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2021年10月05日
環境・社会問題に対する世界的な関心の高まりを背景に、日本においてもESG関連の投資額が急速に拡大している。不動産分野でも、「国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)不動産ワーキンググループ(PWG)」が「責任ある不動産投資(RPI、Responsible Property Investment)」を提唱しESG配慮の動きが強まるなか、第三者である審査登録機関による「環境認証」を取得する不動産ファンドや不動産会社が増えている。
不動産関連の「環境認証」は、個別不動産の環境性能を評価するものと、不動産ファンド等の組織としてのESG取り組みを評価するものに大別される。前者の例としては、「CASBEE」(建築環境総合性能評価システム)や「BELS」(建築物省エネルギー性能表示制度)などが、後者の例としては「GRESB」などが挙げられる(図表1)。「CASBEE」は、景観への配慮や省資源などの環境負荷削減等、総合的な環境性能の認証であるのに対して、「BELS」は、省エネルギー性能に特化した認証である。国土交通省のアンケート調査によれば、不動産ファンド(JREITおよび私募リート)が取得しているESG関連認証は、「CASBEE(不動産、建築)」(52%)が最も多く、次いで「GRESB」(51%)、「BELS」(46%)の順となっている(図表2)。
「CASBEE‐不動産」の申請状況を確認すると、2021年8月時点で認証が有効である417件のうち、J-REITによる申請は337件(オフィス180件、物流施設94件、商業施設63件)となり、約8割を占めた。また、J-REIT保有物件に占める「CASBEE‐不動産」認証物件の割合は、オフィスで18%、物流施設で23%、商業施設で14%となっている。
不動産関連の「環境認証」は、個別不動産の環境性能を評価するものと、不動産ファンド等の組織としてのESG取り組みを評価するものに大別される。前者の例としては、「CASBEE」(建築環境総合性能評価システム)や「BELS」(建築物省エネルギー性能表示制度)などが、後者の例としては「GRESB」などが挙げられる(図表1)。「CASBEE」は、景観への配慮や省資源などの環境負荷削減等、総合的な環境性能の認証であるのに対して、「BELS」は、省エネルギー性能に特化した認証である。国土交通省のアンケート調査によれば、不動産ファンド(JREITおよび私募リート)が取得しているESG関連認証は、「CASBEE(不動産、建築)」(52%)が最も多く、次いで「GRESB」(51%)、「BELS」(46%)の順となっている(図表2)。
「CASBEE‐不動産」の申請状況を確認すると、2021年8月時点で認証が有効である417件のうち、J-REITによる申請は337件(オフィス180件、物流施設94件、商業施設63件)となり、約8割を占めた。また、J-REIT保有物件に占める「CASBEE‐不動産」認証物件の割合は、オフィスで18%、物流施設で23%、商業施設で14%となっている。
さらに、コロナ禍を経て、多数の利用者が出入りするオフィスビルでは、感染症拡大防止や利用者の健康に配慮した対応が求められている。ザイマックス不動産総合研究所「働き方とワーププレイスに関する首都圏企業調査(2021年1月)」によれば、コロナ危機後、メインオフィスの施策として関心があるものとして、「健康や感染症対策に配慮したオフィス運用に見直す(衛生管理等)」との回答が約3割を占めた。従業員の「Well-being」に配慮したワークプレイスの構築が企業の経営課題の1つとなっている。
これまでの「環境認証」は、省エネルギー等の環境性能や、組織としてのESG 評価が中心であったが、利用者の健康や快適性を高める建物の仕様・性能等を評価する「CASBEE-ウェルネスオフィス」認証が2019年より開始された。同認証では、建物内で執務するワーカーの健康や快適性(例:照明、空調)に加えて、知的生産性の向上に資する要因(会議室、情報通信インフラ)や、安全・安心に関する性能(耐震性能、入退館管理システム)も評価する。前述のアンケート調査によれば、「CASBEE-ウェルネスオフィス」を取得している不動産ファンドの割合は8%に留まるが、今後は健康や感染症対策への関心の高まりから、認証取得を検討するファンドが増える可能性がある。
一方、日本不動産研究所の「不動産投資家調査(2021年4月)」によれば、ESG に配慮した不動産とそうでない不動産の賃料収入について、「特に違いはない」との回答が8割以上を占めており、現時点では「環境認証」の取得が収益向上に明確には寄与していないようだ(図表4)。しかし、「10 年後」は「1~5%程度高い」との回答が6割に達しており、多くの投資家は、将来、環境配慮の取り組みが不動産価値の差別化につながると考えている。
ビルオーナーのESGへの取り組みがオフィス賃料やテナントの物件選択に及ぼす影響は、一層高まるだろう。オフィス投資を考える上でも、建物の環境性能並びに利用者の健康や快適性向上への取り組みを注視したい。
これまでの「環境認証」は、省エネルギー等の環境性能や、組織としてのESG 評価が中心であったが、利用者の健康や快適性を高める建物の仕様・性能等を評価する「CASBEE-ウェルネスオフィス」認証が2019年より開始された。同認証では、建物内で執務するワーカーの健康や快適性(例:照明、空調)に加えて、知的生産性の向上に資する要因(会議室、情報通信インフラ)や、安全・安心に関する性能(耐震性能、入退館管理システム)も評価する。前述のアンケート調査によれば、「CASBEE-ウェルネスオフィス」を取得している不動産ファンドの割合は8%に留まるが、今後は健康や感染症対策への関心の高まりから、認証取得を検討するファンドが増える可能性がある。
一方、日本不動産研究所の「不動産投資家調査(2021年4月)」によれば、ESG に配慮した不動産とそうでない不動産の賃料収入について、「特に違いはない」との回答が8割以上を占めており、現時点では「環境認証」の取得が収益向上に明確には寄与していないようだ(図表4)。しかし、「10 年後」は「1~5%程度高い」との回答が6割に達しており、多くの投資家は、将来、環境配慮の取り組みが不動産価値の差別化につながると考えている。
ビルオーナーのESGへの取り組みがオフィス賃料やテナントの物件選択に及ぼす影響は、一層高まるだろう。オフィス投資を考える上でも、建物の環境性能並びに利用者の健康や快適性向上への取り組みを注視したい。
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経歴
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
(2021年10月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
公式SNSアカウント
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