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平成における消費者の変容(1)-変わる家族の形と消費~コンパクト化する家族と消費、家族のモデル「標準世帯」の今

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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1――はじめに~大きく変わったのは「家族」「女性」「若者」「インターネット」
また、平成は働く女性が増え、女性の経済力が増した時代だ。女性の大学進学率は1996年に短大進学率を上回るようになり、男性と同じように進学し、男性と同じように働く女性が増えている。女性の消費は一層活発になり、未婚化の進行でおひとりさま市場が広がりを見せるとともに、結婚後や出産後も家族のための消費だけでなく自分の趣味やファッションを楽しむ女性が増えている。
若者も変わった。団塊の世代やバブル世代が若かりし頃は、若者は消費意欲が旺盛で流行を牽引する存在だったのかもしれない。しかし、今の若者にお金を使う印象はあまりないだろう。若い世代ほど貯蓄志向が強く、地に足のついた堅実な消費者となっている。
さらに、インターネットやスマートフォン、SNSが生活へ浸透したことで、消費者がお金を使う対象や買い物をする場所、情報の流れなどの消費構造が大きく変わっている。さらに、足元で急速に広がるシェアリング・エコノミーは、「モノからサービス(コト)へ」「モノの所有から利用へ」という変化を加速させている。
第一弾の本稿では、まず、4つの切り口のうち「家族」に注目し、暮らしや消費の変化を捉える。
2――コンパクト化する家族と消費
これまで国の統計や税金の試算などでは、「標準世帯」として、働く父親と専業主婦の母親、子ども2人の4人家族が家族のモデルとされてきた1。しかし、現在では「標準世帯」は決して標準ではなくなっている。

なお、「標準世帯」は、2015年で全体の26.8%を占める夫婦と子どもから成る世帯のうち、有業人員が1人かつ子どもが2人の世帯となる。よって、共働き世帯が増え、夫婦の子ども数が減る中で、その割合はさらに低くなる。厚生労働省「平成29年国民生活基礎調査」より、核家族で18歳未満の子どもが2人いる世帯、かつ父のみ有業あるいは母のみ有業の世帯を推計すると、全体の3%程度となる2。ただし、「標準世帯」は「子供」という表現にとどまり、18歳未満の児童には限定していないため、2017年で4.6%という推計もある3。
1 例えば、総務省「家計調査」の用語の説明には、標準世帯として「夫婦と子供2人の4人で構成される世帯のうち、有業者が世帯主1人だけの世帯に限定したもの」とある。
2 同調査によれば総世帯数は50425、うち18歳未満の児童のいる世帯数は11734(全体の23.3%)、うち核家族で18歳未満の児童が2人で父のみ有業あるいは母のみ有業の世帯は1484(全体の2.9%)。
3 是枝俊悟「総世帯の5%にも満たない『標準世帯』」、大和総研(2018/7/10)
家族のサイズがコンパクト化することで、売れる商品もコンパクト化している。
例えば、1人用のレトルトカレーが箱入りのカレールーの販売額を若干超えたというデータがある(図表2)。また、コーヒーについては、オフィスに向けたレンタルサービスの強化などメーカー側の販売戦略もあるのだろうが、一度に4人分などを淹れる従来型のコーヒーメーカーよりも、1杯ずつ淹れるポーション式のものの市場台数が伸びているというデータがある(図表3)。さらに、農林水産省「加工・業務野菜をめぐる状況(平成30年3月)」によれば、生鮮野菜の購入額が減る一方で、カット野菜は増えている(図表4・5)。
利便性を重視する共働き世帯が増えた影響もあるのだろうが、確かに最近、スーパーやコンビニを見渡すと、食パンは6枚入りだけでなく3枚入りのものが、鍋の素は一人用のキューブ型のものが並ぶなど、様々な商品でコンパクト化が進んでいる様子も見られる。
高齢単身世帯が増える中で、一足早くターゲット転換をした業界もあるようだ。過去にも述べたが4、マーケットシェア4割5を占めて業界首位のセブン-イレブンの来店客は、日本の人口における高齢化を上回る速度で高齢化が進んでいる(図表7・8)。同社では、今後とも高齢単身世帯が増えることを見越して、少子化で人口が減る上、経済状況の悪化などにより一人暮らしが減る若者から、もともとコンビニと親和性の高い暮らし方をしている高齢単身世帯へ向けて、早期にターゲット変換をしたのだろう。近年、コンビニではモノを売るだけでなく、各種サービス6にも対応できるようになり、消費者にとって暮らしの拠点の1つとなりつつある。特に高齢単身者にとって、身近に暮らしの拠点があることは安心につながる。
4 久我尚子「コンビニは若者からシニアのものへ」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2018/9/13)
5 株式会社セブン&アイHLDGS.「統合レポート2018」
6 公共料金や税金の支払い、住民票発行など行政関連サービスの代行、銀行ATMサービス、宅配便やクリーニングの受け取りや預かり、無料Wi-Fiサービスなど
(2019年03月04日「基礎研レター」)
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03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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