コラム
2016年04月15日

ビンテージ・ソサエティ表彰制度の創設を 

生活研究部 主任研究員   前田 展弘

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経済産業省が設置した「活力あふれる『ビンテージ・ソサエティ』の実現に向けた取組に係る研究会」の報告書が2016年3月に公表された。検討されたテーマは「超高齢化する日本の未来社会の望ましいあり方」である。当研究会設置の背景には、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて、持続的に成長する我が国の未来像を世界に提示していきたいという経済産業省の思いがある1。『ビンテージ・ソサエティ』という言葉が注目されるところであるが、研究会では最終的に次のように定義づけられた。それは、“高齢者が、多世代に緩やかに交わりながら、「社会の負担」になるのではなく、むしろ「社会の力」となっている社会”である。報告書ではその社会の実現に向けて必要な3つの変革:(1)社会通念・意識の変革(年齢に対する社会通念・意識の見直し、人生90-100年を想定したライフデザイン等)、(2)働き方の変革(高齢者の能力を因数分解した働き方等)、(3)産業創出・振興の変革(高齢者の力を活かす産業等)を提示している2
<ビンテージ・ソサエティの基本的考え方>
詳細については報告書を参照いただきたいが、報告書の趣旨を筆者なりに解釈し総括すれば、「人生90-100年という長寿の時代を生きる私たち一人ひとりが、多様な可能性豊かな人生をおくれるように、個人の生き方の変革とそれを支える雇用市場及び産業を創出していくことが、日本の未来に不可欠だ」ということではないかと受け止めている。このビンテージ・ソサエティという概念及び政策方向は、市場拡大や経済成長という話の前に、「人生のあり方」に価値の主軸が置かれていることが大変素晴らしく賛同できる。一億総活躍社会、生涯現役社会づくりに通じるコンセプトとも言える。おそらく2020年に向けた産業振興の重要な柱の一つになっていくものであろうし、そのように展開されていくことを期待したい。

ただ、問題はこうした理念や考え方が、「行動」に転化できるかどうかである。特に営利が目的である企業にとっては、収益の見込みがなければ動けない。高齢期の多様な人生の創造をサポートするといったビンテージ・ソサエティの理念と個々の事業との接点で悩まれてしまうことが想像される。したがって、ビンテージ・ソサエティの実現に向けては、より丁寧な指導(政策誘導)が求められることになろう。この点については、今後検討が深められるものと思われるが、その中で一つ提案したいことがある。それは「表彰制度」の創設である。ビンテージ・ソサエティ実現に貢献する企業を国が表彰することである。儲かるかどうか見通しが立たない事業には、どうしても企業は二の足を踏む。何らかそうした企業の背中を押す手立てが必要であろう。企業に対して、環境問題や女性活躍等、社会的テーマに関する表彰制度はいくつか確認できるが、高齢化の課題解決に資する取り組みを表彰する制度は見当たらない。表彰すること自体は特段大きな予算もかからないことである。非常に素朴な提案ではあるが、望ましい未来の姿であるビンテージ・ソサエティを真に実現していくためにも、一策として検討されることを期待したい。
 
 
1 前田展弘「ビンテージ・ソサエティとは-長寿時代の新たな産業振興政策への期待」(研究員の眼、2015/12/15)
http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=51558
2 報告書の詳細は経済産業省HPを参照こと
http://www.meti.go.jp/press/2015/03/20160330002/20160330002.html
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生活研究部   主任研究員

前田 展弘 (まえだ のぶひろ)

研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)、超高齢社会・市場、QOL(Quality of Life)、ライフデザイン

(2016年04月15日「研究員の眼」)

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