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 - ECB政策理事会-トランプ関税を受け6会合連続の利下げ決定
 
2025年04月18日
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                                            (質疑応答(趣旨))
            - 0.25%ポイントの利下げについて。全員の賛成によるものか。潜在的な0.50%ポイントの利下げについて議論されたか
	
- 0.25%ポイントの利下げは全会一致だった
 - 選択肢は議論されたが、0.50%ポイントの利下げに賛成する人はいなかった
 
 
- 関税の影響がインフレ再燃かディスインフレなのかの評価について、結論はまだ出ていないようだが、声明を通してディスインフレ効果に比重を置いているように見られる。これは正しいか
	
- インフレへのネットの影響は、時間が経過しないと明らかにならないだろう
 
 
- 声明文と冒頭説明では、もはや政策姿勢を制限的・中立・緩和的といった分類で特徴づけしていない。なぜそう決定したのか、それから導かれる結論は何か。また、旅の方向性については明確なのか
	
- 非常に制限的かどうかの評価は、目的地から非常に遠い際には意味があったが、現時点では意味がない
 - 制限性の評価は政策金利と中立金利の比較に大きく依存しているが、中立金利は測定に関する課題を除けば、ショックの無い世界で機能する概念である
 - 我々はショックの無い世界にはおらず、制限性の評価は、もはや適切でない
 - また、旅の方向性についてはコメントしない
 - 不確実性や今後数週間から数か月の間に予想される、あるいは予想もされていない複数の決定事項を踏まえると、我々の決定は2つの重要な特性により決まる必要がある
		
- 1つ目は備え(readiness)で、特に新たなショックの展開に注意し、適切な判断を下せるようにする必要がある
 - 2つ目は俊敏性(agility)で、特定の政策スタンスに向かうことが問われているのではなく、目にしたものに直面した際の機敏さが問われている
 
 - これまで以上にデータ分析に基づいた一貫性のあるアプローチが求められている
 
 
- 議論された選択肢について。どのような選択肢が議論されたか詳しく教えて欲しい
	
- 我々は常に議論し、最終決定についてもあらゆる側面から議論する
 - 数週間前までは、様子見を支持する総裁が何人かおり、「不確実性が高く、舵取りに霧がかかっている状況では様子見が求められ、より多くのデータと中銀と各国中銀の作成する見通しを得てから決定すべき」というのが一方の意見だった
 - 「もしかすると最終的に0.50%ポイントの利下げが正当化されるかもしれないが、支持するつもりはない」という意見があった
 
 
- 見通しについて。数週間前、あなたは国会で貿易戦争の潜在的な影響についていくつか数値を提示した。理事会では進展があったか。多くのことが変わり、特に関税、エネルギー価格の低下、大幅なユーロ高に興味がある。これらはすべて大きな変化と言える
	
- 我々は負の需要ショックに直面しており、疑問の余地はないが、それ自体がすべてではない
 - いくつかの関税は発動されており、平均関税率は3%未満から13%前後へ上昇した
 - また、今後はより大きな影響のある自体が起こる可能性があり、欧州委員会からの一連の対応がなされる可能性がある
 - こうした予想される展開を総合すれば、影響の度合いを特定の数値で示すことはできない
 - 成長に負の影響があり、インフレ率へのネットの影響は現時点では明確ではないことは言える
 
 
- FRBとの関係について。この決定の少し前、米大統領がFRBを批判し、FRBの独立性や独立性の維持に疑問を投げかけた。このような環境下で、世界の中央銀行が独立性を失うリスクがあると考えるか。FRBとはスワップなど重要な関係を結んでいる。スワップ契約は有効で、安全で、依存できるとの自信があるか。FRBが契約を変更した場合の危機管理計画を策定しているか
	
- 我々は中央銀行同士、安定して強固な関係を築いている。
 - この関係性は、金融安定のための強固な金融インフラを有する上で決定的なものだと考えている
 
 
- 関税をやめるだけで米国の信頼が回復するのか。我々はドル、米国債などへの不信を目撃した。それとも、環境は悪化しおり米国の信用を破壊するのか。法律事務所、裁判官、大学に対する攻撃について述べている。米国では法の確実性が失われている。こうしたことも米国の信用に影響を及ぼしているか
	
- (明確な回答なし)
 - 信頼性、予測可能性、ある程度の確実性はすべての人々が意思決定する上で重要な要素である
 - ECBは予測可能性、信頼性、正しいデータ、安全なデータ、可能な限りの透明性に基づいている
 - これは多くの投資家に認識されていると考えている
 
 
- 米国政府はステーブルコインの推進に意欲的に見える。例えば、アマゾン、フェイスブックなどのような気代企業がこれらのドルを裏付けとしたステーブルコインを発行した場合、ユーロにとってどれほどの脅威となるのか
	
- 我々はMⅰCAと呼ばれる規制があり、有効で、現在はさらなる改善に向けた見直し・教示が実施されている
 - ステーブルコインは暗号資産の中でも異なるカテゴリーに属す別種であり、運用される枠組みとしてしっかりと手堅い規制を有していることは重要であり、EU、欧州委員会、関連規制当局もその点を理解している
 - 声明ではデジタルユーロについて初めて言及しており、我々が準備をして作業をするだけでなく、他のEU当局も実現に向けた作業を加速させることを期待している、という事実を認めるものでもある
 
