2023年04月20日

米利上げ打ち止めで円高圧力が台頭へ~マーケット・カルテ5月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月後の見通し ドル円は、今月月初に経済指標の悪化に伴う米景気後退懸念から一時1ドル131円台前半まで下落したが、その後は米雇用統計の概ね良好な結果やハト派的な発言が目立った植田新日銀総裁の就任会見を受けて持ち直した。さらに、中旬にはFRB高官発言などを受けて米利上げ継続観測が高まり、足元では134円台後半までドル高が進んでいる。新たな問題が顕在化しなかったことで欧米の金融システム不安が一服していることも米利上げ観測を通じてドル高に寄与した。

今後も日米の金融政策が相場の方向性を決定付ける。FRBはインフレ圧力の緩和を受けて5月で利上げを打ち止めにすると予想される。この結果、ドルの先高観が失われ、ドル安圧力が高まるだろう。一方、FRBが政策金利をしばらく高水準に保つ方針を示し、日銀が金融緩和の修正を当面見送る(修正は7月末の会合と予想)と予想されることが円の上値を抑える。従って、3ヵ月後の水準は現状比やや円高の132円台と見込んでいる。

なお、日銀が4・6月の決定会合で金融緩和の修正を見送る際には円安の動きが想定されるが、近い将来の修正観測は消えないため、一時的な反応に留まるだろう。

今月のユーロ円は上旬に1ユーロ143~144円台での一進一退となった後、ハト派的な発言が目立った植田新日銀総裁の就任会見やECB高官による利上げに対する前向きな発言を受けてユーロ高が進み、足元では147円台後半まで水準を切り上げている。ECBの利上げ局面がFRBよりも長引くと予想されることは当面のユーロの支えになるが、市場では大方織り込み済みとみられる。むしろ、7月にはECBの利上げ打ち止めが予想されるため、ユーロの利益確定売りが次第に優勢になると見ている。3ヵ月後の水準は現状比やや円高の145円台と見込んでいる。

0.3%台後半でスタートした今月の長期金利は、日銀による金融緩和修正観測や利上げ観測に伴う米長期金利の持ち直しを受けて上昇し、足元では0.4%台後半にある。今後3ヵ月間については、日銀が緩和修正を見送ると予想しているため、長期金利の大幅な上昇は見込んでいない。ただし、市場において近い将来の緩和修正観測が燻り続けることから、日銀の許容レンジ上限付近での推移が続きそうだ。3か月後の水準は0.5%弱と予想している。
 
(執筆時点:2023/4/20)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2023年04月20日「基礎研マンスリー」)

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