2024年01月09日

EIOPAが2024年の監督上のコンバージェンス計画と戦略的優先事項を公表

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4―EIOPAの2024年の監督上のコンバージェンス計画-監視優先事項

EIOPAは、監督上のコンバージェンスを支援するための実践的なツールをさらに開発していくために、NCAsの日常的な監督に関与しているが、2024年は、2023年と同様に、以下の優先事項を通じて効果的な取り組みを継続的に強化する、としている。
 

・国境を越えた協力の基盤を確立し調整することにより、サービスの自由又は設立の自由を通じた加盟国における保険サービスの提供に関連して生ずる行為又はプルデンシャルな性質の監督上の懸念を解決すること

・コンダクトと健全性の監督の両方の分野において、監督カレッジの傘下の合同現地査察に参加するか、又は国境を越えた協力プラットフォームを通じて、潜在的な国境を越えたリスクを評価すること

・各国監督当局と連携し、フィードバックと支援を提供することにより、EU全体の監督上の戦略的優先事項の実施を監視すること

・各国訪問や二国間の関与を通じて監督上の勧告を提供することで、NCAsの日常的な監督を支援し、コンダクトと健全性の監督の分野で、また内部モデルの監督の特定の分野でも支援する。

さらに、EIOPAは、要請に応じて内部モデル申請の分野で、少なくともNCAsを支援する用意があり、このツールの開発を継続する、としている。

5―EIOPAの2024年の戦略的優先事項

5―EIOPAの2024年の戦略的優先事項

EIOPAは、2023年10月6日に、2024年から2026年までの戦略的優先事項の概要を発表3している。EIOPAは、進化する課題、リスク、機会の状況において、保険と年金部門が保険契約者と受益者、企業とEU経済に価値を提供し続けることができるよう、変革期における不確実性の管理に焦点を当てていく、としている。

具体的には、重点を置くべき戦略的優先事項として、以下が挙げられている。
 

・保険会社と年金基金に関する健全性の枠組みにESGリスクを統合し、プロテクションギャップに対処することを含む、全ての作業分野にわたって持続可能な金融に関する考慮事項を統合する。

・方針の定義とデジタル・オペレーショナル・レジリエンス法(DORA)、人工知能法、欧州シングル・アクセス・ポイント(ESAP)の実装に重点を置き、デジタルトランスフォーメーションを通じて消費者、市場、監督コミュニティをサポートする。

・特に国境を越えたビジネスの増加を考慮して、ソルベンシーIIの見直しを考慮した監督上のコンバージェンス資料の改訂を含め、監督の質と有効性を強化する。

・ソルベンシーIIの見直しが次の段階に進む中、保険規制の枠組みの完全性を維持することを含め、技術的に妥当な健全性と事業運営方針を確実なものとする。

・金融の安定性と事業運営に対するリスクを特定、評価、監視、報告し、タイムリーかつ正確な金融安定性分析とリスク評価の提供を含む予防的政策と緩和措置を推進する。

・EIOPAの人的資本の効果的な採用、管理、開発を提供し、魅力的な雇用主としての立場をさらに強化する。

6―まとめ

6―まとめ

以上、今回のレポートでは、EIOPAが公表した2024年の監督上のコンバージェンス計画の概要について報告してきた。併せて、EIOPAの2024年の戦略的優先事項の概要についても報告してきた。

これらの課題の多くは、日本の保険会社の監督にとっても極めて重要な課題であり、保険会社にとっても興味・関心の高い事項であることから、EIOPAにおけるこれらの課題の今後の検討状況等については、引き続き注視していくこととしたい。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2024年01月09日「保険・年金フォーカス」)

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レポート紹介

【EIOPAが2024年の監督上のコンバージェンス計画と戦略的優先事項を公表】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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