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はじめに
私も国際関係組織の委員を担当していた時に、欧州諸国、米国・カナダ、アジア等からの参加者による電話会議がほぼ2カ月に1回のペースで開催され、それに参加していた。この場合、日本での開始時刻は、夜の11時(欧州は午後の3時か4時、米国東部は午前9時か10時、米国西部は午前6時か午前7時)からということになっていた。欧州や米国からの参加者が多いのでやむを得ないことなのだが、議論が活発になって、こちらの深夜の1時を過ぎても会議が続いていると、事務局や他の参加者は少しは時差のことを考慮してくれているのかな、と疑問に思ってしまうことも時々経験した。
今回は、世界の時差に関する話題について取り上げてみる。
時差とは
各国・地域の「標準時」としては、歴史的には「グリニッジ平均時(Greenwich Mean Time:GMT)」(グリニッジ標準時)が基準に採用されており、1884年にワシントンで開催された国際子午線会議で、経度計測のための本初子午線をグリニッジ子午線にすると決定され、この子午線が標準時やタイムゾーン(同じ標準時を使用する地機全体)を決定するためにも使用された。1日24時間なので、地球を経度が15°(1時間)ずつ異なる24の区域に分けて、各区域の中央の時間をその区域の時間とするGMTシステムが1885年1月1日に全世界で採用された。日本では、1886年に兵庫県明石市がある東経135度を日本標準時子午線とすることが決定され、日本時間はGMTより9時間進んだ時間が採用されてきている。
UTCは、国際原子時 (TAI) に由来する原子時系の時刻である。国際協定により、UTCはGMTと基本的には等しいことになっているが、その測定方法は異なっており、GMTは正午から測定されるのに対して、UTCは午前0時から測定されている。その差はわずかな整数秒となっており、うるう秒1等の採用により、太陽はUTC12時にグリニッジ子午線を超えるようになっている。
1 「うるう秒」については、研究員の眼「時間・時刻の定義-「うるう秒」の調整はどんな意味があるのか-」(2015.6.22)で報告しているので、参照いただきたい。
時差に関する話題(同じような経度でも同じ時間帯とは限らない)
時差に関する話題(面積大国の時間帯)
因みに、面積第5位のブラジルは4つ、第6位のオーストラリアは6つ、第7位のインドと第8位のアルゼンチンは1つ、第9位のカザフスタンは2つ、第10位のアルジェリアは1つの標準時を有している。
面積が第11位以下の国でも、例えば、メキシコやインドネシアは3つの標準時を有している。
因みに、南極も基地の場所によって、複数の時間帯を有する形になっている。
当然のことながら、面積だけが重要なわけではなく、国の形状(南北の長さ、東西の長さ、島々の分布等)が関係してくることになる。
2 中華民国の時代(1912~1949年)には5つの標準時があったが、中華人民共和国の成立に伴い、現在の標準時に一本化された。
時差に関する話題(時間帯は1時間刻みとは限らない)
例えば、インドの場合、国土は東経 68度7分から97度25分の範囲にあり、その中心は約83度で、83÷15=5.53 となることから、5時間30分の差異を設けることに合理性があることになる。なお、首都のニューデリーの経度は東経77度20分となっている。
また、ネパールの首都カトマンズの経度は東経85度19分であり、85.19÷15=5.746 となることから、UTCとは5時間45分の差異を設けることに合理性があることになる。インドとの関係もあることから、インドと同じ5時間30分とすることも考えられるが、こうした考え方は採用していないようだ。
時差に関する話題(夏時間(サマータイム)の実施、その実施時期等)
夏時間を採用している主要な国・地域とその実施時期は、以下の通りとなっている。
このように、夏時間の実施時期に関して、北米(米国・カナダ)の2カ国は統一され、欧州の実施諸国でも統一されているが、同じ北半球の北米と欧州諸国の実施時期が統一されているわけではない。また、南半球のオーストラリアとニュージーランドの実施時期も同じではない。
因みに、日本も連合国軍の占領期の1948年~1951年に夏時間を実施していた。中国、インド、ロシア等、過去に夏時間を実施していたが、現在は実施していない国・地域も多い。
まとめ
一言で「時差」といっても、必ずしも機械的に定められているわけではなく、極めて政治的な要素が含まれている場合もある。ただし、実際にその標準時の地域に住んでいる人々にとっては、できれば「夏至の日に太陽が真上に来る時刻を正午にする」という考え方が、感覚にマッチしていると考えられることから、これに応じた標準時が設定されていくことが望まれることになる。
仮に、標準時が国内で統一的に設定されているというような理由で、それぞれの地域の実態に沿わない場合でも、実際の人々の生活は本来的な標準時に則った形で送られているようである。その意味では、標準時というのは、あくまでも「決めの問題」という一面もあるということなのかもしれない。
中村 亮一
研究・専門分野
(2022年08月12日「研究員の眼」)
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