コラム
2015年01月05日

成熟時代のハングリー精神-幸せな「個人」と「社会」をつくるために

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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今年も、正月3が日に大勢の人が初詣をした。初詣でおみくじを引いた人も多いだろう。おみくじには、「大吉」や「小吉」など運勢の総合評価が表示されている。多くは、大吉>中吉>小吉>吉>末吉>凶>大凶など7段階程度で示されるが、「凶」や「大凶」などを除外している場合もあるそうだ。また、そこには、願望、健康、仕事、恋愛、待人、出産、金運、学業、転居など項目ごとの運勢について、短いメッセージが添えられている。

「大吉」は総合評価で最上位だが、その他のおみくじより全ての項目において良い運勢とは限らない。現在、恋愛中の人にとっては、仮に恋愛以外の項目がすべて“成就”と書いてある「大吉」の札よりも、恋愛だけでも“成就”と書いてある「小吉」の札の方が嬉しいだろう。人々のニーズが多様化した今日、幸福は平均的な「大きさ」よりも、個々人が望む「形」が重要なのかもしれない。

内閣府の「国民生活選好度調査」では、国民の主観的幸福度を「とても幸せ」を10点、「とても不幸」を0点として、「あなたはどれくらい幸せですか」と問うている。10点と回答する人は、「足るを知る」人だろう。人間の欲望は際限がないゆえに、どんな状況に置かれても満足できる人が幸せなのだ。

自ら歳を重ねてみると、加齢とともに「欲」も薄れ、何事にも満足しやすくなったような気がする。それは「足るを知る」結果なのか諦念なのか、明らかではない。少なくとも日本は人口減少時代を迎え、もはや拡大・成長の右肩上がり社会ではないため、成熟社会に相応しい「足るを知る」こと、過剰な「欲」を持たない生き方は、現代社会を幸せに暮らす上でとても大切だろう。

しかし、高齢化が進み、全体的に「欲」がそぎ落とされた社会は、ややもすると活力を失ってしまう。幸せになるには、「まだ少し足らないから、物心ともにもう少しこうありたい」と願う「欲」も必要だ。 「個人」や「社会」にとって何かが不足している欠乏状態が、今後の希望や生きる力を生み出し、将来への期待値でもある「欲」が“幸せ”の原動力になる場合があるからだ。

今の日本には、「足るを知る」ことと同時に、「欲」を持ち続けることが重要ではないかと思う。最近、スキー、スケート、大相撲、テニスなど、様々なスポーツ界で活躍する選手がたくさんいる。現状に満足することなく、ナンバーワンを目指して果敢にチャレンジする姿は、大きな感動と勇気を与える。今後、幸せな少子高齢社会を築き、次世代へ引き継ぐためには、『「個人」と「社会」をよりよくしたい』という未来へチャレンジする「欲」を喚起する“成熟時代のハングリー精神”が求められている。

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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