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ガラスの天井はなくなるのか!-平成23年度雇用均等基本調査発表
生活研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
組織の中で女性の昇進を妨げる見えない壁を意味するガラスの天井(Glass Ceiling)は、日本のみならず、すべての国で見られる共通的な現状であるが、最近、日本ではその壁が少しずつ崩れるような動きを見せている。
厚生労働省が先月の 25日発表した「平成23年度雇用均等基本調査」によると、係長相当職以上の管理職に占める女性の割合は8.7%となり、2009年度調査の8.0%より0.7ポイントも上昇し過去最高を更新した。役職別には、部長相当職が4.5%、課長相当職が5.5%、係長相当職が11.9%となり、それぞれ前回調査の3.1%、5.0%、11.1%を上回った1(図表1)。
しかしながら、産業別の女性管理職の割合は「医療・福祉」、「生活サービス業・娯楽業」、「教育、学習支援業」では女性管理職の割合が相対的に高く現れたことに比べ、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「製造業」、「建設業」ではその割合が低く、まだガラスの天井が厳然として存在しているという結果となった。また、「金融業、保険業」の場合は他の産業と異なり、「課長相当職以上に占める女性の割合」と「係長相当職以上に占める女性の割合」の間にギャップが大きい(図表2)。
以上の結果から日本では全体的にはガラスの天井が少しずつ改善されているが、産業によりそのばらつきが多いことや、ある職位までは昇進できてもそれ以上の職位までは昇進しにくい仕組みがまだ残存していることが伺える。
では他の国と比べた日本における女性管理職の割合はどのぐらいの水準であるのか。実際、管理職の定義や範囲は国ごとに異なっており、直接的な比較は難しいが、ILOのデータを参考とした総務省統計局の調査結果を参考にすると、日本における女性管理職の割合は10.2%で、アメリカ(42.7%)、ドイツ(37.8%)、イギリス(34.6%)と比べてはるかに低い水準であることが分かる2。
また、世界経済フォーラムが、毎年各国における労働市場への参加や機会、教育、政治及び保健分野のデータから男女格差を測り、発表しているジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)の順位を見ると、2011年の日本の順位は135カ国中98位という低い順位であり、なおかつ前年の94位よりも順位が低下している3。さらに、労働市場への参加や機会部門の順位はより低く、100位にランクされており、男女の間の格差が深刻な状態にあることが分かる。
日本における女性管理職の割合が低い理由はどこにあるのか。前述の「雇用均等基本調査」では、女性管理職が少ないあるいは全くいない企業に対してその理由をたずねているが、最も多い理由は「現時点では、必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない」であり、54.2%であった。以下、「将来管理職に就く可能性のある女性はいるが、現在、管理職に就くための在職年数等を満たしている者はいない」(22.2%)、「勤続年数が短く、管理職になるまでに退職する」(19.6%)の順であった。最近は日本でもワーク・ライフ・バランスに対する関心が高まり、関連制度を導入・整備する企業が以前より増加しているが、まだ結婚や出産、そして育児が原因で勤め先を辞めざるを得ない女性が多いことが女性の管理職登用を妨げている。
最近、ワーク・ライフ・バランスやダイバーシティ関連政策の展開により労働市場に再参加する女性が増加しているが、今後の少子高齢化や労働力減少に対応するためには、より女性の能力や才能を活用する必要があり、そのためには男性の家事や育児、そして介護への参加率を引き上げることが求められる。つまり、女性の労働市場への参加を支援するための政策のみならず、今まで女性が担当してきた家事や育児、そして介護を男女が平等に担当してこそ、ガラスの天井の問題は解決されていくのではないだろうか。

03-3512-1825
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