2014年07月03日

CRE戦略の企業経営における位置付けと役割

社会研究部 上席研究員 百嶋 徹

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■見出し

1―高まるCRE戦略の重要性
2―経営資源の全体最適化行動とCRE戦略の位置付け
 1│CRE戦略は社内に対する不動産サービスベンダー機能を担うとの意識が必要
 2│シェアードサービス業務の集約化を図る米国先進企業事例
3―シェアードサービス型戦略としてのCRE戦略の役割
 1│CRE戦略の3つの役割
 2│社内CRMとベンダーマネジメントの重要性
 3│事業・財務構造の再編を促すCRE戦略
4―マネジメント・レイヤーのCRE戦略の先進事例
 1│事例分析:販社不動産の一元管理にいち早く踏み出した日産自動車
 2│事例分析:事業の選択と集中を加速させた東芝
 3│マネジメント・レイヤーのCRE戦略は企業経営を大きく左右
5―CRE戦略の本格化に向けて
 1│CRE戦略構築の準備と運用面の注意点
 2│経営層に伝えるべきポイント

■introduction

CRE(Corporate Real Estate)とは、企業が事業を継続するために使うすべての不動産を指す。これを重要な経営資源の一つに位置付け、その活用、管理、取引(取得、売却、賃貸借)に際し、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)を踏まえた上で、企業価値最大化の視点から最適な選択を行う経営戦略がCRE戦略だ。

合理的な企業経営を実践する経営トップにとっては、特に目新しい概念ではなく定石的な経営戦略ではあるが、企業を取り巻く環境変化の下でその重要性が高まっている。

外国人持ち株比率の上昇や物言う株主の台頭、さらにはCREの所有価値に着目した敵対的買収の増加など資本市場での変化、固定資産の減損会計適用 といった会計制度の変化を背景に、経営トップは事業を通じてCREの利用価値に見合った活用を行い、自社の株価にその資産価値を反映させることが重要になっている。CREを有効活用して十分なキャッシュフローを創出し企業価値を最大化すれば、敵対的買収にも遭いにくく、時価会計にも自ずと対応できるはずだ。また、内部統制強化の要請への対応からも、価格変動リスクを抱えるCREについて、適切なマネジメント体制を構築することが必要になっている。

そこで本稿では、CRE戦略の企業における位置付けと役割を明確にした上で、CRE戦略の先進事例を紹介し、さらに今後CRE戦略を構築し本格化させようとする企業にとって、準備と運用面で注意すべき点と経営層に伝えるべきポイントを整理したい。

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社会研究部   上席研究員

百嶋 徹 (ひゃくしま とおる)

研究・専門分野
企業経営、産業競争力、産業政策、イノベーション、企業不動産(CRE)、オフィス戦略、AI・IOT・自動運転、スマートシティ、CSR・ESG経営

経歴
  • 【職歴】
     1985年 株式会社野村総合研究所入社
     1995年 野村アセットマネジメント株式会社出向
     1998年 ニッセイ基礎研究所入社 産業調査部
     2001年 社会研究部門
     2013年7月より現職
     ・明治大学経営学部 特別招聘教授(2014年度~2016年度)
     
    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員
     ・(財)産業研究所・企業経営研究会委員(2007年)
     ・麗澤大学企業倫理研究センター・企業不動産研究会委員(2007年)
     ・国土交通省・合理的なCRE戦略の推進に関する研究会(CRE研究会) ワーキンググループ委員(2007年)
     ・公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会CREマネジメント研究部会委員(2013年~)

    【受賞】
     ・日経金融新聞(現・日経ヴェリタス)及びInstitutional Investor誌 アナリストランキング 素材産業部門 第1位
      (1994年発表)
     ・第1回 日本ファシリティマネジメント大賞 奨励賞受賞(単行本『CRE(企業不動産)戦略と企業経営』)

(2014年07月03日「ニッセイ基礎研所報」)

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