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- 鉱工業生産16年5月~4-6月期も減産へ
2016年06月30日
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1.5月の生産は事前予想を大きく下回る
経済産業省が6月30日に公表した鉱工業指数によると、16年5月の鉱工業生産指数は前月比▲2.3%(4月:同0.5%)と3ヵ月ぶりに低下し、先月時点の予測指数の伸び(前月比2.2%)、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.0%、当社予想は同▲0.8%)を大きく下回る結果となった。出荷指数は前月比▲2.3%と3ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比0.3%と2ヵ月ぶりの上昇となった。5月の生産を業種別に見ると、熊本地震の影響で4月に工場の操業が一時的に停止した輸送機械は、その挽回生産などから前月比0.7%の上昇となった。一方、3月(前月比3.1%)、4月(同3.3%)に高い伸びを記録した化学(除く医薬品)がその反動から前月比▲7.5%と大きく落ち込んだほか、海外経済減速の影響などからはん用・生産用・業務用機械が前月比▲2.2%の低下となった。速報段階で公表される15業種中11業種が前月比で低下、4業種が上昇した。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は16年1-3月期の前期比▲2.4%の後、4月が前月比5.2%、5月が同▲1.3%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は16年1-3月期の前期比▲1.0%の後、4月が前月比0.0%、5月が同▲3.9%となった。4、5月の平均を1-3月期と比較すると、資本財出荷(除く輸送機械)は3.3%高いが、建設財出荷は▲0.9%低い水準にある。16年1-3月期のGDP統計の設備投資は前期比▲0.7%と3四半期ぶりに減少したが、企業収益の悪化を受けて4-6月期も低調に推移する可能性が高い。消費財出荷指数は16年1-3月期の前期比▲2.0%の後、4月が前月比4.9%、5月が同▲4.1%となった。4、5月の平均は1-3月期よりも1.2%高くなっている。
16年1-3月期のGDP統計の個人消費は前期比0.6%となったが、うるう年による押し上げの影響を除けばほぼ横ばいだったと考えられる(当研究所では1-3月期の個人消費はうるう年で前期比0.4%押し上げと試算)。4-6月期の個人消費は現時点では前期比0.1%のほぼ横ばいを予想しているが、1-3月期とは逆にうるう年の反動で押し下げられているため、実態としては緩やかな持ち直しの動きとなることが見込まれる。
2.4-6月期も減産の公算
製造工業生産予測指数は、16年6月が前月比1.7%、7月が同1.3%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(5月)、予測修正率(6月)はそれぞれ▲2.5%、▲1.2%であった。
予測指数を業種別にみると、輸送機械は6月が前月比4.2%、7月が同3.1%と堅調な推移が見込まれている。輸送機械は爆発事故が発生した2月の予測修正率(▲10.0%)、熊本地震が発生した4月の実現率(▲12.6%)は大幅マイナスとなったが、それ以外の月は実現率、予測修正率ともに比較的安定しているため、6月、7月は予測指数通り増産となる可能性が高い。懸念されていた熊本地震の影響は限定的にとどまったと考えられる。
一方、情報通信機械は6月の予測指数が前月比10.4%と非常に高い伸びとなっているが、同業種の実現率はこのところ▲10%前後の大幅マイナスを続けており、6月の生産は予測指数から大きく下振れ、前月比でほぼ横ばいとなりそうだ。鉱工業全体では6月、7月の生産実績はともに予測指数の伸びを明確に下回ることが見込まれる。
予測指数を業種別にみると、輸送機械は6月が前月比4.2%、7月が同3.1%と堅調な推移が見込まれている。輸送機械は爆発事故が発生した2月の予測修正率(▲10.0%)、熊本地震が発生した4月の実現率(▲12.6%)は大幅マイナスとなったが、それ以外の月は実現率、予測修正率ともに比較的安定しているため、6月、7月は予測指数通り増産となる可能性が高い。懸念されていた熊本地震の影響は限定的にとどまったと考えられる。
一方、情報通信機械は6月の予測指数が前月比10.4%と非常に高い伸びとなっているが、同業種の実現率はこのところ▲10%前後の大幅マイナスを続けており、6月の生産は予測指数から大きく下振れ、前月比でほぼ横ばいとなりそうだ。鉱工業全体では6月、7月の生産実績はともに予測指数の伸びを明確に下回ることが見込まれる。
16年5月の生産指数を6月の予測指数で先延ばしすると、16年4-6月期は前期比0.2%となるが、6月の生産が予測指数の伸びを▲0.6%下回ると、4-6月期は前期比マイナスとなる。最近の実現率のマイナス幅(直近6ヵ月の平均は▲2.3%)を考慮すると、4-6月期の生産は小幅ながら2四半期連続の減産(1-3月期は前期比▲1.0%)となる可能性が高い。
熊本地震の影響は限定的にとどまったとみられるが、海外経済減速、円高の進展、国内需要の低迷などから、生産は基調として弱い動きが続いている。
熊本地震の影響は限定的にとどまったとみられるが、海外経済減速、円高の進展、国内需要の低迷などから、生産は基調として弱い動きが続いている。
(2016年06月30日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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