2016年03月01日

法人企業統計15年10-12月期~経常利益が4年ぶりに減少、企業部門の改善に陰り

経済研究部 経済調査室長   斎藤 太郎

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1.製造業の経常利益が大幅減少

経常利益の推移 財務省が3月1日に公表した法人企業統計によると、15年10-12月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比▲1.7%(7-9月期:同9.0%)となり、11年10-12月期以来、4年ぶりの減少となった。非製造業(7-9月期:前年比15.2%→10-12月期:同12.7%)は増益を確保したが、製造業(7-9月期:前年比▲0.7%→10-12月期:同▲21.2%)の減少幅が大きく拡大した。
製造業は輸出数量の減少が続く中、円安の一巡により輸出価格も減少に転じたことから売上高が前年比▲1.4%(7-9月期:同▲0.0%)と減少幅が拡大したことに加え、売上高経常利益率が14年10-12月期の7.6%から6.1%へと2四半期連続で悪化した。製造業の売上高経常利益率(前年差)を要因分解すると、人件費、変動費、金融費用、減価償却費がいずれも利益率の悪化要因となった。変動費は、原油価格下落などから前年比▲0.6%と5四半期連続で減少したが、売上高の減少幅がそれを上回ったため、利益率の押し下げ要因となった。
売上高経常利益率の要因分解(製造業)/売上高経常利益率の要因分解(非製造業)
一方、非製造業は個人消費を中心とした内需の低迷を反映し、売上高が11四半期ぶりの減少(7-9月期:前年比0.1%→10-12月期:同▲3.2%)となったものの、売上高経常利益率が14年10-12月期の4.3%から5.1%へと改善したことが増益につながった。人件費は4四半期連続で利益率の悪化要因となったが、原油価格下落と円安の一巡に伴い変動費の減少幅が7-9月期の前年比▲1.0%から同▲4.6%へと大きく拡大し、変動費要因が利益率を1ポイント以上押し上げた。
 
経常利益の内訳を業種別に見ると、製造業は、はん用機械が前年比12.9%(7-9月期:同▲39.8%)と2四半期ぶりの増加となったものの、業務用機械(前年比▲29.7%)、電気機械(同▲30.9%)、情報通信機械(同▲70.0%)、輸送用機械(同▲15.1%)など軒並み二桁減益となった。
非製造業では、物品賃貸業(前年比▲23.8%)は減益となったものの、建設業(前年比21.4%)が好調を維持したほか、売上高が前年比▲4.8%の減少となった卸売・小売業も増益(前年比4.5%)を確保した。
経常利益(季節調整値)の推移 季節調整済の経常利益は前期比▲1.5%(7-9月期:同▲7.5%)と2四半期連続で減少した。非製造業は前期比5.1%(7-9月期:同▲6.9%)と2四半期ぶりに増加したが、製造業が前期比▲13.5%(7-9月期:同▲8.4%)と2四半期連続の減少となった。非製造業の経常利益は依然として過去最高に近い水準にあるが、製造業は過去最高となった14年10-12月期の水準からは2割以上落ち込んでいる。海外経済の減速、円安の一巡を受けて製造業の収益環境は厳しさを増している。

2.設備投資は堅調を維持も先行きは減速へ

設備投資(ソフトウェアを含む)の推移 設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比8.5%と11四半期連続で増加したが、7-9月期の同11.2%からは伸びが鈍化した。製造業(7-9月期:前年比12.6%→10-12月期:同10.2%)、非製造業(7-9月期:同10.4%→10-12月期:同7.6%)ともに前期から伸び率が低下した。
季節調整済の設備投資(ソフトウェアを除く)は前期比▲0.0%と小幅ながら2四半期ぶりに減少した。製造業(7-9月期:前期比8.4%→10-12月期:同0.1%)、非製造業(7-9月期:前期比4.3%→10-12月期:同▲0.1%)ともに前期からほぼ横ばいだった。
企業収益が急減速する一方、設備投資は底堅さを維持している。ただし、これは企業収益が好調だった時期に計画された設備投資がようやく実施されたことを反映した動きと考えられる。企業の設備投資意欲を示す「設備投資/キャッシュフロー比率」は依然として50%台半ばの低水準で推移しており、企業の設備投資意欲がここにきて大きく高まったわけではない。
2/26に内閣府から公表された「企業行動アンケート調査(2015年度)」によれば、今後5年間の実質経済成長率見通し(いわゆる期待成長率)は1.1%となり、前年度から0.3ポイント低下した。「設備投資/キャッシュフロー比率」は期待成長率との連動性が高いため、先行きも企業の設備投資意欲が大きく高まることは見込めない。企業収益の悪化を受けて先行きの設備投資は減速する可能性が高い。設備投資が景気の牽引役となることは当分期待できないだろう。
設備投資とキャッシュフローの関係/設備投資/キャッシュフロー比率と期待成長率の関係

3.10-12月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず

2015年10-12月期GDP2次速報の予測 本日の法人企業統計の結果等を受けて、3/8公表予定の15年10-12月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.4%(前期比年率▲1.5%)になると予測する。1次速報の前期比▲0.4%(前期比年率▲1.4%)とほぼ変わらないだろう。
設備投資は前期比1.4%から同1.2%へと下方修正されるだろう。設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比8.9%と11四半期連続で増加したが、7-9月期の同11.2%から伸びが鈍化した。一方、金融保険業の設備投資は前年比4.5%と7-9月期の同1.1%から伸びを高めた。
法人企業統計ではサンプル替えに伴う断層が生じるため、当研究所でこの影響を調整したところ、設備投資の伸びは前年比7%台となり、公表値より伸びが低くなった。本日の法人企業統計の結果は設備投資の下方修正要因と考えられる。
民間在庫は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されるが、1次速報の前期比・寄与度▲0.1%から変わらないだろう。その他の需要項目では、12月の建設総合統計が反映されることなどから、公的固定資本形成が1次速報の前期比▲2.7%から同▲3.2%へと下方修正されると予想する。
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経済研究部   経済調査室長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2016年03月01日「経済・金融フラッシュ」)

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