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デフレマインドと超高齢社会-「長生きリスク」緩和する社会保障を!
                                                土堤内 昭雄
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私は特に欲しいモノはないのだが、「お金」はもっとあったらと考えている。若い頃は不慮の事故や病気で死んだら大変と「早死にリスク」を心配したが、還暦を過ぎると想定以上に長生きしたらどうしようと「長生きリスク」が気にかかるからだ。日本人男性の平均寿命の80歳を超えて、もし90歳まで長生きしたら要介護リスクも高まり、医療費や介護費用を年金で賄うことができるかと不安になる。
1990年代に「きんさん・ぎんさん」の愛称で親しまれた100歳を超える双子の姉妹がいらした。屈託のない笑顔が幸せな日本の長寿社会の象徴のような存在で、テレビなどにも出演するお茶の間の人気者だった。その「きんさん・ぎんさん」がテレビの出演料を何に使うのかと訊かれ、『老後にとっておきます』と答えたという逸話が残っている。私は「きんさん・ぎんさん」のユーモアに感心すると同時に、100歳を超えた長寿者がまだ老後を心配する超高齢社会・日本の行く末に不安を抱いたものだ。
日本経済は長くデフレの時代が続いている。日銀はインフレ率2%の「物価安定目標」の実現に向けて量的・質的緩和によるマネタリーベースの拡大を図り、2月16日からはマイナス金利を導入した。日銀の黒田総裁は『日本の企業や家計のデフレマインドは着実に転換している』としつつも、『企業収益の水準と労働市場の引き締まりの割には、経済全体でみた賃金や設備投資など支出面への波及がやや弱い』とも述べている。一方、個人は必ずしもお金がなくてモノを買えないのではなく、高齢化の進展による老後に対する不安から消費を抑えたり、貯蓄に専念したりしているのではないだろうか。
長いデフレ時代に身についた生活防衛的な行動様式の根幹をなすデフレマインドを融かすためには、所得から消費へ「お金」の循環がスムーズに進むことが必要だ。人は将来の不安が低減すればインフレマインドに転換し消費を活発化するだろう。そのためには企業収益の好調さを所得の上昇につなげると共に将来不安を払拭することが不可欠だ。デフレマインドの転換には、「量」・「質」・「マイナス金利」の3つの次元で緩和手段を駆使する日銀の金融政策ばかりではなく、超高齢社会の「長生きリスク」を緩和する社会保障政策との連携が重要ではないだろうか。
(参考) 研究員の眼 『遠い“GDP600兆円”への道のり~消費者ニーズ把握と商品化が困難な時代』 (2015年12月1日)
(2016年02月16日「研究員の眼」)
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