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花粉症から卒業できる日はくるか―家計支出にも現れる、花粉症の影響―
生活研究部 主任研究員 井上 智紀
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気づけば卒業のシーズンを迎えている。FacebookなどのSNS上でも、自身の、あるいは、家族の卒業を祝う投稿が散見されるようになっている。一方で、3月は発症後、卒業することは極めて困難な、花粉症のシーズンでもある1。国内の花粉症の患者数は明らかになっていないものの、過去に実施された全国疫学調査では、花粉症の有病率は98年から08年の10年間に10%ポイントも増加しており、今や国民の3割が罹患しているともいわれている。
このような状況の中、3月は花粉症に関連する様々な消費も活発になっている。総務省統計局の家計調査より、2013年の1年間における二人以上世帯の品目別の支出額を月別にみると、鼻炎薬などを含む「他の医薬品」や「ティッシュペーパー」では、3月の支出額が最も高く、目薬などを含む「他の外用薬」も6~8月と並んで高い2(図表1)。また、マスクを含む「保健用消耗品」は1~2月、12月に次いで高くなっている。
これらの支出状況について、過去のトレンドをみると、2005年対比では「他の医薬品」、「他の外用薬」、「保健用消耗品」で、2010年対比では4品目すべてで、支出額が増加していることがわかる。この間、品目別のCPIは、いずれも下落している。また、飛散する花粉の量は年により変動しているものの、一貫して増加する傾向は認められておらず、発症後は徐々に重症化するものでもないことから、こうした花粉症に関連する医薬品等の消費量は、一人あたりでは概ね一定であると考えることが妥当であろう。これらのことから、家計における支出額の増加は、患者数の趨勢的増加、すなわち、世帯あたりの消費量と、消費する世帯数のいずれか、または両方が増えていることに起因しているものと考えられよう。
前述の疫学調査の結果と同様、08年以降も患者数が増加し続けているとすれば、人口が減少していく中にありながら、依然として市場が拡大していることになる。毎年、花粉症対策にむけて医薬品をはじめとした様々な新商品が開発・発売されていることは、花粉症対策の市場について、企業が有望なマーケットとみなしていることを表しているといえよう。
幸いにも筆者は今のところ発症には至っていない(と思っている)ものの、身の回りでも、花粉症の症状や対策商品について、盛んに口コミが交わされる姿は年中行事の様相を示すようになっている。毎年つらい思いをしている方々はもちろん、数年後には発症してしまうのでは...と恐々としている筆者のためにも、一刻も早く、花粉症からの卒業が現実のものとなる日がくることに期待したい。
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03-3512-1813
(2015年03月10日「研究員の眼」)
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