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コラム
2013年02月22日
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1.改正高年齢者雇用安定法の施行
高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)が改正され、4月から施行される。これまでは、事業主が高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を導入する場合に、労使協定で基準を定めて対象者を限定することができたが、今後は原則として希望者全員を対象とするものにしなければならなくなる。
高年齢者雇用安定法は1986年に制定され、2000年には65歳までの雇用確保措置の努力義務化、2004年の改正では段階的に65歳までの雇用確保措置が義務化されて2006年から施行された。
60歳以上の高年齢者の就業を促進するために、この法律が大きな役割を果たしてきたことは間違いない。60歳から64歳までの就業率は、2001年には50.7%にまで低下して全年齢平均をかなり下回っていたが、2012年には57.7%にまで上昇して、全年齢の平均とほぼ同じ水準となっている。
高年齢者雇用安定法は1986年に制定され、2000年には65歳までの雇用確保措置の努力義務化、2004年の改正では段階的に65歳までの雇用確保措置が義務化されて2006年から施行された。
60歳以上の高年齢者の就業を促進するために、この法律が大きな役割を果たしてきたことは間違いない。60歳から64歳までの就業率は、2001年には50.7%にまで低下して全年齢平均をかなり下回っていたが、2012年には57.7%にまで上昇して、全年齢の平均とほぼ同じ水準となっている。
2.高まる若年の失業率
かい離が始まった時期から考えて、高年齢者の雇用促進政策が影響していることは明らかだろう。
3.従来方式の延長は限界に
2001年から厚生年金の定額部分の支給開始年齢が段階的に引き上げられ、報酬比例部分も2013年から徐々に引き上げられて2025年には65 歳になる。高年齢者の雇用促進は、厚生年金の支給開始年齢を引き上げて年金保険料の引き上げ幅を抑制するために、当時一般的だった60歳という定年年齢との隙間を企業に雇用を義務付けることによって埋めようとしたものだ。
つまり高年齢者の雇用を促進しようとしたのは、現役世代の負担を軽減しようという意図であったのたが、残念ながら現実には高年齢者が若者の職を奪うという形で現役世代の負担となってしまっている。若年層の失業は、オンザジョブトレーニングで職業能力を高めていく機会を失うことも意味している。現時点で仕事と収入を失うということだけではなく、この間の失業によって職業能力が高まらないため、将来も所得水準が低下する恐れが大きい。
若年失業率の上昇は、これまでのように定年年齢の引き上げや継続雇用という形で、高年齢者が同じ職場で働き続けるという考え方に限界が来ていることを示している。年金財政の安定化のために支給開始年齢を65歳からさらに引き上げることも議論されているが、そのためには雇用の在り方を大きく変える必要があるだろう。
つまり高年齢者の雇用を促進しようとしたのは、現役世代の負担を軽減しようという意図であったのたが、残念ながら現実には高年齢者が若者の職を奪うという形で現役世代の負担となってしまっている。若年層の失業は、オンザジョブトレーニングで職業能力を高めていく機会を失うことも意味している。現時点で仕事と収入を失うということだけではなく、この間の失業によって職業能力が高まらないため、将来も所得水準が低下する恐れが大きい。
若年失業率の上昇は、これまでのように定年年齢の引き上げや継続雇用という形で、高年齢者が同じ職場で働き続けるという考え方に限界が来ていることを示している。年金財政の安定化のために支給開始年齢を65歳からさらに引き上げることも議論されているが、そのためには雇用の在り方を大きく変える必要があるだろう。
(2013年02月22日「エコノミストの眼」)
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
櫨(はじ) 浩一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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