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- 遠い“GDP600兆円”への道のり-消費者ニーズ把握と商品化が困難な時代
次にレジ袋を渡した。レジ袋を丸めると、「クシャクシャ」という音がする。その音を聞くととても嬉しそうだ。おもちゃを袋の中に入れては取り出し、その時に出る音を聞いて両手を叩いて喜ぶのだ。のちに息子から聞いた話では、レジ袋の音は赤ちゃんが母親の胎内にいる時に聞いていた音に似ているそうだ。環境問題ではいつも悪者扱いのレジ袋だが、赤ちゃんにとっては貴重な存在かもしれない。
我が家の冷蔵庫の扉にはチラシなどをとめておくための人形型磁石がついている。これを孫の背の高さより少し高い所につけると、冷蔵庫の前までハイハイして行き、冷蔵庫につかまり立ちして手を伸ばして磁石を取ろうとする。やや高めにつけた磁石も懸命に手を伸ばし、やっと手に入れるととてもご機嫌だ。孫は家の中にある様々なモノをおもちゃにして遊び回り、私の子守りは無事終了した。
今日から12月、街のホテルや商業施設には、綺麗なクリスマスツリーが飾られ、プレゼントを何にしようかと考えている人も多いのではないだろうか。多くの金融資産を有する高齢者の財布のひもは固いが、孫の教育資金援助や家族旅行など娯楽への支出は惜しまないという。ただ、子どもは大人が想像しないようなモノに興味を示し、必ずしも高価なプレゼントが喜ばれるわけではない。
アベノミクスの新たな矢である名目GDP600兆円を実現するためには、企業収益の向上に加えて、賃金の上昇、個人消費の拡大が必要だ。しかし、個人消費の拡大は賃金の上昇だけでは十分ではない。今はお金があっても消費者のこだわりに適うモノでなければ売れない時代だからだ。若者や高齢者のニーズも多様化し、本物の消費者ニーズは何か、人々の行動をつぶさに観察することが求められる。
消費を無理やり作り出すとバブルが生じる。賃金が上がり、それを持続的な消費につなげるには、消費者のライフスタイルに共鳴するモノやサービスの提供が不可欠だ。今日、“GDP600兆円”達成への道のりが遠く感じられるのは、多様化した消費者ニーズの的確な把握と商品化が一層困難な時代を迎えているからかもしれない。
土堤内 昭雄
研究・専門分野
(2015年12月01日「研究員の眼」)
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