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- 日銀短観(6月調査)~大企業製造業の景況感は横ばいだが、非製造業は悪化、設備投資計画も弱い
2016年07月01日
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4.売上・収益計画:16年度の収益計画は下方修正されたが、下振れリスク大
15年度収益計画(全規模全産業)は、売上高が前年度比1.3%減(前回は1.0%減)、経常利益が4.8%増(前回は4.3%増)となった(図表6~8)。円高が響いたとみられ、製造業で減益幅が拡大されたが、非製造業の上方修正で補われた。
また、16年度収益計画(全規模全産業)は、売上は前年度比0.1%減(前回は横ばい)、経常利益は7.2%減(前回は2.2%減)とそれぞれ下方修正され、減収減益計画となった。売上の内訳出は輸出の下方修正が目立つ。しかも、16年度想定為替レート(大規模製造業)が111.41円と前回(117.46円)からはかなり円高方向に修正されたが、足下の実勢よりも8円程度円安に設定されている点には留意が必要。円高の織り込みが遅れているだけに、今後急激な円安が進まない限り、収益計画に下方修正が入る可能性が高い。
また、16年度収益計画(全規模全産業)は、売上は前年度比0.1%減(前回は横ばい)、経常利益は7.2%減(前回は2.2%減)とそれぞれ下方修正され、減収減益計画となった。売上の内訳出は輸出の下方修正が目立つ。しかも、16年度想定為替レート(大規模製造業)が111.41円と前回(117.46円)からはかなり円高方向に修正されたが、足下の実勢よりも8円程度円安に設定されている点には留意が必要。円高の織り込みが遅れているだけに、今後急激な円安が進まない限り、収益計画に下方修正が入る可能性が高い。
5.設備投資・雇用:16年度設備投資計画はかなり抑制的、人手不足感はやや緩和
生産・営業用設備判断D.I.(「過剰」-「不足」)は全規模全産業で1と、前回から2ポイント上昇した。雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)も全規模・全産業で▲17と前回から1ポイント上昇(不足が緩和)している。内外需の低迷が設備・人手不足感の緩和に若干働いたようだが、構造的な人手不足感もあり、雇用判断D.I.の上昇幅はわずかに留まった。
上記の結果、需給ギャップの代理変数とされる「短観加重平均D.I.」(設備・雇用の各D.I. を加重平均して算出)は前回からやや上昇している(▲11.7ポイント→▲10.3ポイント)。
ただし、水準としては引き続き人員の不足感が極めて強い状況が続いている。内訳を見ると、従来同様、製造業(全規模で▲6)よりも、労働集約型産業が多い非製造業(全規模で▲25)で、人手不足感がより強い。また、企業規模別で見ると、人材調達力の違いが反映されているとみられるが、中小企業が▲19と大企業の▲10を下回る状況が続いている。この結果、中小企業非製造業では▲26と、中堅企業非製造業と並んで全区分中で最大のマイナス幅(人手不足感)となっている。
人手不足は製造業・非製造業や企業規模を問わず幅広く共有されているが、特に中堅・中小企業非製造業においては深刻な経営課題になっている。
先行きの見通し(全規模全産業)は、設備判断D.I.が現状比3ポイント低下の▲2、雇用判断D.I.も3ポイント低下の▲20と、不足感が強まることが見込まれている。両者を反映した「短観加重平均D.I.」も低下に向かう見込み(▲10.3ポイント→▲13.3ポイント)である。雇用判断D.I.の低下は特に中小企業で顕著であり、中小企業における人手不足に対する警戒感が現れている(図表9,10)。
上記の結果、需給ギャップの代理変数とされる「短観加重平均D.I.」(設備・雇用の各D.I. を加重平均して算出)は前回からやや上昇している(▲11.7ポイント→▲10.3ポイント)。
ただし、水準としては引き続き人員の不足感が極めて強い状況が続いている。内訳を見ると、従来同様、製造業(全規模で▲6)よりも、労働集約型産業が多い非製造業(全規模で▲25)で、人手不足感がより強い。また、企業規模別で見ると、人材調達力の違いが反映されているとみられるが、中小企業が▲19と大企業の▲10を下回る状況が続いている。この結果、中小企業非製造業では▲26と、中堅企業非製造業と並んで全区分中で最大のマイナス幅(人手不足感)となっている。
人手不足は製造業・非製造業や企業規模を問わず幅広く共有されているが、特に中堅・中小企業非製造業においては深刻な経営課題になっている。
先行きの見通し(全規模全産業)は、設備判断D.I.が現状比3ポイント低下の▲2、雇用判断D.I.も3ポイント低下の▲20と、不足感が強まることが見込まれている。両者を反映した「短観加重平均D.I.」も低下に向かう見込み(▲10.3ポイント→▲13.3ポイント)である。雇用判断D.I.の低下は特に中小企業で顕著であり、中小企業における人手不足に対する警戒感が現れている(図表9,10)。
15年度設備投資(全規模全産業)は、前年度比で5.0%増と、前回調査時点計画の8.0%増から大幅に下方修正された。例年、6月調査(実績)では大企業を中心に若干下方修正されることが多いが、今回の下方修正幅は極めて大きい。
16年度の設備投資計画(全規模全産業)は、15年度比で0.4%増と前回調査時点の4.8%減から上方修正された。例年、3 月調査から6 月調査にかけては、計画が固まってくることに伴って、大きく上方修正される傾向が強いうえ、今回は比較対象となる15年度の設備投資が大きく下方修正され、前年比のハードルが下がっていた。それにもかかわらず、示された16年度計画は例年に比べて上方修正幅が抑制的であり、伸び率の水準としても6月調査としては5年ぶりの低水準に留まっている。円高の進行、国内消費の伸び悩み、インバウンドの鈍化など懸念材料は多く、先行きの不透明感が強いことが企業の投資先送りに繋がっていると考えられる(図表11~12)。
なお、15年度計画(全規模全産業で5.0%増)は事前の市場予想(QUICK 集計7.4%増、当社予想は7.7%増)を大きく下回る結果であった。16年度計画(全規模全産業0.4%増)は事前の市場予想(QUICK 集計0.5%増、当社予想は0.4%増)を若干下回る結果だが、15年度の下振れを踏まえると、水準としては大きく未達。
16年度の設備投資計画(全規模全産業)は、15年度比で0.4%増と前回調査時点の4.8%減から上方修正された。例年、3 月調査から6 月調査にかけては、計画が固まってくることに伴って、大きく上方修正される傾向が強いうえ、今回は比較対象となる15年度の設備投資が大きく下方修正され、前年比のハードルが下がっていた。それにもかかわらず、示された16年度計画は例年に比べて上方修正幅が抑制的であり、伸び率の水準としても6月調査としては5年ぶりの低水準に留まっている。円高の進行、国内消費の伸び悩み、インバウンドの鈍化など懸念材料は多く、先行きの不透明感が強いことが企業の投資先送りに繋がっていると考えられる(図表11~12)。
なお、15年度計画(全規模全産業で5.0%増)は事前の市場予想(QUICK 集計7.4%増、当社予想は7.7%増)を大きく下回る結果であった。16年度計画(全規模全産業0.4%増)は事前の市場予想(QUICK 集計0.5%増、当社予想は0.4%増)を若干下回る結果だが、15年度の下振れを踏まえると、水準としては大きく未達。
(2016年07月01日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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