2017年01月10日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~13年1月以来の二桁増を記録

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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ベトナムの16年11月の輸出額は前年同月比16.3%増(前月:同7.6%増)と上昇し、2ヵ月ぶりの二桁増となった。輸出の伸び率は昨春に政府目標(前年比10%増)を下回る状況が続いたものの、8月以降は勢いを取り戻しつつある。一方、輸入額は前年同月比19.6%増と、前月の同14.4%増から上昇した。結果、貿易収支は2.4億ドルの赤字(前月から2.0億ドル増加)と、2ヵ月連続の赤字となった(図表9)。

輸出を品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同17.6%増(前月:同6.4%増)と一段と上昇した(図表10)。また織物・衣類は同11.6%増(前月:同1.2%増)、履物は同9.3%増(前月:同9.7%増)とそれぞれ上昇した。一方でコンピュータ・電子部品は同25.5%増(前月:同30.6%増)と鈍化したものの、高い伸びを維持した。食品はコメ(同52.4%減)が引き続き大きく減少したものの、コーヒー(同28.7%増)、水産物(同13.7増)、野菜(同31.1%増)など総じて増加した品目が多かった。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同18.8%増(前月:同11.5%増)、地場企業が同10.3%増(前月:同0.9%減)と、それぞれ上昇して二桁増となった。
(図表9)ベトナムの貿易収支/(図表10)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
シンガポールの16年11月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比11.8%増(前月:同11.0%減)と大きく上昇し、3ヵ月ぶりのプラスに転じた。16年以降、輸出の伸びは医薬品の変動が大きいために上下に振れているものの、基調としては底入れに向かっているものとみられる。なお、総輸出額は前年同月比8.5%増(前月:同8.2%減)、総輸入額は同9.7%増(前月:同5.0%減)と、それぞれ大きく上昇してプラスとなった。結果、貿易収支は34.9億ドルの黒字と、前月から5.8億ドル黒字が縮小した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同3.8%増(前月:同4.9%減)と1年5ヵ月ぶりのプラスに転じた(図表12)。電子製品の内訳を見ると、PC(同18.2%減)、通信機器(同31.5%減)こそ減少しているものの、PC部品(同30.9%増)やIC(同10.9%増)、ダイオード・トランジスタ(同2.6%増)は増加している。また電子製品と同じく全体の約3割を占める化学製品は同24.1%増(前月:同24.3%減)と、大幅に上昇して2ヵ月ぶりのプラスとなった。化学製品の内訳を見ると、医薬品が同45.2%増(前月:同46.4%減)、石油化学製品が同14.2%増(前月:同6.0%減)と、それぞれ大幅に増加した。さらに、その他製品も同10.0%増(前月:同5.0%減)と大きく上昇した。
 
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの16年11月の輸出額は前年同月比7.5%減と、前月の同7.6%増から低下した。輸出額は16年から緩やかな持ち直しの動きが続いてきたが、足元では息切れ感が出ているほか、前年同月の水準が高かったことから伸び率は3ヵ月ぶりのマイナスに転じた。一方、輸入額は前年同月比19.7%増と、前月の同5.9%増から上昇した。結果、貿易収支は25.7億ドルの赤字と、前月から5.8億ドル赤字が拡大した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同7.9%減(前月:同4.9%増)から上昇した(図表14)。電子製品の内訳を見ると、電子データ処理機(同5.6%減)と半導体デバイス(同9.7%減)がそれぞれマイナスに転じたほか、オフィス機器(同38.2%減)も減少傾向が続いた。その他9品目を見ると、ココナツ油(同44.0%増)とその他鉱産物(同39.0%増)、その他製造品(同3.0%増)が増加した一方、木工品・家具(同28.9%減)と化学(同26.2%減)、イグニッション・ワイヤーセット(同25.6%減)、機械・輸送用機器(同25.4%減)、アパレル(同7.6%減)、金属部品(同2.0%減)が減少した。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)

(参考)仕向け地別の輸出動向

(図表15)タイ仕向け地別の輸出動向/(図表16)マレーシア仕向け地別の輸出動向/(図表17)インドネシア仕向け地別の輸出動向/(図表18)ベトナム仕向け地別の輸出動向/(図表19)シンガポール仕向け地別の輸出動向/(図表20)フィリピン仕向け地別の輸出動向
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2017年01月10日「経済・金融フラッシュ」)

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