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- 【2月米個人所得・消費支出】消費の伸びが所得を下回ったほか、前月も大幅下方修正され、家計が消費に慎重な姿勢を示唆
2016年03月29日
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1.結果の概要:所得は前月から伸びが鈍化、消費は前月値が大幅下方修正
3月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は2月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は、前月比+0.2%(前月:+0.5%)となり、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.1%は上回ったものの、前月から伸びが鈍化した。一方、個人消費支出(名目値)は、前月比+0.1%(前月:+0.1%)と、こちらは市場予想(+0.1%)、前月に一致した(図表1)。なお、前月値は当初発表の+0.5%から+0.1%に大幅に下方修正された。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は、前月比+0.2%(前月:横這い)と前月、市場予想(+0.1%)を上回った(図表5)。こちらも前月値が+0.4%から大幅に下方修正された。貯蓄率1は5.4%(前月:5.3%)と前月から上昇した。
価格指数は、総合指数が前月比▲0.1%(前月:+0.1%)と市場予想(▲0.1%)には一致したものの、前月からマイナスに転じた。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.1%(前月値:+0.3%)となり、前月、市場予想(+0.2%)を下回った(図表6)。なお、前年同月比では、総合指数が+1.0%(前月:+1.2%)、コア指数が+1.7%(前月値:+1.7%)となった(図表7)。
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。
価格指数は、総合指数が前月比▲0.1%(前月:+0.1%)と市場予想(▲0.1%)には一致したものの、前月からマイナスに転じた。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.1%(前月値:+0.3%)となり、前月、市場予想(+0.2%)を下回った(図表6)。なお、前年同月比では、総合指数が+1.0%(前月:+1.2%)、コア指数が+1.7%(前月値:+1.7%)となった(図表7)。
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。
2.結果の評価:貯蓄志向が強く、16年以降の消費は冴えない状況が持続

また、貯蓄率が5.4%と15年2月以来、1年ぶりの高さとなっており、足元で貯蓄志向が強まっている。
先月のレポートでは、16年以降の株式市場の下落による消費への影響は限定的と書いたが、この2ヵ月の結果をみると消費に影響した可能性は否定できなくなった。もっとも、株式市場は2月中旬以降、大幅に値を戻しており、消費への影響は軽減する見込みであり、3月の統計で消費の回復が示されるか注目される。
一方、物価は総合指数が前月比でマイナスに転じたほか、前年同月比でも伸びが鈍化した。これは、原油価格をはじめエネルギー価格の下落によるとみられる。もっとも、原油価格は2月中旬に一時20ドル台後半まで下落した後は上昇に転じ、足元は40ドル近辺まで上昇していることから、エネルギー価格下落による物価の押し下げは逓減するとみられる。一方、コア指数は前年同月比の伸びが安定してきているものの、依然として物価目標の2%を下回る状況が持続しており、足元で物価の加速はみられない。
3.所得動向:賃金・給与が前月比でマイナスに転じた
個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比▲0.1%(前月:+0.5%)と15年9月以来のマイナスに転じた(図表2)。高い伸びとなった前月の反動もあるとみられるものの、2月の雇用統計で賃金の伸びが鈍化したことと整合的であり、今週末に発表される雇用統計も含めて3月以降の統計が注目される。一方、利息・配当収入は+0.3%(前月+0.4%)と底堅い伸びが持続した。
個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、名目値が+0.2%(前月:+0.4%)、価格変動の影響を除いた実質ベースも+0.3%(前月:+0.3%)と、基調として底堅い伸びが持続しており、今後の消費下支えが期待できる(図表3)。
個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、名目値が+0.2%(前月:+0.4%)、価格変動の影響を除いた実質ベースも+0.3%(前月:+0.3%)と、基調として底堅い伸びが持続しており、今後の消費下支えが期待できる(図表3)。
4.消費動向:サービスが底堅い一方、エネルギー消費の弱さから非耐久財消費の減少が持続
個人消費の内、サービス消費は前月比+0.4%(前月:+0.4%)と、前月と同水準の伸びを維持した(図表4)。住宅・公共サービスが+0.5%(前月:+1.0%)と前月から伸びが鈍化したものの、外食・宿泊サービス+0.9%(前月:▲0.8%)や、娯楽サービス+0.4%(前月:▲0.3%)が前月からプラスに転じた。
一方、財消費は前月比▲0.7%(前月:▲0.6%)と、前月比+0.4%から大幅に下方修正された前月からもさらに減少した。財消費の内訳をみると、耐久財が+0.1%(前月:▲0.7%)と前月から僅かにプラスに転じたものの、非耐久財が▲1.1%(前月:▲0.5%)とマイナス幅が拡大したことが大きい。とくに、ガソリン・エネルギーは▲11.2%(前月:▲5.4%)と2桁の落ち込みとなった。一方、耐久財も自動車・自動車部品が+0.2%(前月:▲0.4%)と、12月に▲2.7%の大幅なマイナスとなった後、1月は当初+2.2%と大幅にリバウンドしたとみられていたが、今回の改訂により1月も減少していたほか、2月も回復に力強さが欠けていることが示された。
一方、財消費は前月比▲0.7%(前月:▲0.6%)と、前月比+0.4%から大幅に下方修正された前月からもさらに減少した。財消費の内訳をみると、耐久財が+0.1%(前月:▲0.7%)と前月から僅かにプラスに転じたものの、非耐久財が▲1.1%(前月:▲0.5%)とマイナス幅が拡大したことが大きい。とくに、ガソリン・エネルギーは▲11.2%(前月:▲5.4%)と2桁の落ち込みとなった。一方、耐久財も自動車・自動車部品が+0.2%(前月:▲0.4%)と、12月に▲2.7%の大幅なマイナスとなった後、1月は当初+2.2%と大幅にリバウンドしたとみられていたが、今回の改訂により1月も減少していたほか、2月も回復に力強さが欠けていることが示された。
(2016年03月29日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
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