 
- 引き締め度合い、制限的という表現が声明文からなくなったことについての質問。今後数か月、成長率への逆風や不透明感があるなかで、ECBが景気刺激的な姿勢に転じるにはどの程度が必要なのか、また必要な場合はそうする意欲がどの程度あるのかについて、議論したか。幅広い見解を知りたい
	
- 刺激策については議論していないが、声明文にある通り、インフレが2%の中期目標で持続的に安定するように、適切な金融政策姿勢をとり決定する点は一致している
 - 適切性の度合いは、不確実性や数々の外部要因による意思決定ポイントに直面するなかで備えと俊敏性の2つの原則を通じて測定され、実行される
 
 
- 金融の安定性、特に大規模な中央銀行の独立性について。ECBやRGBのような大規模な中央銀行が政治的な独立性を維持していることは、金融の安定性にとってどの程度重要なのか
	
- 独立性については、ユーロ圏や欧州では特に重要である
 - 独立性は新規加盟申請国が満たさなければならない収れん評価で使用される基準の1つである
 
 
- 貿易摩擦に関する歴史を振り返りたい。19年に前任のマリオ・ドラギ氏はこの場で米中貿易摩擦による大きな下振れリスクがあると述べた。そして9月にECBは景気刺激策で反応した。我々が直面しているより広い紛争を前提にすれば、ECBがこの緊張に反応してさらなる行動にでるのは時間の問題ではないか。あなたが述べた備えと俊敏性について、教えて欲しい
	
- 金融政策姿勢は我々の目標達成にとってどれだけ適切かに基づいて決定する
 - 有効性と俊敏性を用い、ショックの性質とそれが必要とする対応の種類を分析、迅速に実行する
 
 
- 22年2月からECBはロシアのウクライナに対する攻撃的で正当化かれない戦争について繰り返し非難し、本日の声明文にもある。トランプ氏が経済パートナー国に対して起こしたこの貿易戦争はどのように特徴づけられるのか。あなたは緊張と述べるが、我々ジャーナリストははっきり言う。これは貿易戦争である。この別種の戦争をどのように特徴づけるのか
	
- 現在起きていることの特徴づけはするつもりはない
 - 貿易問題を専門にする解説者や一流のエコノミストは下振れという結論に同意すると思う
 - しかし、世界のどの地域かによって結果の生じ方は異なる
 - これは金融政策の決定が世界中同じにならないという事実を正当化する
 
 
- 不確実性について。前回も今回も様々な不確実性が使われた。関税が公開され、不確実性のピークは過ぎ去ったのか、それともまだその判断は早いか
	
- 不確実性のピークが過ぎたかは分からない
 - ただし、ECBとユーロシステムは金融政策の決定において予測不可能性に備える必要があり、備えと俊敏性を持ち、信頼できるデータに基づき、会合毎の行動が必要だということは事実である
 
 
- 為替レートについて。通常はコメントすることをためらっているようだが、動きがかなり大きいので何度か言及された。為替レートの最近の動きをどのように評価しているか。ユーロ高は続くと考えられるか、あるいは一過性の現象なのか
	
- 為替レートについは特定のレートを目標にしているわけではない
 - ただし、リスク評価の2段落目で述べたように、「世界的な貿易摩擦の増加がユーロ圏のインフレ見通しにさらなる不確実性をもたらし」ており、「世界的なエネルギー価格の下落とユーロ高はインフレ率への下押し圧力になり得る」
 - そのため、その発生や規模、金融政策決定の評価で考慮することから、言及している
 
 
- インフレ分析において、欧州による報復は考慮されているか、それとも想定していないか。特にデジタルサービスが標的にされるのではないかと懸念しており、インフレのサービス部門が注目されることから質問している
	
- 法制化されている場合や高い確度の結果であれば分析に組み込んでいる
 - 確信がもてない場合には、シナリオ分析を用いてそのような決定がどう影響するかを評価・推計している
 - 現時点では、あなたが述べたような報復処置はベースラインに含まれていない
 - 当然、貿易収支全体を財もサービスも見ており、財のみ、あるいはサービスのみを見ている訳ではない
 
 
- ECBはFRBと政策が分岐するように思われる。両者、貿易戦争の両面の違いは何であり、パウエル氏ではなく、ECBが金利を低く維持できる理由は何か
	
- それぞれの中央銀行は使命と、通貨、領域に基づいて誠実に仕事をしている
 - ユーロ圏は米国を含む多くの経済よりもより世界に対して開放されており、ユーロ圏を孤立して見るべきではない
 - 他国の中央銀行は異なる使命を持ち、2つの使命を持つところもあり、マクロ経済状況は異なり、受け取るショックの性質も我々のものとは異なる
 - そのため、異なる結論が導かれる
 
 
- 誰も質問しなかった点について、我々中央銀行から欧州機関への明確なメッセージを込めた部分がある
	
- 特定のスケジュールと迅速な実行への期待を込めて、3つの構造的取り組みについて特に言及している
		
- 1つ目は競争力コンパス
 - 2つ目は貯蓄・投資同盟
 - 3つ目はデジタルユーロ
 
 - 今、欧州においては、金融政策を確実に行い物価の安定を実現するだけでなく、欧州全体で欧州機関がどのような機会があり、どんな変更が必要で、どれだけ加速させるかに焦点をあてるべき、という見解を示している
 
 - 特定のスケジュールと迅速な実行への期待を込めて、3つの構造的取り組みについて特に言及している
		
 
(2025年04月18日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ
                                        03-3512-1818
経歴
                            - 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員 
高山 武士のレポート
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【ECB政策理事会-トランプ関税を受け6会合連続の利下げ決定】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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