状況を勘案しながら機動的に対応するというところは共通なのだろう。
といった関連性により、保険商品サイドの予定利率や貯蓄性の維持についても検討の余地がある。
一般的に、運用利回りが低下するのに応じて、予定利率を下げる(保険料を値上げする)のは自然な発想である。しかし、たとえ貯蓄目的の保険商品であっても、保険料の中には幾らか死亡保障に充てる部分、事業運営経費、銀行窓販手数料、等が含まれている以上、満期時の保険金額または年金総額が払込保険料に満たないケースも生じてくる場合がある。このことは貯蓄目的の加入者の期待に沿うことではないので、たとえ商品設計上可能ではあっても、保険料値上げではなく、そういった保険商品を販売停止にする選択肢もある。
実際、昨年から今年にかけて、一時払終身保険など一部の保険商品につき、保険料を値上げするだけでなく、販売そのもの(特に銀行窓販)を停止としたりする会社も多くみられる。
資産運用方針と、保険商品の価格や販売政策とは、このような点で密接に関連しているものである。
なお、このままの金利状況が続くと、2017年度には標準利率(現在1%、ただし一部の一時払商品などを除く)が引き下げられるであろうことはほぼ確実である。標準利率は直接には責任準備金の計算に使用され、充分な水準の積立を行なうための利率であり、保険料を直接規制するものではないが、これまでの例では、標準利率の引き下げに対応して保険料も変更されてきた。単純な値上げを回避するための経費率や事故発生率も合わせて検討されるかもしれない。そうした点も踏まえ、決算業績だけでなく、保険商品の価格・販売動向にも引き続き注目していきたい。
(2016年07月07日「基礎研レポート」)

03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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