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女子はそんなに強いのか?-近年2回のオリンピックを比較して感じること

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
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気がつけば、もう3月半ば。昔から1月は行く、2月は逃げると言うが、今年の2月はソチオリンピックがあったこともあり、特に逃げ足が早かったように思う。
ソチオリンピックでは、日本勢は8個のメダルを獲得した。これは冬季オリンピックでは長野オリンピックに次ぐ快挙らしい。どのオリンピックも全出場選手が力の限り戦ったことに違いないのだから、メダルの数だけでオリンピックの良し悪しを判断するのはいかがかと思う。
しかし、今回は冬季オリンピック日本史上最年少メダリストも同じく最年長メダリストも達成している。若者だけでなく、我々中年層にまで幅広く夢と希望を与えてくれたという点で、良いオリンピックだったと感じている。
さて、ロンドンオリンピック当時に話は遡る。当時のニュースやワイドショーなどで「女子が強い」とか「女子の快進撃」といったコメントを幾度と耳にし、とても違和感を覚えたことを記憶している。
結果として金メダルこそ、女子のほうが多かったとは言え、統計的には女子のほうが金メダルを獲得する確率が高い(女子のほうが強い)とは言えないし、そもそも金メダルだけで判断するのは極端すぎる。女子サッカーや女子バレーボールといった団体競技でメダルを獲得したので、注目されるメダリストの数では圧倒的に女子に多かったからかもしれない。
ならば、男子ラージヒル団体でメダルを獲得した今回は、逆に「男子が強い」とか「男子の快進撃」といったコメントがあっても良いようなものだが、そのようなコメントは聞かない。一体なぜだろうか。
そこで、前回は「女子が強い」といったコメントが出たのに、今回は「男子が強い」といったコメントがでなかった理由を自分なりに3つ考えてみた。
1つ目は、データを解釈する力の変化、2つ目がメダルの数や統計では説明できない心情的な理由、3つ目はマスコミの空気を読む力の高さである。まず、「データを解釈する力」についてだが、これは昨今の統計学への関心の高さと関係があるというものである。
昨年、西内啓氏が「統計学が最強の学問である」を出版した。この本はキャッチーな題名と、従来の統計学に関する書物とは比べ物にならないほどソフトな表現で話題になった。これまで統計とは無縁だった人にも統計的考え方が広がり、その結果男女の金メダル獲得数の多少の差で、一方が強い(弱い)といった判断をしなくなったという仮説である。
2つ目の仮説は、特定の競技が感動的だったとかそういう類の理由で前回は「女子が強い」といったコメントにつながったというものである。
確かに、お家芸のレスリングや柔道はもとより、卓球やバドミントンの活躍は今でも記憶に残っている。今回も、フィギュアスケートやスキーモーグルなど、メダルには繋がらなかったものの多くの女子選手が感動を巻き起こした。このため、メダル数こそ男子のほうが多かったが、一方のみが強いといったコメントがでなかったという仮説である。
3つ目は、マスコミとはいえ一部を除き営利を目的としているのだから、空気を読む力の高さを活かし、マスコミが世の中の風潮に迎合したコメントを出しているという仮説である。
数年前に話題になった「肉食女子」然り、どうも女子が男子より強いと考える風潮が世の中にある。そんな中で、「男子が強い」のように裏を返せば「女子が弱い」とも受け取られかねないコメントを出せば、営業にもマイナスになりかねないと言う嗅覚が働いたというものだ。
個人的には、2つ目や3つ目の仮説が真実であって欲しくないと願っている。冒頭にも書いたように、どの競技に出場する選手も生半可ではない努力をして、力の限り戦っているのだ。どの競技に感動するかは個人の自由だが、それを理由に「女子が強い」のように暗に優劣をつけるようなコメントにつなげるのは、いかがなものであろうか。
昔から「母は強し」といった言葉があるが、これには生物学的背景がある。それと比べると、昨今は女子を無理やり強者に仕立て上げようとしている感が否めない。昔に比べると女子の立場は相対的に強くなったといった反論もあろうが、あくまでも時系列の話であって、ある時点の女子が男子より強いといった断面的意見の拠所にはならない。
女子は男子よりも弱くはないが、強くもない。それがあるべき姿である。あるべき姿に到達するにはブランコのような揺り戻しがあるのは仕方がないといった意見もわからなくはない。しかし、わざわざブランコを漕いでまで、より勢いをつける必要はあるまい。弱くもないが強くもない女子の眼には今の風潮は行き過ぎのように映る。
(2014年03月14日「研究員の眼」)

03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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