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- 新成長戦略における「法人税改革」~減税決定も、代替財源は示せず~
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6月24日、日本再興戦略の改定版、いわゆる新成長戦略が閣議決定された。中でも目玉として挙げられていた法人税改革に関しては「どのくらい(何%)」「いつから」「いつまでに」「どうやって(代替財源)」といった道筋がどこまで具体的に示されるかという点に関心が集まった。結果は、13日の素案段階で示されていた文言から変更はなくサプライズとはならなかった。
改めて、法人税改革に関する記載文言を確認してみよう。まず法人税減税が『どのくらい』かは「20%台まで引き下げる」、そして『いつから』は「来年度から開始する」という道筋が示された。これらは事前に素案段階で示されていたこともあり、株式市場に大きな影響を与えなかったが一定の評価を得たのではないだろうか。また下げ幅に関しては、安倍首相がテレビ番組出演中に、まずはドイツを目指すと述べている。ドイツの法人実効税率は29.59%であるから現在の法人実効税率35.64%(東京都)からの引き下げ幅は約6%ということになり、一部財界等から主張されていたアジア諸国並みの25%という水準までは達しなかった。法人実効税率1%は約4,700億円の財源規模となるため、6%であれば約2兆8千億円の代替財源が必要ということになる。
筆者が最も注目していたポイントは『どうやって(代替財源)』の部分だった。しかし、代替財源は「課税ベースの拡大等による恒久財源の確保をすることとし、年末に向けて議論を進め、具体案を得る」との文言にとどめられた。
現在、代替財源として主に挙げられるのは「(1)法人税の課税ベース拡大」、「(2)景気回復に伴う税収増分の活用」、「(3)その他税目の財源」の3点である。
代替財源として最も有力なのは、法人税に係る租税特別措置の縮小や欠損金の繰越控除といった「(1)法人税の課税ベース拡大」である。そのため文言にも「課税ベースの拡大等による恒久財源の確保」と記載されたのだろう。当然、特定業界などに恩恵が偏っているような政策減税は見直すべきだ。ただ、税制面の国際的なイコールフッティングを考えた場合、(1)のみで代替財源の約3兆円を捻出するのは難しい1。
(2)に関しては、アベノミクスによる景気回復の効果もあり、2013年度の法人税収は政府の見込みより最大1兆円上振れそうだ。しかし、当然来年度以降の増収額は見通せない。しかも2015 年度までに2010 年度に比べ赤字の対GDP 比を半減し、2020 年度までに黒字化という目標達成に向けた財源の確保が必要である。本気で2020年度の黒字化に取り組むのであれば税収増分は、債務の返済に回すのが妥当なはずだ。
(3)の議論はさらに困難を極める。例えば「法人」対「個人」という対立議論に陥りやすい。折しも法人税減税の代替財源が示される年末は消費税引き上げの判断の時期と重なる。このため、仮に消費税率10%への引き上げの決断がなされた場合、法人税減税の代替財源として個人所得課税を挙げることは個人にさらなる負担を求める印象を与えてしまう。法人税減税の代替財源を他税目に求めることは企業優遇という批判につながりやすい。議論は難航するだろう。
今回の文言では(1)、(2)、(3)どの選択肢も実施できるように読める。肝心の「どうやって(代替財源)」という問題を宿題として残した状態だ。いずれも多くの利害関係者が絡むことから、引き続き結論までの道のりは険しい。文言にある「等」が何を示すのか、年末に向けて議論が続くことになる。
新成長戦略において法人税減税は既定路線となった。政府が代替財源の議論に結論を出し、法人税減税が実現した後、次にバトンは企業に渡る。法人税減税により増えた企業利益をいかに活かすか、知恵と工夫が試される。内部留保が積み上がるだけでは意味がない。
また、法人税減税は目玉ではあるが成長戦略のあくまで一要素に過ぎない。例えば対日直接投資を増やすという観点では、政府は法人税減税だけでなく外国人の居住環境の改善や外国人に優しいインフラ整備など、海外企業が進出しやすい総合的な環境整備を進める必要があろう。新成長戦略で掲げた規制緩和や各種政策を同時に実行に移し、経済活性化による税収増の効果を示さなければならない。
(2014年06月26日「基礎研レター」)
薮内 哲
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