2019年11月25日

共働き世帯の妻の働き方-過半数が「150万円の壁」を越えないが、夫高年収ほど妻高年収

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
  • 夫婦ともに少しでも収入があれば、政府統計では「共働き世帯」として集計される。しかし、パートタイムやフルタイムの別などの妻の働き方や、子の有無や祖父母との同居といった家族構成の違いも考えると、その実態はあまりに多様だ。そこで、本稿では、特に妻の状況に注目しながら、共働き世帯の実態を捉える。
     
  • 共働き世帯の妻は35~54歳が約6割を占める。また、共働き世帯の約7割に子がいる。末子の年齢階級は18歳以上を除けば、年齢が低いほど全体に占める割合は高まる。これは、1人目の子で出産後に退職せずに就業継続する妻が多いことや、出産後の妻の就業率は上昇傾向にある影響などが考えられる 。
     
  • 妻の労働時間はパートタイム(週当たり35時間未満)が54.5%を占める。パートタイムで働く妻は育児中の年代や高齢期、子のいる世帯で多い。子がいても三世代同居世帯ではフルタイムで働く妻が多く、育児休業からの復帰も早い様子がうかがえる。
     
  • 年収を見ると、「150万円の壁」を越えずに配偶者控除を意識して働く妻が51.5%であり、「壁」を越えて働く妻では、年収300万円未満と年収300~700万円未満がそれぞれ2割、年収700万円以上が3%弱である。保育園の待機児童が社会問題化している中でフルタイムが少ない印象も受けるが、「壁」を越えて働く妻は少しずつ増えている。
     
  • 夫の年収が高いほどパートタイムで働く妻は増える傾向があるものの、必ずしも年収150万円未満の妻が増えるわけではない。高年収の夫ほど高年収の妻が多く、労働時間が短くとも、例えば短時間勤務の正規雇用者等の比較的年収の高い妻が増えるようだ。なお、年収700万円以上のパワーカップル妻は約6割が夫も年収700万円以上である。
     
  • 人手不足が進む中で政府は女性の労働力に期待を寄せており、2018年から(夫の)配偶者特別控除が減額され始める上限額が引き上げられ、「壁」の範囲が広がっている。一方で、女性の労働力を高めるには「壁」を遥かに越えて働きたい女性の就労環境を整備することが効果的だ。そのためには、職場の制度環境の整備に加えて、家庭環境の整備も必要であり、例えば、男性の月単位の育休取得促進等も有意義だ。

■目次

1――はじめに~「共働き」と言ってもパートタイムからパワーカップルまで様々
2――共働き世帯の基本属性
 ~40代前後が6割、子ありが7割、低年齢児ほど母の就業率が上昇傾向
3――共働き世帯の妻の労働時間
 ~パートタイム過半数、三世代同居は育休復帰が早くフルタイムも多い
  1|妻の年齢や家族類型別に見た妻の労働時間
   ~15年前から変わらずにパートタイムが過半数
  2|子の年齢・人数別に見た妻の労働時間
   ~三世代同居は育休復帰が早くフルタイムも多い
4――共働き世帯の妻の年収
 ~「150万円の壁」を越えない妻が過半数、パワーカップル妻は3%弱
5――共働き世帯の夫の年収別に見た妻の働き方
 ~共働き世帯では夫が高年収ほど妻も高年収
  1|夫の年収別に見た妻の労働時間~夫が高年収ほどパートタイムの妻は増加
  2|夫の年収別に見た妻の年収~夫が高年収ほど高年収の妻が多い
6――おわりに~「壁」を遥かに超えて働くことができる女性の就労環境の整備を

(2019年11月25日「基礎研レポート」)

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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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