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- 中国、20代の未婚化、出生率低下が顕著
2024年07月19日
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4――出生率の低下―特に新型コロナ以降、20代前半の出生率が急速に低下。
未婚化、晩婚化が進展する中で、晩産化の状況はどうであろうか。年齢別の出生率の推移からその状況を確認してみたい。図表5は、15-49歳の年齢別の出生率について、2001年、2011年、2021年の10年ごとに比較したものである。それによると、中国はこの20年ほどで出生率が低下し、次いで晩産化が進行しつつある点をうかがうことができる。
2001年時点では出産のピークは概ね20代前半で、出生率が最も高いのは25歳であった(図表5)。次の10年間(2002-2011年)では、出産のピークの年齢層は2001年から大きな変化はないものの、出生率がおよそ半分にまで低下している。この時点ではまだ晩産化に向けた大きな変化は見られない。
一方、直近の10年(2012-2021年)では出産年齢のピークが20代後半に移っており、出生率が最も高いのは28歳であった。また、20代後半の出生率が20代前半の出生率を上回っている。更にこの20年間における年代別の出生率の変化をみると、20代の出産が減少し、それに替わって30代前半の出産が増加している点にある。つまり晩産化は、政策的に出産への緩和が徐々に開始された時期に進んでいることがうかがえる。
2001年時点では出産のピークは概ね20代前半で、出生率が最も高いのは25歳であった(図表5)。次の10年間(2002-2011年)では、出産のピークの年齢層は2001年から大きな変化はないものの、出生率がおよそ半分にまで低下している。この時点ではまだ晩産化に向けた大きな変化は見られない。
一方、直近の10年(2012-2021年)では出産年齢のピークが20代後半に移っており、出生率が最も高いのは28歳であった。また、20代後半の出生率が20代前半の出生率を上回っている。更にこの20年間における年代別の出生率の変化をみると、20代の出産が減少し、それに替わって30代前半の出産が増加している点にある。つまり晩産化は、政策的に出産への緩和が徐々に開始された時期に進んでいることがうかがえる。
中国政府は一人っ子政策を堅持しながらも、2000年代には緩和の動きも見せている。各地域が状況を鑑みた上である程度の緩和措置をとることが可能となり、例えば少数民族、夫婦とも一人っ子、農村部で第1子が女児の場合などについては第2子の出産を認めた。2013年には夫婦のどちらかが一人っ子の場合、第2子までの出産が正式に容認されている。加えて、2015年には第2子まで(適用は2016年から)、2021年には第3子までの出産が容認された。
このような緩和策の効果は、20代後半、30代前半の出生率の上昇に現れている(図表5、図表6)。図表6から2016年、2017年の出生率の上昇は第2子出産容認による効果と推察されるが、特に25‐29歳、30‐34歳の出生率が急上昇しており、当該年齢層による貢献が大きいと考えられる。20‐24歳も上昇しているが25‐29歳、30‐34歳ほどではなく、加えて、2019年以降出生率が急降下している。この点からも昨今の出生数の急減については、特に20‐24歳の出生率の急減が大きな影響を与えたと推察することができる。2019年以降、新型コロナウイルス禍、中国と米国間の貿易摩擦や世界的な情勢から経済の低成長が続き、特に20代前半については就職難、失業率の上昇、所得の不安定化と社会情勢や経済状況の影響を最も受けやすい世代とも言える。20代前半の失業率の上昇、未婚率の上昇、それが出生率の低下につながっている点をうかがうことができる。
このような緩和策の効果は、20代後半、30代前半の出生率の上昇に現れている(図表5、図表6)。図表6から2016年、2017年の出生率の上昇は第2子出産容認による効果と推察されるが、特に25‐29歳、30‐34歳の出生率が急上昇しており、当該年齢層による貢献が大きいと考えられる。20‐24歳も上昇しているが25‐29歳、30‐34歳ほどではなく、加えて、2019年以降出生率が急降下している。この点からも昨今の出生数の急減については、特に20‐24歳の出生率の急減が大きな影響を与えたと推察することができる。2019年以降、新型コロナウイルス禍、中国と米国間の貿易摩擦や世界的な情勢から経済の低成長が続き、特に20代前半については就職難、失業率の上昇、所得の不安定化と社会情勢や経済状況の影響を最も受けやすい世代とも言える。20代前半の失業率の上昇、未婚率の上昇、それが出生率の低下につながっている点をうかがうことができる。
5――新型コロナ禍、その後の経済・社会情勢が20代を直撃。女性人口の減少、未婚化、出生率の低下が浮上。
本稿では政府が指摘する出生数減少の要因について、出産適齢期の女性人口の減少、結婚や出産年齢などの上昇に注目し、その様相を概観した。出産適齢期の女性人口の減少の背景には、男児優先などの伝統的な孝の概念が残る中で、また、男子を労働力とする農地の請負政策が実施される中で一人っ子政策が実施されたため、女性人口が男性人口よりも大幅に少ないという人口性比のアンバランスを引き寄せてしまった点を指摘した。つまり、一人っ子政策を実施したことで、結果的に将来母となる女性人口そのものを減少させてしまうといった事態となった。また、出生率の高い20代の女性人口が大幅に減少する中で、未婚率についても同様に20代で上昇しており、特に20代前半の上昇が顕著となっている。20代前半の未婚化の進展は出生率の低下を同時に引き寄せている。
更に、留意すべきは新型コロナ以降、20代前半(20-24歳)の出生率の低下が25-29歳、30-34歳と比較しても大きい状態にある点にある。20代、特に20代前半をとりまく環境は、新型コロナウイルス禍や世界情勢による経済成長減速の影響を強く受けており、就職難、失業率の上昇、雇用の流動化、所得の不安定化と多くの問題を内包している。一方、30代前半については全体として出生率は低下傾向にあるものの、2020年、2021年は20-24歳を凌いでいる。晩産化に加えて、第2子出産容認による効果もわずからながら見られそうである。2020年以降、出産はそれまでの25-29歳、20-24歳を中心とした状況から、25-29歳、30-34歳を中心とした状況に移行してきている。冒頭の中国国家統計局が挙げた出生数減少の理由に経済的理由や所得の低下は見られなかったが、昨今の経済・社会情勢を考えると、今後は20代など若年層を中心に新たな理由として浮上する可能性もある。
更に、留意すべきは新型コロナ以降、20代前半(20-24歳)の出生率の低下が25-29歳、30-34歳と比較しても大きい状態にある点にある。20代、特に20代前半をとりまく環境は、新型コロナウイルス禍や世界情勢による経済成長減速の影響を強く受けており、就職難、失業率の上昇、雇用の流動化、所得の不安定化と多くの問題を内包している。一方、30代前半については全体として出生率は低下傾向にあるものの、2020年、2021年は20-24歳を凌いでいる。晩産化に加えて、第2子出産容認による効果もわずからながら見られそうである。2020年以降、出産はそれまでの25-29歳、20-24歳を中心とした状況から、25-29歳、30-34歳を中心とした状況に移行してきている。冒頭の中国国家統計局が挙げた出生数減少の理由に経済的理由や所得の低下は見られなかったが、昨今の経済・社会情勢を考えると、今後は20代など若年層を中心に新たな理由として浮上する可能性もある。
(2024年07月19日「ニッセイ基礎研所報」)
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経歴
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019~2020年度・2023年度~)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員教授(2024年度~)
・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
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