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- 改善が続く労働市場に死角はないのか~労働生産性の低下で拡大する潜在的な過剰雇用
2016年07月15日
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■要旨
- 景気は停滞色を強めているが、雇用情勢は着実な改善を続けている。有効求人倍率は24年7ヵ月ぶりの水準まで上昇し、失業率は完全雇用とされる3%台前半で推移している。
- 失業者が量的に減少しているだけでなく、リストラなどの「非自発的な離職」による失業者の割合が低下し、失業の深刻度も和らいでいる。また、2015年入り後は正規雇用の増加幅が非正規雇用を上回ることにより雇用の非正規化に歯止めがかかりつつあることに加え、「不本意型」の非正規雇用の割合が低下するなど、雇用の質も改善している。
- このように、最近の雇用情勢は中身を伴った改善となっているが、雇用者数が大幅に増加しているにもかかわらず、実質GDPが伸びないために労働生産性が大きく低下していることは、先行きを見る上で大きな懸念材料だ。
- 稼働率とタイムトレンドを説明変数とした労働生産性関数から適正労働生産性を求めた上で、実際の労働生産性との乖離から過剰雇用者数を推計すると、リーマン・ショック後は一貫して過剰雇用の状態が続いており、直近の過剰雇用者数は全産業で261万人、製造業で131万人となった。
- これまでは企業収益の好調を背景として景況感が良好だったため、労働生産性が低下しても過剰雇用が表面化することはなかったが、企業収益は悪化傾向が鮮明となっており、その前提はすでに崩れつつある。人口動態面からの構造的な人手不足は今後も続く公算が大きいが、循環的には雇用過剰感が高まる恐れがある。
(2016年07月15日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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