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絶対値をとるか、二乗するか-機械学習での評価方法は誰が決める?
                                                保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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― 生成AIで「フィッシングサイト」識別 警察庁が2025年度までに導入へ (毎日新聞 2024.3.21)
― 公的機関のAI活用例、世界で共有 G7デジタル相会合 (朝日新聞デジタル 2024.3.16)
― 世界初のAI規制法、EU議会で可決 制裁金最大56億円 (Forbes Japan 2024.3.14)
― 米新興企業のAI投資3.7兆円に ロボや医療に裾野拡大 (日本経済新聞 2024.3.12)
といった感じだ。いま、世の中は「AI全盛時代」を迎えつつあるのかもしれない。
AIと言えば機械学習だ。AIは、まず、データをもとに機械学習をする。そして、与えられたデータを分類したり、与えられたデータをもとに予測をしたりする。通常、多くのデータで機械学習をしていけば、分類や予測の精度は高まっていく。2022年に登場した生成AIは、文章や画像などのコンテンツを作り出す。まさに、人工の“知能”と呼ぶのにふさわしい発展を続けている。
機械学習のうち予測に関するものは、以前から「回帰分析」として行われてきたものの、大幅な拡張と見ることができる。予測の機械学習では、どれくらい予測があたったか、の評価が重要となる。
今回は、予測の機械学習における評価について、考えてみることとしたい。
◇ 予測と正解の誤差 ― 絶対値をとるか、二乗するか
ただし、誤差を単純な引き算として計算すると、一般に、複数の予測のうち、ある箇所のプラスの誤差と、別のある箇所のマイナスの誤差が相殺し合って誤差の合計が小さくなってしまう。
そこで、単純な引き算ではなく、引き算した結果のマイナスの値をプラスに変換するような計算が必要となる。そこで考えつくのが、(1) 誤差の絶対値をとる方法と、(2) 誤差を二乗する方法だ。
複数の予測で、誤差の絶対値をとって、その平均を計算したものは「平均絶対誤差 (Mean Absolute Error, MAE)」と呼ばれる。一方、誤差を二乗して、その平均の平方根を計算したものは「平均平方根二乗誤差 (Root Mean Squared Error, RMSE)」と呼ばれる。
RMSEとMAEはマイナスの値にはならず、どちらの評価指標も0に近いほど誤差が小さい、つまり予測の精度が高いことを意味する。数学的には、RMSE ≧ MAE (等号は複数の予測の誤差の絶対値がすべて等しい場合)となることが示される。
実は、MAEとRMSEの間では、どちらが優れた評価指標か、という議論が長らく繰り広げられてきた。
◇ RMSEは微分可能で使いやすい
このとき、評価の算式(関数)が微分可能だと、予測値を見直したときに着実に正解に近付くことができる。つまり、最適化できる。
RMSEは二乗の算式なので微分ができる。一方、MAEは絶対値をとる算式なので、誤差が0となる箇所で微分ができない。(誤差がプラスの方からこの箇所に近付くと傾きがプラス、誤差がマイナスの方から近付くと傾きがマイナスとなり、傾きが不連続となる。)
そのため、機械学習の最適化アルゴリズムの観点からはRMSEが使いやすいということになる。
◇ MAEは外れ値に強い
(2024年04月02日「研究員の眼」)
                                        保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
                                研究・専門分野
                                保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
                            
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員 
篠原 拓也のレポート
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